120 おまけ
短め。おまけの帰宅後。
「あ、あの、周くん……」
腕の中で戸惑いの声を上げる真昼に、周は答える事はせず真昼の背中に手を回した。
からかってきた真昼へ仕返しのために夕食後真昼を抱き締めているのだが、逆に周にとっての苦行になっている気がした。
真昼は基本的に周がする事を受け入れている。手を握ったり頭を撫でたりするのは好きにさせてくれるし、抱き締めても嫌がらないのだ。
甘い匂いを鼻腔いっぱいに吸い込んでも嫌がらない、抱き締めて柔らかい体を堪能しても嫌がらない。大概の事は「周くんにされるのは好きですよ」という言葉で許してくれる。
周の行動をかなり許容する真昼に仕返しとなると、周もそれ相応にダメージを負う。というか現時点では真昼にダメージなどなくて、周の理性辺りに打撃を受けていた。
「急にどうしたんですか周くん……?」
「……学校の仕返し」
「仕返し?」
「からかってきたから仕返しで構い倒そうと思って」
「されても嬉しいだけですけど」
「だよなあ」
本人も喜んでいるので、どうしてやろうかと悩む。
そもそもの問題として、周はあまり真昼に大胆に迫るという事は出来ない。
互いの性格上、強引に何かをしたりされたりするのは得意ではない。ゆっくりゆっくり一歩ずつ近寄ったり躊躇いながら触れていって慣れるタイプなので、攻めあぐねていた。
「……つーか、俺としてはこの体勢で充分恥ずかしい」
本音を洩らしてしまったが、やはり抱き締めるだけでも割と勇気が要るし恥ずかしさはある。スマートに触れられるように努力しているものの、やはり心臓が跳ねてしまうのはどうしようもない。
周の言葉に、真昼がぱちりと瞳を瞬かせる。
「……別に、私も恥ずかしくない訳じゃないですよ」
「え?」
「だって、周くんに触れられるのは、安心するし気持ちいいですけど、照れるというか……その、どきどきします、よ」
「その割に顔に出ないけど」
「……出たらからかうじゃないですか」
「からかうっつーか……可愛いなって見てしまうけど」
仕返しもするかもしれないが、恐らく恥じらう真昼の可愛さに内心で悶える方の割合が大きいのではないだろうか。
顔も声も可愛いし仕草も性格も可愛い彼女が恥じらったら、当然可愛らしい。今まで散々撃沈してきた周だから間違いなく言える。
大真面目に返せば、真昼がきゅっと目を閉じて周の胸に頭突きする。
「そ、そういう事言うから……そういうところですよ周くんは」
「どういう事だよ」
「……無自覚にたらしてます」
「いや真昼の方が無自覚にこっちを殺しに来てるから」
「そんな事ありません。周くんの方が破壊力が高いです」
ぐりぐりと額を押し付けてくる真昼は、周の背中に手を回してくっつきつつ「修斗さんのご教育のせいもあるでしょうけど」と呟いている。
何故そこで父親の名が出てきたのか分からない。
ただ、恥じらっているのは間違いないので、ある意味仕返しが出来ただろう。
これ以上何か言うと真昼が顔を上げなくなる可能性が高いので、口を開く事だけはやめておき、真昼の頭を撫でておいた。
活動報告に沢山のコメントありがとうございますー!
まだ見ていない方もよければ和武先生に描いていただいた真昼さんの可愛さを知っていただければと思いますー(´∀`*)