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俺と可愛い死神  作者: ヴルペル
俺から見た世界
18/53

十四日目

今日こそ絶対に受け取ってもらう。強い気持ちで会社へ向かった……

挿絵(By みてみん)


朝起きると、朝食の上に肉球型のついた置き手紙が置いてあった。


(頑張れー!)


下手くそな字で一言だけ書いてあった紙を見て、勇気が湧いてくる。

会社に行く支度をし、ネクタイをきっちり締めて戦場へ向かう。



「おはようございます! 朝早くにすみません」


「いやいや、私の方こそこんな時間しか空いてなくてごめんな。それで……前向きに考えてくれたかな?」


生唾を飲み込みカバンの中からおもむろに退職届を出して、机にたたきつけた。


「お気持ちは嬉しいですけど、辞めさせていただきます。五年間お世話になりました」


「……気持ちは変わらないのか?」


「はい。採用していただき、嬉しかったのは事実です。ですが、これ以上は続けられません。誠に自分勝手で申し訳ございませんが……辞めさせていただきます」


係長は退職届を受け取り、そうか…と呟いた後席を立った。


「君みたいな人と働けて楽しかったよ」


……唇を噛み締める。

俺は係長が部屋に戻って見えなくなるまで見送った。

これで最後と思うと妙に寂しくなる。あそこで俺は資料を破かれたり盗まれたり水かけられたりコーヒーかけられたり資料作り直しさせられたり殴られたり踏まれたり。


……前言撤回。全く寂しくなかった。


早まる足を抑えつつ会社をあとにした。後味悪い感じを残して。


「お疲れ様!」


不意に頭上から声がかけられる。

見上げると嬉しそうな顔で頭を撫でてくる死神が居た。


「お前。今朝はどこいってたんだよ……置き手紙だけ残してさ」


「ちょっとお仕事呼ばれてたからねー! でもすぐ終わらせてずっと君の後ろにいたよ?」


「え……なにそれどこのホラー映画??」


「失礼だな! 君のことが心配になって見守ってたのに!」


死神はオーラを送るように俺に手を伸ばして応援していたという。

まぁ、おかげで無事退職できた訳だが……これからどうしようか……


俺はなんか清々しい気持ちになってパーッと遊びたい気分になっていた。

まずは、勝利の腹ごしらえと行くか!


近場の焼肉屋を調べてすぐ予約をとった。


「よし! 死神! 肉食うぞ! 肉!」


「お肉!?」


「しかも! 食べ放題だ!」


お互いの顔を見合わせてニヤリと笑う。

そうと決まったら焼肉屋まで競争だ!

めいいっぱい食べようとお腹を空かせる。焼肉屋に着いた時は息を整えるのに必死でドリンクバーを注文し、水ばかり飲んでいた。


「いやー! しかし! 俺が本当に会社を辞めるとは! 思わなかったよ!」


「ほんとにね! 僕も流されるんじゃないかってひやひやしたよー!」


笑い合いながら死神と愚痴を言い合っていた。

あいにく、個室を予約していたので、人目を気にせず話すことが出来た。


「係長にさ? めっちゃ褒めてもらえてさー俺もう嬉しくってーガチで悩んだよねー(笑)」


俺は勢いで生ビールを注文し、体にアルコールを充満させていた。


「あー(笑) 流されそうになってたよね! あの人演技上手かったからひやひやしたよー!」


「ん??」


「あれ? 気づかなかった? あの人君に残ってもらうために必死に褒めちぎってたんだよ? 裏ではボロクソに言ってたのにね!」


知らなかった……酔いが覚めたがすぐにお酒をあおいだ。


「もういい! 今日は飲んで焼肉食うぞー!!」


「その意気だー!」


「失礼致します。カルビとロースと牛タンでございます」


「あ! ありがとうございます!」


「失礼致します……」


俺のことを何度もチラ見しながら個室の扉を閉めた。

初めのうちは意味がわからなかったが、店員さんにはさぞ滑稽(こっけい)に見えただろうな。ふたつのお皿に大量の肉。個室とはいえ声は漏れていたのだから。


お腹がはち切れるほどお肉を食べた。

夜風にあたりながらのんびりと歩みを進める。

ひんやりとした風が心の中の熱を冷ます心地良さを感じる。


帰ってからスーツの臭いを確認してみた。

焼肉屋に行ったあとはだいたい匂いが残るので心配になり、臭ってみたら案の定臭いがこびりついていたので、明日クリーニングに出すことにした。

とりあえず応急処置でファブリーズを全面に吹きかける。


帰りにビールと軽いおつまみを買って家のベランダで宅飲みをする。

涼しい風に煽られながらぼんやりと景色を眺める。


死神用にオレンジジュースとおやつも買ってやったので、それをあげると嬉しそうに勢いよく袋を開けて食べていた。


「仕事を辞めたのはいいけど……これからどうしたものかな……」


独り言を吐き捨てて、ビールをあおる。

暫くは貯金が貯まっているのでそれでやり繰りしよう。

今はとりあえず辞められたことを喜ぶべきだ。また明日からゆっくり考えればいい。


風に当たりすぎて気分が悪くなってきた俺は部屋に戻り、水を飲んで何とか落ち着かせた。


ずっと緊張していたからか、急に体の力が抜けて疲れがおしよせてくる。

俺は項垂れるように布団に潜り込んだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます!これからの不安は残りますが!何とか退職出来ました!おめでとうございます!!続きが気になった方は是非!評価とブックマークをよろしくお願い致します!また次回お会いしましょう!

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