8話 アリス・リー
月夜が金髪の少女を指さす。
「彼女の名前はアリス・リー。四方田君と同じで生前は体が弱くてね。でも、戦闘センスは抜群だ。魂も強い。メインで戦うのは彼女になるだろうね。28で死んだ元軍人さんだ」
紹介されても、俺にはツンとして目を合わせようとしない。
人見知りの俺としては、そっちの方がアリスの整った顔をガン見できてありがたい。
「ところで、魂が強いのに、生前は体が弱いってよくある事なの?」
率直な疑問をぶつける。
「よくあるよ。生前の魂はあくまで設計図だからね。むしろ、設計図が正確すぎると、製品に不具合が出やすいというのは良くある話だ。四方田君みたいに極端なのはかなり珍しいけどね」
月夜が急に真剣な顔をする。
思わず身構える。
「四方田君って呼びづらいヨモ君って呼んでいいかい?」
「どうでもいいっす」
マジでどうでもよかった。
「あと、メインで戦うのって俺じゃないの?」
月夜が少し考える。
「説明が難しいな。君は勝てるというだけで強くはないんだ。野球で例えるなら、時速200kmでド真ん中のストレートだけを投げられるピッチャーなんだよ。どんなプロからでも、初回はストライクを取れるだろう。でも、相手次第では二回目なんてないんだよ。プロは何回目かで絶対にホームランを打ってくる」
つまり、簡単に言うと、俺の力は初見殺し。
初見で倒せなければ、勝率は加速度的に下がるというわけか。
『人類史上最速』って全然チートじゃないんだな。
「まあ、それでも、全ての人間に対して、かなりの確率で一撃必殺が狙えるというのは、めちゃくちゃ強いカードなんだ。だから、基本はアリスが戦い、隙を見てヨモ君がとどめを刺す。これが安全だ」
アリスを見る。納得しているような顔だ。
だが、一つ気になる。
「俺が一撃必殺して、駄目だった時にアリスが戦った方が良いんじゃないか?そっちの方が安全じゃないか?」
月夜ではなく、閻魔の方が会話に入って来る。
「君に分かるように言ってあげるよ。アリスはただの高レベルキャラ。君は唯一の最速キャラ。君さえ脱落しなければ、パーティは何度でも作り直せる」
なるほどな。
アリスが俺に対して冷たい理由が少しわかった。
俺だけは彼女の事を大切にしよう。




