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188 お風呂上がりとだっこ

 真昼による髪の乾燥とお手入れが終わったところで、真昼は周の隣に座って大きく息を吐いた。

 ぽてん、と寄りかかってくるので、周は緩く彼女の掌を握りながら「ありがとな」と囁く。


 疲れている訳ではなく甘えて来ていると分かっているので、周は静かに寄り添う真昼の手の甲を優しく撫でるだけに留めておいた。


「……周くんって、こういう時包容力ありますよねえ」

「いつもはないと」

「な、ない訳じゃないですけど……その、甘えた時に甘やかしてくれるの、すごく嬉しいなって」

「幾らでも甘やかしてやるので、存分に甘えてくれると俺も嬉しい」


 いつも頑張っている真昼を甘やかすのはとても楽しい。

 そもそも今回はご褒美としてお泊まりをおねだりしたのだから、周としては甘やかさずにはいられないのだ。


 もっと甘やかそうか、と囁くと、真昼は恥ずかしげに瞳を伏せて額をぐりぐりと二の腕に押し付けてくる。


「……散々お風呂で甘やかされたので、あまり甘やかされるとふやけます」

「もっとふやけてくれてもいいんだけどな」

「腰が砕けそうなので結構です」


 周くんは加減を知らないので、とほんのり拗ねたように付け足す真昼に、周はあまり実感がなくて首を捻る。


(……割と加減してたと思うんだけどなあ)


 真昼がキャパオーバーにならないように、そして自分も我を忘れないように、セーブしていた、と思う。

 確かに時折調子に乗って甘やかして真昼がふて腐れる事はあったが、全力で甘やかしてはいない筈だ。


 うりうりと額を押し付けてくる真昼には苦笑を送りつつ、顔を落としてつむじに口づける。


「俺としては、もっと真昼を甘やかしてぐずぐずに溶かしたいんだけどな」


 甘えなれていない真昼がふやけて甘い蜜のような表情を浮かべる姿を想像すると、高揚する。

 別にそれ以外に他意はなく、ただ真昼が幸せそうな姿を見てこちらも幸せになりたかっただけなのだが、真昼は真っ赤な顔で首を振った。


「そんな事されたら死んじゃいます。周くん、そういう事を言う時にすごく……」

「すごく?」

「……何でもないです。気にしないでください」

「気になるんだけど」

「いいのです。……とにかく、甘やかすのは嬉しいですけど、やり過ぎないでください。身がもたないのです」


 体を離してぷいとそっぽを向いた真昼は、周を視界から外したかったのか付けっぱなしのテレビに視線を移しているようだ。


 テレビはニュースを映しているだけなのでなんの面白味もないのだが、居たたまれなかったからか真昼は視線をテレビから外さない。


 正直言えば、照れ隠しにこうして逃げている真昼を見るのも楽しい。

 甘やかされるのが嫌とは絶対に言わない彼女が精一杯の抵抗をするのは、非常に可愛らしいものである。


「……分かりやすいなあ」

「黙ってください」

「真昼が黙らせてくれるのか」


 ほんのりからかうように問いかければ、顔がぎこちない動作でこちらを向いた。


「……そ、それはその、確かに、お風呂あがったらとは言いましたけどっ。えと、その……ね、寝る前に、しましょう」

「……分かった」


 そっちの方が真昼にとって大変になりそうな気がするが、と思ったものの、周にとっては不都合でも何でもないので黙って笑っておいた。


 ベッドでする方が際限なくするし逃げ場もない、という事が頭からすっぽ抜けている真昼の頭を撫でれば、真昼は若干拗ねたような眼差しを向けてくる。


「……なんか生暖かい笑顔なんですけど」

「気のせい気のせい」

「気のせいではないです。笑みが深まっています」


 ぺち、と叩いてきたので、大人しくしてもらうために真昼の背中と膝裏に手を回して持ち上げ、膝の上に座らせる。

 固まった真昼を更に撫でれば、真昼は「絶対子供扱いしてますよね」と微妙にトゲの混じった声で呟いて、胸に頭突きしてくる。


 真昼が、好きな相手の前では取り繕わない、彼女の柔らかくてあどけない素を見せてくれると知っている周としては、そんな仕草も愛おしくてたまらない。


 可愛いなあ、と呟きながら抱き締めると、真昼は小さく唸りながらも素直に周に身を預けた。

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