十九日目
筋肉痛で全く動けなかったがだいぶ落ち着いてきた…ダラダラ過ごすのもあれな気がしてリビングに向かう
「んんーー!!」
腕を大きく上にあげて体を伸ばす。今日も朝日が部屋に差し込んで涼しい風がカーテンを揺らす。いい天気だと自然と体が清々しい気分になった。
昨日の筋肉痛はあれからだいぶ落ち着いていて。
昨日出来なかった分今日を充実しないといけない使命感にかられる。
俺の部屋の扉が少し空いて、死神が少し顔をのぞかせた。
「おはよー! 今日は早起きさんだね!」
「あぁ! おはよ」
急ぎ足で俺に駆け寄って体をすみずみにチェックされた
俺の体調を気にしてくれたらしい。
「大丈夫かい? 痛いとかないかい?」
「あぁ! 昨日と比べてだいぶ楽になったよ!!」
体を無理やり動かそうとしたが、また筋肉痛の痛みが襲ってきそうな危険を感じたのでやめた。
……そういえば昨日タンスから落ちたものはなんだったんだ?
昨日はそれどころじゃなかったので確認をし忘れていた。
リビングに行き、タンスの上を見ると…ガラスの割れた写真立てが置いてあった。中の写真は俺が成人式の時の写真で両親と写っている。
「……あー……」
声に気づいた死神は俺が何を発見したのか瞬時に理解し、ソファの上で隠れながら毛ずくろいを始めた。
「えっと……ごめんよ? つい足が当たっちゃって」
「あー……いいんだよ別に……また写真立てを買い直せばいいだけだから。俺の方こそごめんな……こんな場所に置いてて……」
割れた写真立てから家族写真を取り出して眺める。みんないい笑顔で写っている。
父も母も……俺も。
あの時幸せだった思い出が蘇る。
「それ家族写真?」
いつの間に死神が肩に乗っていたらしく、頬杖をつきながら写真を見つめていた。
「あぁ……俺が成人した時のやつだな。懐かしい」
俺は実家から持ってきていたアルバムを開いた。
「実はな……二年前に母が他界してるんだ。そこからおやじが塞ぎ込んじゃって……なにか励ましたいんだけど……贈り物をしても反応が薄いんだよな……」
写真を大切に持って、アルバムに閉じた。
「会社に入ってから一度も実家に顔を出してなくて……それから……」
俺は涙がこぼれそうになるのを堪える。
「辛いことを思い出させてしまったね……ごめんよ……」
ペラペラと思い出のアルバムを捲る。ふとめくるページを死神がさえぎった。
風景写真や、両親を撮った写真のページだ。
「ねぇ? これ誰が撮ったの?」
「え?? なんで?」
「いや……凄く上手だから気になってね」
「……俺……だけど」
少し照れながら答えた。まさか褒められるとは思っていなかったので顔が赤くなる。死神が勢いよく俺の顔を見て瞳孔が開いた。
「ええ!? これは!?」
「あーそれは子供の時によく行ってた公園の写真」
「これは!?」
「これも俺が撮ったやつだ。夕日が綺麗な展望台の時だな」
「実は俺学生時代は写真部に入ってて……良くおやじから一眼レフ借りてコンクールとかに応募していたな……」
「凄いじゃん!!」
死神はペラペラと写真をめくって眺めていた。
コンクールで賞を取った時の写真もちゃんと残っていた。
学生時代が懐かしくなり、卒業アルバムも開いてみる。
同級生のページから部活動の説明まで思い出を流すようにゆっくりめくる。
(懐かしいなぁ)
みんな元気にしてるかなと思いながら部活動のページをぼんやり眺める。
俺は高校生の時に帰宅部ですぐに家に帰るような生徒だった。その時グラウンドからシャッターを着る音が聞こえてきて、気になった俺はフェンスの見えるか見えないかくらいで息を潜めて覗いて見た。
眼鏡をかけたいかにもクラスで一人はいそうな男の人がすごい格好でごついカメラを抱えて木を連写していた。
不意に気になり、近づこうとしたら近くにあった枝を踏んでしまい、気づかれてしまった。
その男の人は俺を見て口に手を当てた。静かに待っててとジェスチャーされ、男の人がひとしきりカメラで連射し終えた頃俺の方に向かって走ってきた。
「いやぁ! ごめんごめん! 鳥のひなが寝てたからさ! これ! さっきの画像! 見る!?」
これが俺と佐久間の出会いだ。
「懐かしいなぁ……あいつ今頃何してるんだろ?」
「他に応募した写真とかないの!?」
「あるにはあるけど……」
「ぜひ見せておくれよ!!」
手をわきわきさせながら目を輝かしている。俺は微かな記憶を辿りに物置を開いて中を漁った。
学生時代によく使っていたアルバムや、入賞の紙を持って死神の目の前で広げる。
学生の頃はよく人物のモデルを撮ったり、風景写真が好きだったから風景も多く撮っていた。
1枚1枚めくるごとに撮った時の記憶が呼び起こされているような感覚になる。
死神に一枚一枚説明しながら写真を見せてやる。
「ほぁー……昔もこんなに綺麗な写真を撮ってたんだね!」
「大人になってからは仕事が忙しくてなかなか撮る時間はなくなったけどな……」
自分で言ってて寂しく感じる。あのころはとても楽しかった……
充実した毎日を送っていた自信がある。写真を整理しながらぼんやり過去のことをふりかえっていた。
死神が俺に話しかけていたのも気づかないほど集中していた。
俺はコンクールに初めて投稿した写真を見ながら、同級生の佐久間のことを考えていた。
最後までご覧頂きありがとうございます!主人公の過去が明かされ始めましたね!次回も過去編なので真相に近づいていきたいと思います!続きが気になった方は是非!評価とブックマークをよろしくお願い致します!また次回お会いしましょう!




