249 バイトについて
前回までのあらすじ
周と真昼はいちゃいちゃしていた
「忘れない内に先に言っておこうと思うんだけど、バイト始まったら平日は確実に帰り遅くなるから先にご飯食べていていいよ」
言い忘れていたので真昼を撫でる手を止めて告げると、真昼は腕の中でぱちりと大粒の瞳を瞬かせた。
「まだシフトは話し合い中だけど平日は閉店まで居る事になるから、多分家につくのが二十一時くらいになると思うんだ。流石にそれまで待たせる訳にはいかないから」
「待ちますけど」
お腹を空かせた真昼に待ってもらうのは悪いから先に食べてもらうつもりだったのだが、真昼は至極当然のように返す。
何を言ってるんだ、と言わんばかりの眼差しで見つめられては周も困ったように眉尻を下げるしかない。
「いや、お腹空くだろ」
「お腹より心が満たされたいので、周くんを待ちますよ。一人で食べても味気ないですし、私は周くんを待つ時間は嫌いではないですよ」
「遅くなるぞ?」
「遅いという程遅い訳ではありませんし。……それとも、私が待つのは嫌ですか?」
「嫌な訳がないだろ。単純に待たせる事が嫌なだけ」
「何もせずに待つ訳ではありませんよ? 待つならその間に幾らでもする事はありますので。順番が変わるだけですよ」
苦でもなさそうに告げた真昼が「心配性ですね」と笑って頬をつつく。
「周くんはどうしても欲しいものとやらのために頑張るのですから、私がそれを応援しない訳がないでしょう? といっても、出来る事なんて温かいご飯とお風呂の用意くらいなものですけど」
「それだけですごくありがたいよ。……一番は、帰った時に真昼が出迎えてくれる事だけど。すごく元気出そう」
「私を見ただけで元気が出るならお安い御用ですね」
「……無理はしなくていいからな? 自分の都合優先してくれよ?」
真昼なのでするべき事があってもこちらを優先しそうなのだが、当の真昼は笑って流している。
周としては真昼を縛るつもりはないのだが、真昼は周と一緒でなくては嫌なようで自分の意思を曲げる気配が見えない。それだけ愛されているし想われているという事なので、嬉しくもあり、やっぱり無理はしないでほしいとも思ってしまう。
「周くんの方こそ、無理にお仕事頑張らないでくださいね? そのほしいものは私には分かりませんけど、周くんは一度決めたらやるって人ですから心配です」
「無理はしない。真昼に心配かける訳にはいかないし」
「バイトの時点でちょっと心配なんですけど……周くんはお世辞にも社交性が高いとは言えませんから」
「事実だが微妙に失礼だぞ」
確かにそれは自他共に認める事ではあるが、正面切って指摘されるとどう反応していいのか分からない。
別に社交性がない訳ではない、と反論にはならなそうなぼやきを落とすと、真昼はそっとため息をつく。
「社交性がないというか、周くんは普段必要以上に社交性を求めていないだけで、やれば出来るとは思っています」
「まあ、別に不特定多数と仲良くしようとは思わないし狭い輪で満足出来るからな」
「……ただ、本当にやれば出来るんですよね。スイッチの切り替えが出来ますからね。はあ」
「何でため息」
「……もし周くんがモテたらどうしようかと……」
随分と可愛らしい心配をしている恋人につい笑ってしまうと、笑い声を聞いた真昼がムッとした表情で顔を上げる。
「大丈夫だよ。モテないモテない」
「周くんは最近のご自身の評価を理解してないです」
「あのなあ。あのカフェの客層はメニューの値段や雰囲気的にダンディなおじさま達らしいぞ。モテないしモテてても仕方ないだろ」
若者はこういった個人経営のカフェよりはチェーン店の方に行くだろうし、メニューを見せてもらった分には高校生大学生が気軽にお茶を楽しむには些かお値段が張る。
その分味はとても良いし落ち着いた空間が年上の方達に人気らしい。店主が美人、というのもある意味理由ではあるだろうが。
茅野曰く若い女性客というのは滅多にこないらしいので、安心して働いているらしい。
「だから真昼が心配する事はないよ。店主もいい人そうだったし」
「……それならいいですけど」
一応納得してくれたらしい真昼を宥めるように頭を撫でれば、ほんのりと不満そうながらもやっぱり嬉しいのか少し頬を緩めて周の好きにさせてくれた。
お久しぶりです(小声)
更新3ヶ月近く滞ってしまい申し訳ありません。3巻の作業や体調不良やら家族の通院の関係で全然書けていませんでした。本当はもっと更新する予定だったのに(´・ω・`)
とりあえす久々の更新で沢山のお知らせがあります。
『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』3巻が9月に発売決定いたしました!
既に活動報告で表紙イラスト公開しておりますのでぜひぜひご覧いただければと思います!
3巻は書き下ろし半分以上しております。色んなシーンを追加してますので楽しみにいただければと思います!
それからメロンブックスさんで2巻のメロンブックスさん有償特典のタペストリーのイラストを使ったアクリルボードが販売決定致しております!
受注生産で期限が8/2までとなっております。こちらでお知らせするのがギリギリで申し訳ない……。
今日ツイッターで担当さんがサンプル品の画像をあげていたのですがすごく綺麗に出来上がっていましたので、お求めの方はご予約いただけたらと思います(*´ω`*)
かなり更新滞ってしまって申し訳ないですが、これからゆるっと更新していけたらと思いますので引き続きお隣の天使様を応援していただけると嬉しいです(*´∀`*)