218 両親参戦
短め
文化祭二日目。
周達は午後からのシフトなので、午前中は空いているのだが……。
「久し振りに母校にきたけど、相変わらずだねえ。改装はされてるけど、雰囲気はそのままだよ」
夏振りに見た修斗が、微笑みながら入り口前に立って校舎を見上げながら呟く。その隣、というかすぐ横に寄り添うように立った志保子は「入学式以来かしら」とおっとりとした笑みを浮かべていた。
周にしてみれば見慣れた、しかし周囲からは注目されるような相変わらずの仲睦まじさに、周は少しだけ無関係の人間として離れたくなった。もちろん、真昼がその腕にくっついて阻止しているが。
彼女のカラメル色の視線が「諦めてください」と言わんばかりに生暖かいものになっているので、周としてはやっていられない。
「……あのさー、俺達も一緒に回らなきゃ駄目か」
「あら、数ヵ月振りにあってその言いぐさ。悪い子ねえ」
「今時親同伴で回らねえよ」
「そんな事ないわよ。……ああ、思春期にありがちな親と行動するのが嫌的な反抗かしら」
「別に嫌じゃなくて……目立つだろ」
現時点で目立っている。
贔屓目抜きにしても二人は若々しくお似合いの夫婦、といった雰囲気を漂わせた男女だ。ここまでいちゃついている熟年夫婦も中々に居ない。
周としては、クラスメイト達に見られたらあとでからかわれるだろうから、出来れば一緒に行動したくない。
ただ、真昼はその逆で、学校行事に親が参加した事がないらしく、志保子と修斗がきてくれた事が嬉しいのか一緒に回りたそうにしている。
真昼の背景を知っているとそのささやかな願いを無下にするのは罪悪感があるし、彼女が喜ぶなら自分が我慢すればいいと思いはするが――やはり、恥ずかしいものは恥ずかしい。
「……目立つって、あなた達も充分目立つと思うけどね」
志保子はそう呟いて、寄り添い合う周と真昼を視界に収め、にんまりと笑う。
微笑ましい、というのともっとやれ、という鼓舞が込められているのは何となく分かって、頬がひきつりそうだった。
「……それでも、生徒と親なら親の方が目立つ」
「まあ、そうだろうが目立つのには変わりないもの。むしろ見せつけてるんじゃないの?」
「見せ付けてない。……とにかく、ほら、模擬店回るんだろ。俺達昼からシフトなんだから回るなら早くしてくれ」
「あら、ついてきてくれるの?」
「ストッパーとしてな」
「どうだか。二人の方が熱々な可能性もあるじゃない? ねえ修斗さん」
「あはは、そうだね」
にこにこと柔和な笑みを絶やさない修斗に周は額を押さえながらそっとため息をつく。
志保子と違ってからかいがない分、強く拒絶も否定も出来ないのでやりにくい。調子が狂うので、あまり強く言い返さないし言い返せない。
「……とりあえず、どこ行きたいんだよ」
「そうだねえ。午後から周達が働いているのを見られるんだろう? それを除くと、そうだね……折角だからハンドメイドの品物を売ってるお店が見たいかな。手芸部とか工芸部のお店があるってパンフレットにあったし」
「そこに案内すればいいんだな」
とりあえずさっさと要求を満たしておくに越した事はない。
ここに留まっていても無駄に目立つだけなので、周は結局妥協した周を微笑ましそうに眺める真昼の背中に手を回して促すように軽く押して、校舎の中に入った。





