ようこそ!勇者様!#1
俺の名前は蟹沢晴馬。
色々と訳があって、学校の屋上から投身自殺をしたわけだが、気づくと高級ホテルの一室みたいな場所にいた。
みたいな、というより本当にそのままである。
周囲にはちょっと高そうなソファーや机、ベッドなどの家具があり、天井にはシャンデリアらしきものがぶら下がっている。フィクションによくある王宮の一室のような雰囲気も若干あるものの、そういったテーマのホテルと捉えたほうが自分の中ではしっくりときた。
幼いころに一度だけ高そうなホテルに泊まったことがあるためそう思ったのだろう。
ちなみに、少し部屋を漁ってみたのだが、さすがにテレビやら冷蔵庫やらエントランス用内線電話機なんかは置いていなかった。
俺はこの部屋にあるベッドで目が覚めたのだ。
初めは「ここが死後の世界ってやつなのか。漫画やアニメなんかと違って、煌びやかな感じなんだな。」と少し感心していた。
そういえば、なんで漫画とかアニメとかの死後の世界って白かったり黒かったりするんだろうね。すぐ別の世界へ転生するから予算カット的な意味があったりするのだろうか。
そんなことはどうでもいい。話を続けよう。
多分この後神様が出てきて、別の世界へ転生したりするのだろうと、ワクワクしながら俺は部屋で待機していたのだが、一向に進展がない。
というか、この現状がおかしい。
俺は学校の屋上から投身自殺をしている。
人は、死んでしまったら全てが消えてなくなってしまうものだと思っていた。
今まで築き上げてきた、経験、知識、人脈、才能。それら全てを消し去ることのできるもの。それが死であると。俺は生前そう思っていたのだ。
だが、残念なことに俺にはすべて残っている。
俺は自分自身を捨て去ることはできなかったのだ。
ただ、仮に自殺に失敗していたとしても、俺はもう一度死のうだなんて思えない。
屋上から飛び降りる直前に感じた嫌な感覚。おそらくあれが死というものなのだろう。
あの時点でこの感覚を知っていたのであれば、俺は迷わず生きることを選択していただろう。
それくらい恐ろしいものだったのだ。
俺の死に対する考え方から考えると、俺は死ぬことができなかったのだろうか?
いや、おそらく俺は死んだのだろう。
だって学校の屋上から紐無しバンジーをしたんだぜ?どう考えても死ぬだろ。
仮に奇跡的に生きていたとしても、無傷なんてことはありえないだろう。
『実は投身自殺できずに気絶したところを学校に保護されたんじゃないの?』とも考えたのだが、その場合俺が目覚めるべき場所は保健室でなくてはならないはずだ。
いくらうちの学校が私立だったとはいえ、ここまで豪華とな保健室なんてないだろう。
そう考えると、やはりここは死後の世界と考えるのが妥当なのではないかという考えに至った。
…そう思っていたのだが。
俺が色々と思考を巡らせていると、ガチャと扉が開く音がした。
俺が驚きそちらを見ると、白衣のような真っ白な服を身にまとった青年が俺のいるこの部屋へ入ってきたのだ。




