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始章 神を殺す英雄 第四話

「前もって言っておくけど、これに関しては別に隠してた訳じゃないからね? なんかコウスケが興味なさそうだったから言う機会がなかっただけで、聞かれれば答えた事だからね」


「それに関してなんか言うつもりはないから大丈夫。実際、それほど興味なかったし」


「本当になかったのか。まぁ、コウスケらしいっちゃらしいのかしら。じゃあまず、私の状態の変化から説明しようかしら」


 そう言って話を始めたロノアの話は、かなり大問題な気がした。

 正直言って、その話に俺はかなり動揺した。

 ロノアは俺が想像していた以上に本気だった。 

 顔に動揺を出さないようにするのに苦労したし、ややお遊び気分だった自分を殴りたい気分にもなった。

 ほんと、なんでそんな楽しそうに、こんな俺と一緒に居られるんだ。すごいわ、これが神か。


 ロノアはなんでもない様に話しているが、アトリアータに来る前にロノアの言っていた、「覚悟」という言葉は、流れで出た軽いものではなく本当に「覚悟」が必要な事だったのだ。

 まず、現在のロノアは「神」ではなく、簡単に表現するならば、かなり神に近い「ただの人間」だという事だ。


 これは、ロノア自身がアトリアータへ転送される前に、神性を移譲していくつかの権能が行使できない状態へ変化させた故に起きている事らしい。

 それによって「不死性剥奪」「身体能力低下」「管理者権限剥奪」など、天界に居た頃に比べ、かなりの制限が付いている状態だという事。

 これは神として地上へ降りるというのは、世界にとってかなり大事になってしまうからだという。

 ロノア曰く「なんか大洪水が起きたり。急に氷河期になったり。世界中の火山が噴火したりしちゃうんだって」って言ってた。神様怖い。


「ちょっとまて、あれで身体能力低下した状態なの? まじで?」


「まじよ。天界に居た頃の私なら、そうね……、地面を殴れば地形が変わるくらいにはぱっかり割れちゃうわ!」


 そうか、ぱっかり割っちゃうのか、殴られないようにしよう。いや、今は身体能力が低下……いや、それでも俺が肉片になるレベルだった。


「女神じゃないのに女神ポイントが使えるのはなんで?」


「さぁ? 前に同じように地上に降りたときに使えたからラッキーって感じだっただけで、どうして使えるかはわかんないわね。ただ、創造系は出来ないわね」


「創造系?」


「うん、新たな魔物作ったりそういうやつ」


「ああ、それは何よりだ。朗報以外の何物でもない」


「朗報ってどう言う意味よ」


「えぇ……」


「残念な子を見るような目をやめて!」


 俺がそれに対し問題だと思うのは、「不死性剥奪」だ。これはそのままで、ロノアは今なら普通に死ぬという事だ。

 天界に居た頃なら、例えば、頭が吹っ飛ぼうが、心臓潰されようが死なないらしい。

 だが、「じゃあ、今は?」って聞いたら「死ねる!」って楽しそうに言ってた。

 「死ねる!」じゃないっての、死なれたら俺が困るわ。


「まぁでも、この世界に今の私でも殺せるような人間も魔物も居ないから大丈夫よ!」


「もうね、ごめんだけど。ロノアの「大丈夫」は、ほんと信用ならないからね? 頼むぞほんと。情けないがロノアが居なかったら俺どうしようもないぞ? たぶん、明日には死ぬぞ? だからほんと死なないでくれよ?」


「……」


 そんな俺の言葉に、突然ロノアが驚いた様な困ったような顔をする。

 なんだ? そんなに情けないか? でも、ほんとに死ぬぞさくっと死ぬぞ。笑ってもいいぞ。


「情けなくてごめんな」


「い、いや、そういう事じゃなくて」


「ん? じゃ、なに?」


「ううん、なんでもない……」


 今度はニヤニヤしてるし。なんだ? そんなに情けないか? でも、ほんとに死ぬぞあっけなく死ぬぞ。笑ってもいいぞ。あ、笑ってるのかこれ、この野郎。


「とりあえずロノアの状態は理解した。ちょっと考えなきゃいけないことが多すぎて、これについては一端終わろう。で、俺の『英雄の資質』の問題ってのは?」


「まず説明すると、コウスケが持つ『英雄の資質』は三つある。ただそのうちの一つは、ガイア人だからなのか、私にはわからなかった」


「三つ? それって普通?」


「居ないことはないけど、三つは珍しいわね。だいたい一つか、二つでも珍しいかしら」


「ほほう、つまり俺は特別な訳なのだな? ささ、続けて続けて」


 この世界に来て周りの強さに打ちひしがれていた俺には、なかなかに嬉しい情報である。

 だって、この世界の人も魔物も強すぎるんだよ。せっかくの異世界転移なのに、自分に何か特別なものがあるっていう自信がなければ、そのうち前以上にへこたれてしまうからな。


「なんか腹立つ顔してるわね。三つのうちの一つは【魔力神醒アポストロス】、これは普通に比べて魔力マナの量が異常に多いのと神格憑依テオスリンクしやすい体質ね」


魔力マナの量が多いのは聞いたけど、神格憑依テオスリンクって何?」


「より神の権能に近い強力な魔法が使いやすくなる、って感じかしら」


「ほうほうほうほう、いいよ、いいねぇロノアさん。ささ、続けて続けて」


「更に腹立つ顔になったわね。言っておくけど、使いやすくなるってだけで訓練しないと魔力逆流マナリフラクスで死ぬからね。まじで」


「う、うむ、わかってる。身に染みてる」


 魔力逆流マナリフラクスってのが何だかわからんが、たぶん前に右腕が血まみれになったあれだろう。

 あんなん全身にきたら死ぬ、貧血で死ぬ。いや、貧血どころじゃないが。


「で、もう一つの【神性破壊デウスエクテレシィ】、これがさっき言ってた事の問題の答えになる『英雄の資質』ね」


「【神性破壊デウスエクテレシィ】、必殺技みたいな素晴らしい響きだ。で、どんな効果なの?」


「そうね。コウスケあなたは、……神を殺せる人間よ」


「……は?」


「【神性破壊デウスエクテレシィ】っていうのはね。極稀に発現する、人間が神に対抗できるようになる『英雄の資質』の一つよ。」


(神を殺す英雄。それは、地球に良くある話でしょ?)


「でも、普通に考えれば、神と人が邂逅することなんて、まずあり得ないんだけどね」


(なのに、神だけを殺す資質が発現するのは、何故なのかわかる?)


 いや、わからないな……。


(必要だからよ。そうじゃなければ、あるわけがないもの)


 確かに、……そうだな。


(だから、必ず使う機会があるわ)


 そうだろうか、俺には、想像できないな。


(大丈夫、その機会は、わたくしが作ってあげる)


 そうか、それなら、安心だな。


「――ケ! ――スケ! コウスケ! どうしたのコウスケ!」


「え? なに? なんだ?」


「なんだはこっちのセリフよ。なんの反応もなくなったと思ったら、急ぶつぶつ言いだして」


「は? 何言ってんだ」


「だから、それは私のセリフよ。何度呼んでも、返事しないし、てか怖い!」


 返事しない? ぶつぶつ? 何それ、俺も怖いんだけど。


「……まじで?」


「まじよ」


 全く記憶にないぞ。どういう事? 俺の人生に、多重人格エピソードなんぞないんだが。

 え、まじで怖いんだけど、疲れてんのか?

 現に、急に眠気が襲ってきてるんだが、頭がぼーっとする。瞼が重い。

 ダメだ、……我慢できそうに、ない。


「ロノア、ごめん。……続きは、明日でいいか? なんか、眠気が急に」


「え? 大丈夫? 確かに、顔色が悪いわね。食事は?」


「ああ、うん、いいや。とりあえず、……寝たい」


 そうして俺は、ロノアに案内され寝室へ来ると、ベッドの上に気絶する様に倒れこむのだった。

深夜更新予定だったのですが、前倒しで更新しました。

始章終了まで残り3話なので、月火水に毎日更新します。


その後は、1,2週間ほど更新が空きます。


モチベになるのでお気に入りや評価お願いしまっす。

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