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01・緊急回避ろーりんぐしざーす面舵いっぱい

今回から5章突入です。


というかゴールのビジョンが全く無い(;・∀・)

いいのかこれで。



日本・とある都心のマンションの一室―――


その部屋の家主である少女が、何も無い空間に向かって

叫んでいた。


「ママ! 早くしてください!

 でないと間に合わなくなっちゃいます!!」


ミイト国の騒動からしばらく経って―――


とあるマンションの一室で、女神・フィオナは

焦りながら母親であるアルフリーダに催促していた。


『もうちょっとだけだから……

 あと少しだけ待てない?』


「ダメです!

 ていうか何でよりによってアタシがあちらで

 本格的にデビューする日に……!」




│ ■天界・フィオナの神殿じっか  │




「ホントに待って!

 あと一着! 一着だけだから!」


そこには、子供が母親に着付けを手伝って

もらうような、一組の少年と女性の姿があり―――

そしてその横には大量の様々な衣装が、山となって

積み重ねられている。


軍神パパがいない間に、一着でも多くテストして

 おかないと。

 ただでさえ残り期間が少ない時に、天変地異きゅうなおしごと

 パパがいない、めったに無い機会チャンスなんだから!


 あ、ちょっとナヴィ動かないでね。

 リップとコンシーラーのメイクブラシどこやったっけ」


「あの、アルフリーダしゃま……


 本当にもうお時間がありましぇんので―――

 早くしないと『女神の導き』との会合の約束に

 遅刻してしまいましゅ」


焦るアルフリーダの目の前には、彼女の従僕である

ナヴィ(人間Ver)が困った顔で立っていた。




「待って待ってちょお待って!


 来るべき聖戦クリスマスに向けて……

 何がパパに合うのか、調べておきませんとグヘヘ♪」


「ええとでしゅね、衣装選びでしゅたら、

 ユニシス様に直接選んでもらった方が

 いいんじゃないでしゅか?」


言葉を選びつつ正論で自分の主人を諭そうとするも、

彼女はその手を止める事なく反論する。


「何言ってるの?

 初めて着せた時の恥じらいや初初ういういしさを

 楽しむのがいいんじゃない。


 だからナヴィで確かめているんじゃ

 ないのゲフゲフゲフ♪」


うわあ、と心の中で感想を漏らそうとも口と

表情には出さず―――

何とかしてこの状況を打開する方法を彼は

模索する。




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




「もーこれ以上待ってられない!

 ナヴィ、フラールへ降臨するわよ!」




│ ■天界・フィオナの神殿じっか  │




「ちょ、直接でしゅか!?

 でしゅが今は……!」


「あ! ちょっと待ってナヴィ!

 まだ唇の仕上げにルージュとグロスが……!」


アルフリーダが言い終わる前にナヴィは

光に包まれ―――

そのまま天界から姿を消した。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「い、いよいよ約束の時間だが……」


「ガルバンさん、落ち着いてください」


「し、しかしだなレンティル。

 『女神の導き』代表として、何としても

 フィオナ様にお気に召して頂かねば……!」


アルプの果樹園、その生家である実家で、

『女神の導き』と名乗るメンバー2人が

極度の緊張に耐えながらその時を待っていた。


1人はミイト国でバーレンシア侯爵・ビューワー伯爵と

初めて面識を持ったレンティル。


その彼にガルバンと呼ばれた男は、年齢もさほど

変わらず、20代半ばに見え―――


その前髪が極端に短い短髪に、中肉中背だが

痩せ過ぎではなく、レンティルと同じく着込んだ

ジャックの袖からは不釣り合いな太さの腕がのぞき、

肉体労働者である事を伺わせた。


「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。

 フィオナ様は寛容かんようなお方ですから」


アルプの母ソニアに平静になるよう促されるものの、

その挙動のぎこちなさはなかなか消えず―――


「しかし、代表って言っても若いんだな。

 もっと年食ったヤツが来ると思ってたのに」


「し、失礼だよ。

 ミモザ姉ったら」


問われたガルバンは、眷属の姉の問いに

直立不動のまま45度ほど体を回転させ、

向き直る。




「そうですね……

 何せ『枠外の者』に対抗するために結成された

 組織ですから、お年寄りや妻子持ちはその、

 敬遠されてしまいまして」


「これから『新貴族』とも敵対しようという

 組織ですからね。


 失う物が無いか、覚悟か―――

 そのどちらかは確実に強いられるでしょう」


待機していたバートレットも、実情と共に彼らを

擁護する。


「組織と言っても出来たばかりですし、

 まだまだ烏合の衆です。


 それで、連絡役をしてくれたトニックさんや

 ソルトさんにはキッチリ鍛えられましたよ」


「尾行とか素人丸出しだったもんね。


 まあ、用心するに越した事は無いさ」


ミイト国での出来事を思い出したのか、

レンティルの言葉にバーレンシア侯爵もうなずいた。


「あの2人は諜報員として非常に

 優秀ですから―――


 今ではグラノーラ家でも彼らを中心に

 使っております」


「そういえば、そのお2人は?

 トニックさんはともかくソルトさんは―――」


異教徒きょにゅうはのトニックは事情はわからずとも、

フィオナを避けている事は知っているので、

そのあたりは触れずにアルプはマルゴットに

彼らの所在を聞く。




「彼らは別方面に遠出してもらっています。

 陽動ようどうも兼ねて―――

 恐らく、ソルトは明日にはこちらに来るかと。


 また、眷属の方には全員集まって頂きましたので、

 ここにいない方々に情報を伝えるにあたって、

 時間的なロスは無いと判断しました」


マルゴットが説明を終えると、誰からと

いうでもなく、みんなが時計に視線をやる。


何とかその不安そうな雰囲気を変えようと、

ガルバンが口を開く。


「そういえば、我々に最低人数で来るようにと

 進言してくださったのは、バーレンシア侯爵様

 だとか―――


 それが無ければ、慌てて集団で押し寄せ、

 敵の警戒けいかいあおってしまった事でしょう。


 今後とも、ご指導のほどよろしくお願いいたします」


「実際にミイト国で一騒動あったしね。

 その辺の話は共有されているかな?


 それに僕の方も君達から得た情報は多い。

 ギブ&テイクってヤツだよ」


深々と頭を下げるガルバンとレンティルに、

気さくにバーレンシア侯爵は応え―――

そしてまた、時計の秒針だけが室内に響き

気まずい沈黙が流れる。


「それで、アルプ―――

 フィオナ様とナヴィ様のご降臨は……」


さすがにソニアが耐えかねて、息子であり

第一眷属であるアルプに状況を確認する。




「い、いつもならご降臨なされる前に、何らかの

 お言葉を頂けるんだけど」


「最初に、頭の中に直接響くんですよね。

 でも、わたしの方にもそのような兆候はまだ……」


アルプとポーラが気を揉んでいると、もう1人の眷属が

声を上げた。


「あ! ま、待ってください!

 ボクの方に……」


ファジーに続いて、2人の眷属も意識を集中する。

そして、室内の中央がひかりかがやいた。


「こっ、これがご降臨……

 本当に女神様が……!」


「フィオナ様!

 どうかその御身おんみを目の前に……」


ガルバンとレンティルは席を立ち、祈るように

両手を胸の前で合わせて膝をつく。


そして、女神とお目付け役の声が室内に響いた。


『ちょっちょっと待つでしゅ!

 こにょままでは部屋の中央に降臨して

 しまうでしゅよ!』


『え? 何か問題が?』


饗応きょうおうの準備がされているに決まっている

 でしゅ!

 料理やテーブルの上にダイブしゅる

 つもりでしゅか!?』


『うお! それはまずい!

 緊急回避ろーりんぐしざーす面舵おもかじいっぱい

 頑張れアタシいいぃいいい!!』


「えっ」


「女神……様?」


他のメンバーはともかく、初めて降臨を

目の当たりにする『女神の導き』の2人は、

うまく状況を把握出来ないでいた。


そして、まばゆい光が部屋を包み込み―――

同時に何かが落下するような衝撃と音が一面に

響いた。




「ひゃうっ!!」


「ぐへっ!!」


ちなみに、「ひゃうっ!!」がナヴィで

「ぐへっ!!」がフィオナである。


そして光が弱まると同時に、しりもちをついた

2人が、その姿を現した。


「あいたたた……

 大丈夫でしゅか、フィオナ様?」


「アタタ……2人別々の場所から直接降臨って

 やっぱり無茶だったかしら」


ちょうどフィオナとナヴィの降臨の目の前に

いたのは、あのガルバンとレンティルで―――


2人は目を丸くしながら、その光景に対して

率直な感想を口から漏らした。


「こ、これは一体……」


「女神様が……2人……?」


『女神の導き』以外のメンバーは初対面では

ないので、フィオナとナヴィの区別は当然

付くが―――


『女性』であるフィオナは、明るい色の

セミフォーマルのドレスを着用し、年齢より

少し大人っぽく上品な雰囲気を醸し出して

いるのに対し……


「と、取り合えず起きるでしゅよ、フィオナ様」


そう言いながら体勢を立て直す『男性』の

ナヴィは、ネグリジェのような

シースルーと言ってもいいくらいのワンピースを

身にまとい、その透明感のある白い肌がさらに

神秘さを演出していた。


さらに顔に施された控えめな薄化粧が、少女の

美しさを妖しく彩る。




「おお……フィオナ様……!」


「何と神々しいお姿……!」


と、まだ立ち上がれないナヴィの前でガルバンと

レンティルは両膝を付いて、祈るように信仰の

言葉を捧げた。




―――15分後―――




「大変申し訳ございませんでした!!」


「この無礼、命でつぐなえと言われれば、

 今すぐにでも……!」


アルプの私服を借り、着替えたナヴィの前で

改めてガルバンとレンティルの2人は、床に

頭をめり込ませんばかりに土下座していた。


「やめてくだしゃい。

 せめて死人は出さない、が降臨の最低限の

 目標でしゅので」


「え? アタシの降臨ハードルそんなに低いの?」


そして2人をナヴィとフィオナ、周囲が何とか宥め、

ようやく全員を席に着かせる事に成功した。


「で、では改めまして……

 『女神の導き』代表、オリイヴ国の

 ガルバンと申します」


「わたしめは、マービィ国出身、レンティルと

 いいます。どうかお見知りおきを……」


返礼として、対面に座っていたフィオナとナヴィが

頭を下げる。


「初めまして。

 果樹の豊穣を司る女神、フィオナです」


「フィオナ様の支援に来ておりましゅ、ナヴィです。

 先ほどはしょの、あの―――ご迷惑を」


互いに気まずい空気が流れる中、ミモザが軽口を

叩くように、誰もが持っていた疑問を指摘する。


「まぁしゃーないよ。

 あの姿のナヴィ様を男だって見抜くのは

 女にも不可能だ。


 にしても―――

 何であんな格好してたんだい?」


周囲は複雑そうにしながらも、アルプの母ソニアを

初めとして、ポーラ・フィオナ女性陣がウンウンと

頷き―――

追随するようにして男性陣も同意のために首を

縦に振る。




「ここに降臨する直前まで別の世界で―――

 フィオナ様の母上、アルフリーダ様の側に

 控えておりましゅたから。


 しょの時の儀式の衣装のまま―――

 こちらに降臨してしまったのでしゅ」


別の世界(天界)で、儀式(衣装選び)のため、

と強引ではあるが他者にはわからない言い訳で

何とかごまかす。


「ナヴィは、アタシではなくアタシの母、

 女神・アルフリーダに仕えているんです。

 アタシにはあくまでもサポートで付き合って

 くれているだけですので……


 ここに降臨する際に、何か手違いがあったのかも

 知れません。

 本当にごめんなさい」


「い、いえっ!

 フィオナ様が謝られる事では……!」


「お許し頂けるだけでも望外の至りと思って

 おりますれば……」


ガルバン・レンティルは再び深々と頭を下げ、

それが仕切り直しの合図のように、マルゴットが

口を開いて、会合がようやくスタートした。


「では、まず現在の情報を確認しましょう―――」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2910名―――



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