10話 出発
閻魔が手を叩く。
「さて、そろそろ仕事の話に入るぞ。最初の敵は剣豪、宮本武蔵。まあ、同等の条件なら月夜でも勝てる。だけど、持ってる武器が武器だ」
月夜は話すのが好きなようで、閻魔の説明を補足する。
「武器の名前は『銀波刀』。切れ味抜群の日本刀だよ。下手な受け止め方をしたら剣ごと切られてしまう。戦い方は考えるんだよ」
「今回、敵は単独。魔法を使われる事もないはずだ。宮本武蔵にだけ集中しろ。スペックは月夜に劣るが、奴は本気だ。四方田が動くタイミングはよく考えてくれよ」
魔法なんてあるのか。
まあ、あるか。地獄も鬼も見たしな。
「いいかい?勝利条件は『銀波刀』を奪う事。ヨモ君が怪我をしない事。敵の剣でやられたら、永遠に傷が治らないんだ。皮を切らせて骨を断つのは、敗北だからね」
「銀波刀は敵を完全に戦闘不能にしてから、奪えよ。よし、あとは君らの武器だな」
閻魔が手を叩くと、日本刀と剣とシールドが突然現れる。
「あららー。魔力の無駄遣いして。かっこつけたかったのかな?この件を魔法で解決できてない時点で、魔法なんてそんなに期待されてないと思うけどね」
月夜が言う。
この世界の魔法はあまり強くないらしい。
「いいんだよ。こいつらに武器を選ばせる気はないし。四方田はその日本刀だ。かなり軽量化してある。その分、打ち合えば、一瞬で切られるから、注意しろ。アリスは盾と剣だ。こっちはかなり丈夫にしてある。多少重いが、君なら使いこなせるだろう」
「今回、私の武器はないのかい?万が一に備えてもいいのだけれど」
月夜が問い掛ける。
「これで万が一になるようなら、どうせ他の武器も集まらないよ。さて、あとは四方田、君の褒美だよ。この任務に成功したら、何が欲しい?」
そういえば、そうだ。
ノリで受けるとは言ったが、メリットを提示されていない。
「ちなみに、私とシロは地獄にいる時間の数百年単位の短縮。任務成功で天国行きだ。アリスは自分と生前の仲間の天国行き。君は大して悪い事もしてないし、地獄にいる時間もかなり短い。追加で何を望む?」
月夜の説明で理解した。
俺、どっちにしろ地獄には落ちてたんだな。
地獄の窮地を救うために、無理やり呼ばれたのかと思ってたけど。
正直、望みなんてな……。
天国か。
天使いるのかな?
可愛いかな?
「天使と良い感じにしてください!!」
熟考する暇も無く欲望が洩れた。
閻魔が軽快に笑う。
「簡単で良かった。よし、契約成立だ。早速、行ってくれ。行き先は針地獄。そこではシロが先頭な。じゃあな!!」
床がぱかっと開く。
「あーあ、閻魔の間にこんな改造して。閻魔様が帰って来た時、どうなっても知らないからね」
月夜が良く分からない事を言っていたが、そんな事を気にする余裕も無く、落ちていく。




