165 天使様と千歳の悩み
「いいなー抹茶プリンー」
かき氷を食べていたら、どうやら樹と仲良く話し合いをしながらもこちらの話を聞いていたのか、羨ましそうにしながら千歳が近寄ってきた。
「樹のお仕置きは終わったのか」
「もちろん。まったく、失礼しちゃうよねー」
親指を立てている千歳に周と真昼は多分揃って苦笑し、先程まで樹が居た場所に視線を向けるのだが……そこには誰も居なかった。
「ちなみに樹は?」
「かき氷とチョコバナナ買いに行った」
「増えてやがる……」
「詫びだもーん」
ぷいっとそっぽを向いた千歳に、樹の財布が寒くなりそうだなと思いつつも本人が悪いので哀れみはしない。
何回か地雷を踏んでいるのに学習しない樹だが、彼らにとっては恐らくある種のスキンシップやコミュニケーションのようなものなのかもしれない。怒らせているのであまり褒められたものでもないが。
今回は拗ねるのが長引いているのか、未だに唇を尖らせている。
「こっちだって好きで小さい訳じゃないしー。どーせ男の人はまひるんみたいにぼいんの方がいいんでしょー」
「そ、そういう言い方をされるのは……」
さっと胸元を押さえる真昼は、千歳と比べれば盛り上がりも激しい。平均以上は確実にあると思っているが、気にしすぎると真昼が恥ずかしがるので、あまり見ないようにしていた。
「別に妬む訳じゃないけどさ、羨ましいなって思うよ。まひるんは私にないものいっぱい持ってるもん。綺麗で、スタイルよくて、勉強も運動も家事も出来て、お淑やかで……ほんと男の人の理想だと思うよ」
「そんな事は」
「あるよー。絶対大輝さんはまひるんを見たらこういう女性を選んだ方がいいっていっくんに言うよ」
微かに萎れたように笑う千歳に、彼女が今日一人で周と真昼の下を訪ねた理由をなんとなく察した。
「大輝さんに何か言われた?」
「んー。言われてはないよ。ただ目線が歓迎してないだけ」
大輝さん、というのは樹の父親である。
彼は樹と千歳の仲を歓迎していない。樹の家に行った際話す機会があったが、単純に大輝が千歳の性格を苦手としているのと、樹には立派な女性を嫁にもらって来て欲しいそうで、あまり好意的に見られないそうだ。
千歳が嫌いというより他にもっといい女性が居るだろう、との事である。
「別に嫌ってはないぞ、大輝さんは」
「でもまひるん目の前につれてったら絶対まひるん選ぶよ」
「そ、それはまあ……」
千歳には千歳の魅力があるとは分かっているし真昼にはない魅力も千歳は持っている。しかし、大輝が求めるのは真昼のような言ってみれば大和撫子であり、その要求から千歳が外れているのだ。
千歳に足りていないものがある訳でも千歳が悪い訳でもなく、ただ相性と目的が合っていないだけ。
千歳は大輝に気に入られていない事を気にしているのか、深くため息をつく。
「だからってまひるんみたいになろうとしても、こう……うがーってなるし。いっくんは気にしないでいいって言うけど、やっぱり将来的にこう、娘になりたい訳でね? 円満な仲を築きたい訳ですよ」
「……難しいな。すぐに解決する問題でもないよな」
「うん。年単位でかかる。まあ、頑張るけどさー、何ともならないのが難しいの。相性ってあるからね」
周達のように公認だったらよかったのにねえ、と困ったように笑いながら真昼にくっついて真昼のかき氷を分けてもらう千歳に、なんと声をかければいいのか分からなかった。
真昼もどう声をかけていいのか分からないのか、ただ優しく千歳を撫でている。
千歳も甘えるようにくっついて、ついでにかき氷のおねだりをしていた。
そうしていれば、樹が両手に注文の品を抱えて戻ってきているのが人混みの隙間から見えた。
「別にへこんでる訳じゃないし、いっくんには言わないでね」
先んじて注意した千歳がいつもの笑みを浮かべて樹の方に向かうのを、何とも言えない表情で周と真昼は見送った。
発売まであと一日!つまりは明日ですよ!(*´꒳`*)
それからお知らせが二件。
Twitterの方でですが和武先生にお隣の天使様の4P紹介漫画描いていただきました!
とても素敵でまひるんが天使だし周くんもかっこよく描かれてますので、よろしければご覧いただければと思いますー!
それからもう一件。
なんと明日公式発売の『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』、重版決定しましたー!
……公式発売日前に重版とは(困惑)
みなさまのご購入のお陰です、ありがとうございます……!
地方の方は明日明後日発売くらいかなと思いますが、よろしければお手に取っていただければ幸いです!(*´꒳`*)
 





