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俺と可愛い死神  作者: ヴルペル
俺から見た世界
20/53

十六日目

仕事をやめて一気に暇な時間が増えた俺。これからどうやって過ごしていこうか…気晴らしに外に出かけてみた……

挿絵(By みてみん)


目が覚めて時計を確認する。


「あっ! やっべ!! 遅刻!?」


慌てて起き上がって準備を始めた。ふと違和感を感じ、手を止める。


(あ……そういや会社辞めたんだった……)


ふと虚無感に襲われ、ボタンが開いたままのワイシャツに緩いネクタイのまま布団に倒れ込む。

何やってんだよ俺……


ブラック企業で染み付いた体の習慣に抗えず、心の恐怖に打ち勝たなければならない……

どこまで支配されているか分からない恐怖にさいなまれる。


ふわっとしたものが頬を触れた気がした。

顔を上げると死神が俺の髪の毛で遊びながらしっぽで頬を撫でていた。


「あ! おはよ」


「……おう」


布団から起き上がると俺は着かけていたネクタイを解き、服を脱いだ。

いつもの様にゆるい部屋着に着替える。


「ねぇ! ねぇ! 今日何する!? 何する!?」


今日も死神は元気いっぱいだった。特にする用事もなかった俺は、欲しい本の発売日だったので本屋に寄ることにした。


「今日本屋に行こうと思うんだけど……なんかいるものとかあったら一冊だけ買ってあげるよ」


「本屋!? 行くー!」


重い腰を浮かせて身支度を整える。死神も丁寧に毛をブラッシングしていた。


本屋に着くと、死神とは別行動で適当にフラフラして回った。死神が好きそうな料理本を見たり、童話を見たり……

なかなか気になる本が見つからない。


死神の姿が見えたので、追いかけてみると頭をうならせていた。


「どうしたんだ? 頭が痛いのか?」


声を小さくして話しかけたが唸り声をあげるばかりだ


「うぅー!!!……ぃ」


「ん?」


「んんんー!!! ない!! いい本がない! わかりやすいやつ探したのに難しすぎてわかんなかったー!!」


頭を抱えて泣き叫んだ。俺は必死になだめてまたいいの見つかったら買おうということで話は落ち着いた。


「帰りにレンタルDVD借りるか? なんか見たいものある?」


俺は帰りにレンタルDVDのお店に行き、死神の背中を押した

泣きべそをかきながらも死神は目的地があるかのように一直線に走っていった。


数分後。


両手に何かを抱えて歩いてきた。なにか、黒いパッケージを……


「何見たいんだ?」


死神に渡されてパッケージをよく見てみる。なになに?

『〜呪いの館〜生存零 招かれざる客を迎える。果たして生き残ることは出来るのか』


…………思いっきりホラーだ……しかも心霊系の……

死神の顔色を見たが、ムスッとした顔のまま頑なに喋ろうとしない。

まぁ、死神がこれを見たいなら……このDVDを借りることにして家に帰った。


家にDVDデッキがあることを確認し、飲み物とおやつの準備も万端。

よし!見てみよう!ソファに座り、見る体制を整える。

早速さっきのDVDを入れてみた。

雰囲気を作るためにあえて部屋の電気は切ってある。



始まった。古い洋館、肝試しに来た学生、肝試しだろうか?王道な内容って感じがする。

軋む足音、静かな中に響く呼吸音、神経が研ぎ澄まされる感覚に陥る。

耳元で囁かれた。

「こっちおいで」

「「きゃー!!!!!」」

逃げ惑う学生たち。離れ離れになってしまい一人きりの主人公。

震えるなか、肩に冷たいものが当たる。

「みーつけた」

「「きゃーー!!」」


……ありきたりだなぁ……

俺はつまんなさそうにスナックをつまみながら飲み物を飲んでいた。


いや、だって主人公さすがに分かるでしょ?まず、不法侵入だし……幽霊より法律の方が怖くない?


つい現実的に考えてしまって既に怖いどころではなくなっていた。死神もつまんないと思っているかと思い、隣を見た。


隣には布の塊がいた。

少しめくって覗き込むと。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」


映画の中の主人公に負けないくらい大きな声でビビっていた

体はガチガチに震えて毛布を絶対に話さないという意気込みが聞こえてくるようだった。


「なぁ? 死神?」


「んな! な! ななななにさ!!」


「まさか……ホラー苦手?」


ガチガチ歯を震わせながら俺を睨みつけてくる。そんなに反応するのは珍しいと思った。


「死神のくせに? 幽霊なんて見なれてるんじゃないの?」


「う! ううううるさいなぁ! 僕だって苦手なものくらいあるんだよ!! こんなに怖い幽霊出会ったことないもん!!」


死神なのに……??


「見慣れているのと苦手なのって別でしょー!!」


心の声が漏れていたらしい。やっちまったぜ!!

俺はDVDより死神の反応が面白かったので、これからは死神観察をすることにした。もちろん死神にバレないように横目で見ながら。


死神はひとつ動く度に身体をびくつかせながら口をパクパクさせて顔面蒼白になる。布団じゃ物足りなく、寂しかったらしい死神は俺の膝の上でまるまって目を固くつぶっていた。


映像は見えないはずなのに、音でビビっているらしく避難してきてもビクビクしていたので、ちょっと可哀想に思えて背中に布団をかぶせて撫でた。


そのまま見終わらないうちに死神が寝てしまった。

足が痺れるのを我慢しながらテレビを切る。


起こさないように気をつけながら移動させ、俺もソファに横になって隣で寝る形をとる。


「おやすみ」


今日はいい夢が見れそうだ。

最後までご覧頂きありがとうございます!死神なのにホラーが苦手……萌えますね…!ちなみに私も心霊系はめちゃくちゃ苦手です!続きが気になった方は是非!評価とブックマークをよろしくお願い致します!また次回お会いしましょう!

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