0話 エピローグ ここって地獄じゃないですよね?
「一応、確認しますが、これって異世界転生ですよね?転生前の準備部屋みたいな?」
質問ではなく、祈る。空想上の話だが、これと似た世界を知っている。だからこそ、受け入れるには、時間が必要だった。嘘でもいい。ここから、逆転劇を見せて欲しい。
チート能力を与えられて、現世に帰るのだ。
『閻魔』と名乗った男が、薄い垂れ幕の裏で笑い声を上げる。松明の炎で影がゆらゆらと揺れていた。
「そんな訳ないじゃん。ようこそ地獄へ。ウェルカム トゥ アンダーグラウンド!!」
チクショウ!!これだから神様なんてクソなんだ!!
俺は決して褒められるような人間ではなかっただろう。だが、地獄に落ちる程、悪い事をした記憶も無い。天国に行くほど良い行いをした記憶もないが、それは忘れているだけだ。どうしてこんな事になってしまったのか。
「確かに君が神様を恨むのも仕方ないと思うよ。生まれつき足が不自由だったのは苦労しただろう。だから、お詫びと言ってはなんだけど、死んだ後、それが帳消しになるようにしてあげたじゃない」
確かに、不自然な事があった。死んですぐ、外国の女の子の記憶を頭にねじ込まれ、もう一度別の人生を経験したのだ。生まれ変わりならまだしも、そんな中途半端な転生話、他に聞いた事も無い。
だが、そのおかげか、歩くという事が出来た。普通の人間には分からないだろうが、足が動いたとしても、『歩く』という動作は非常に難しい。
そこで、重要な事に気づく。今まで出来なかった事が、勝手に出来るようになっているのだ。もしかして、これが自分に与えられたチート能力。『他人の人生を追体験し自分の能力にする』というもの。
確かに他の異世界転生のチートに比べれば、時間も掛かるし、大した魅力も感じない。だが、ここは地獄だ。時間は無限にある。
アインシュタインや宮本武蔵。そんな人間の人生を追体験すれば、最高の頭脳を持つ、最強の剣士にだってなれるだろう。他の異世界転生のチートと違い、神様にはなれない。あくまで、人間の域を出ないが、だからこそのリアリティがある。
地面を蹴り、姿勢を正す。不気味に見えた地獄も、何だが幻想的に見えてきた。松明がお香の様な穏やかな風を運んでくる。
輝かしい闘いの日々が、今始まるのだ。
「分かりました。これが私に授けられたチート能力……」
「あー、違う。違う」
閻魔が俺の言葉を遮る。垂れ幕越しで良く分からないが、シルエットから察するに鼻をほじっている。
「あれは、このまま地獄に来ても可哀想だから、ちょっとサービスしただけ。童貞なのに女の子の裸が見られて良かったでしょ?」
「童貞じゃねえ!!」
すぐにバレる嘘を全力で叫ぶ。それに、あの時は俺が女の子になっていたのだ。自分の裸を見てエロいという感想は出てこない。
「あと、君は10年以上女性として生活してたんだ。下手に怒ったりとかして感情的になると、女言葉になったりすると思うから気を付けてね」
「冗談じゃないわよ!!」
自分の口から出た言葉に膝をつく。
なんて体にしてくれたんだ……。
これだから神様なんて……。
閻魔は大して威厳もねえし、松明は悪趣味だし、変な匂いするし。
なろうでは初投稿作品です。
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