5話 俺の才能
閻魔は容赦なくここが地獄だと宣言し、俺が女口調になってしまった事を告げた。
「どうして女の記憶なんて与えたんだよ。歩けるようになるだけなら、そんな必要なかっただろ」
素直な不満をぶつける。
閻魔はため息をついた。
「君って、ちゃんと考えながら、戦うタイプだと思ってたんだけど、視野が狭いな。馬鹿なの?」
言い返そうとすると、月夜が横から説明する。
「自分で言うのもなんだけど、私はめちゃくちゃ強いんだ。君は少女に勝つのは当たり前、隙さえ見つけたら誰でも勝てる。なんて、思っているみたいだけど、そもそも、私にはそんな簡単に突けるような隙なんて無い。ただの人間が勝っていいような相手じゃないんだ」
「月夜は大罪人だ。地獄での生活は1000年を超えている。戦闘訓練期間だけで軽く数百年だ。それに、やっと歩けるようになったばかりの君が勝ってしまったんだよ。異常だと思わない?」
確かに。俺にあんな戦闘慣れした動きが出来るわけない。
まさか……。
「そうだ。君は記憶だけは戦闘経験豊富なんだ。たかが10年ちょっと分だけどね」
しかし、それで戦闘経験数百年に勝てる説明にはならない。長ければいいというものでもないが、長いに越したことはないだろう。
閻魔がイライラしながら言う。まるで、俺の理解が遅いとでも言いたげだ。
「原因は分からないが、君は人類史上最速なんだよ。かの剣豪、宮本武蔵よりも君の方の剣速が速い」
What?
俺が人類史上最速?
何故に?
「そして、記憶の少女は君と相性ピッタリだったんだ。パワーを使わず、スピードだけで戦ってたからね」
月夜が説明を変わる。
「まだ分からないのかい?君のステータスは軒並み低い。普通であれば、同世代と喧嘩しても大体負ける。だが、スピードだけは常軌を逸しているんだ。ゲームのバグレベルで」
「この世界には剣がある。攻撃力は関係ない。防具の隙間を狙えば、防御力は関係ない。首を刎ねれば、HPも関係ない。極論、相手がどんなに強くても、相手よりも先に首を切れば勝ちなんだよ。そして、君にはそれが出来る」
話を纏めると、
俺は人類史上最速。
しかし、戦闘経験に乏しすぎる。
さらには、スピード以外のステータスがあまりに低い。
そこで、スピード特化の戦闘方法を持つ少女の記憶を埋め込んだ。
その結果、圧倒的強者の月夜に勝てる程の力を手に入れた。
なるほどなるほど。
「俺に大したチートも与えてないのに何かと戦わせようとしてます?」
「話が早くなったじゃないか」
月夜が笑う。




