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158 相談

 真昼の父親らしき男性と会ってから五日。

 一応外出する際は彼の姿が見えないか気を付けていたが、心配とは裏腹に彼は今のところ周達に影をちらつかせる事すらなかった。


 おそらく、ではあるが、彼は真昼に会いに来たもしくは様子見をしにきていた、そして結局顔を合わせるのを躊躇ったのではないかと思う。でなければ話しかけにくる筈なのだ。

 真昼に聞いてみたが、特に連絡があったり顔を合わせたという事はなかったそうなので、彼は今真昼と会うつもりがないのかもしれない。


「……よくわからないんだよなあ」


 会いに来た、という行動自体は分からなくもないが、その動機が分からないので周はなんとも言えない不可解さがしこりとなって残っている。

 かといって踏み込みすぎる訳にもいかないので、相手が接触してこない限りこちらからは何もアクションを起こせないのである。


「どうしたんだ?」

「ちょっと悩み事」


 夏休みの宿題を携えて周の家までやってきた樹の宿題を見つつ呟いたものだから、樹が聞き取って不思議そうな顔をしている。


「周が口に出すほど悩むって珍しいなあ……どれ、お兄さんが聞いてやろう」

「俺より後に生まれた癖に何を言う」

「細かい事はいいんだよ。ほれほれ」


 どうやら宿題をするのに飽きたらしい。

 ぽいっとシャーペンを机に投げ出してこちらに体を向けて胸をポンポンと叩いている。オレに任せろ、と言いたいようだ。


(……どうしたものか)


 流石に、真昼の家庭事情を彼に伝える訳にはいかない。幾ら親友と言える仲であろうが、真昼が秘すると決めた事は口外すべきではない。

 これが周の秘密ならば打ち明けたかもしれないが、あくまで真昼のものであって周のものではない。包み隠さず伝える、という手段はとれそうになかった。


 かといって、一人で悩んでいても答えが出るものでもない。


 周は少しの間唇を閉ざした後、脳内で言葉を選びつつ口を開く。


「今まで向こうから関わりを断っていた人間が急に接触しようとしてきたとして、相手は何を考えているんだと思う?」

「それ、周の事?」

「ノーコメント」

「ふーん。まあいいけど」


 周の発言に微妙に察したような眼差しになったが、樹は深く追求する事はなく、ただ言葉を受けて思案顔になる。


「まあ場合によるけど……それ連絡とかなしに?」

「なしに」

「うーん。相手はストーカーでないよな?」

「……ギリ違うと思う」


 こっそりマンションに来て真昼が現れた途端音もなく消えているので、ストーカーとは言えないが怪しさはあるだろう。


「そのギリが気になるところだけど……そうだなあ、相手の事が気になってるのは確かだよな。間柄がどんなものかは分からないけど、ありうるとすれば口頭で伝えなければならない重要な用件を持ってきた、もしくは何か関わりたいと思わせるような心変わりがあった、とかかなあ」

「……心変わり」

「今まで向こうから関わりを切られていたってのに自ら接してくるならそうしかないんじゃねーのか?」


 流石に内容までは分からないけどな、と肩を竦められて、周も「そりゃそうだ」と苦笑する。


 樹が言うような事を考えれば会いに来るのもおかしくはない。ただ、その理由は分からずじまいだ。

 周は真昼の父親の人柄や環境など知らないので、想像しようにもヒントの欠片もない。

 あるとするなら、愛人と何かあった、もしくは本人に何かあったか、くらいだろう。それしか今更真昼に会いに来る理由が想像出来ない。


「まあ、オレは詳しく知らないから何とも言えないんだけどさあ。オレなら気になって連絡しちゃうなあ。こう、痒いのに放置するってやだし」

「お前らしいというか……」

「ま、周は受動的だし、接触あるまで待てばいいんじゃないの? 多分、そういうのってその内また接触してくると思うんだよなあ。接触を諦められるものならそもそもメールや電話でいい訳だし」


 状況が分からないなら待つしかないんじゃないのか、という言葉に、周も現状解決法が見つからないので待ちの姿勢になるしかないという結論に達した。

 そもそも、真昼が接触される側なのだから、周にはどうしようもない、というのが大きい。


 そうするしかないか、とため息をついた周に、樹が愉快そうに唇に弧を描かせる。


「……ま、好きな人のために頑張れ若人よ」

「なっ」

「お前、案外分かりやすいよなあ。自分の事なら自分って言うだろ。お前がそこまでして悩むの椎名さんだけじゃん」

「……うるせえ」

「オレは他人の事情にあんまり口出しする権利ないからこれくらいにしとくけど、周はかわいい彼女さんのために頑張りたまえ」


 うりうり、と肘で小突いてくる樹に周はむすっと顔を歪めて、それから「分かってるよ」と小さく返した。

昨日あとがきに追記したのですが、なんと6月15日発売の『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』の紹介PVを作っていただきましたー!(´∀`*)

ナレーションは石見舞菜香さんという方に担当していただきました!

YouTubeのGA文庫さんのチャンネルにアップされていますのでよろしければご覧下さい(´ワ`*)

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『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件5』 7月15日頃発売です!
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