149 四人でおでかけ
短め
「真昼ちゃん、これなんてどうかしら」
「あ……素敵です。このレース使いがいい感じですね」
女子二人……というよりは年齢的に少女と女性が二人楽しそうに会話するのを、周はのんびりと店の端で眺めていた。
隣には、同じくのんびりと二人を眺める修斗が居る。
「楽しそうだね二人とも」
「そうだな。……女の人ってどうしてあんなに服で盛り上がれるんだろうか」
真昼たっての希望で四人揃ってショッピングモールにやってきたのだが、ブティックで女性二人がああでもないこうでもないと服を体に当て始めた辺りから手持ちぶさたになったのだ。
別に買い物に付き合う事や服選びは苦でもないのだが、あそこまできゃっきゃうふふと女子の園のような雰囲気をかもされると話に入りにくいので、距離を置いている。
修斗は二人が盛り上がっているのを見守りたいが故に周の隣に居るらしい。
「やっぱり女の子はいつになっても美しい自分でありたいと思うからじゃないかな。あと純粋に着飾るのが好きってのもありそうだし」
「まあ見てる分にもいいよな」
「着飾る姿を見るのが?」
「それもあるけど、ああやって楽しそうに選んでるのを見るのが」
世の中の男子は女子の買い物に付き合うのは億劫らしいが、周は志保子に散々付き合わされているので慣れている。性格的にもそこまでせっかちではないし、待ち時間も楽しみを見いだせる。
それに、真昼相手だと彼女が嬉しそうに笑っているだけで結構な充足感があるので、結構楽しい時間だった。
「うんうん、周もよさが分かってきたねえ」
「修斗さんと周はそんなはしっこで何してるの、こっちいらっしゃい」
しみじみと頷いている修斗と周に、どうやら志保子が気付いたらしく手招きをしてくる。
真昼もこちらを見ている。手は、服を二着ほど持っていた。
呼ばれたので親子揃って二人の所に歩み寄れば、にこにことご機嫌そうな志保子が後ろから真昼の両肩を持って軽く前に出すように真昼を周の目の前に立たせた。
「周はこっちとこっちどっちが真昼ちゃんに似合うと思う?」
どうやら服を選んでほしいらしい。
ちらりと服を見れば、レースがあしらわれたお嬢様風のブラウスと、落ち着きつつ明るい雰囲気を醸すパステルブルーのブラウス。
正直なところどちらも似合うと思うし、どちらがいいと言われても買うのは真昼なので、あまり指図しない方がいいのではないかと思ってしまう。
「俺は真昼が選ぶものならそれでいいと思うけど」
「……そ、その、周くんの好みも聞きたいなって。周くんの好みも知っておきたいですし……」
恥じらうように瞳を一度伏せて、それからおずおずといった風に期待を込めてこちらを上目使いしてくる真昼に、周はぐっと息を飲み込む。
自分好みになろうとしている、という事実だけで、心臓がどんどん暴れだす。
真昼のありのままが好みだと思う、それは嘘ではないが、自分のために好みの服を身に付けてくれようとする気持ちが、嬉しかった。
頬に赤らみが差しているのは自覚しつつ、ブラウスと真昼の顔を見比べて「こっち」とレースがあしらわれたブラウスを差し出す。
周が選んだ服を真昼は小さく笑って抱き締め、残りは元の場所に戻しに行く。
「……ほんと、可愛いわよねえ」
「知ってる」
「憚らなくなってきたわね」
「うるさい」
志保子の微笑ましそうな声に、周はそっぽを向いた。
活動報告で口絵その2の公開をしておりますー!
よろしければご覧下さい(´∀`*)
あと作業が一段落したのでそろそろ更新ペースを少し早めていけたらと思います。
書籍発売まであと一ヶ月という事を実感しつつ、また頑張っていきます。
どうぞよろしくお願いいたします!