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35・2割くらいは違うから

次回くらいで4章は終わるかも。

さて5章の構想はどうするか。

続けるけど(;・∀・)



日本・とある都心のマンションの一室―――


リビングでいつも通りにくつろぐ、家主であろう

少女と、飼い猫が1匹―――


「さて急激に肌寒くなってきた今日この頃、

 皆様いかがお過ごしでしょうか?

 果樹の豊穣を司る優しき女神・フィオナです」


「お前はどこのニュースキャスターなんだよ」


さり気なく自己紹介する女神にツッコミを入れる

お目付け役兼サポート役のナヴィ(猫Ver)。


「今日の天気は、午前中から正午にかけて雨が

 ぱらつきますが、次第に天候は回復し、

 夕方になってオマイラに天罰が下るでしょう。


 関係無い人は、巻き込まれないよう注意して

 ください」


「いきなり読者にケンカ売りにいくスタイル、

 止めてくれませんかねえ?


 ていうか、何でいきなり自己紹介っぽい事を?」


ナヴィは猫の姿のままフィオナに近付くと、

上半身を起こしたまま前足を揃え、下半身を

座らせて彼女を見上げる。


「まあ今回もちょっと『アンカー』どもに

 してやられた感がちょっとあって……

 その意趣返しとゆーかー?」


「それにどうして不特定多数の読者を、

 巻き込まなければならないんですか」


正論で抗議するお目付け役。

それに対する彼女の答えは―――


「もちろん八つ当たりに決まってるじゃない♪」


「(コイツ……なんて澄んだ瞳をしてやがる……!)


 それじゃそろそろ、本編スタートしますね」




│ ■ミイト国・首都ポルト        │

│ ■高級ホテル『ドーセット』      │

│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア  │




「ふぃい~……ただいまー」


「お帰りなさいませ、バーレンシア侯爵様」


夕刻―――まだ夕食には若干早い時間帯。


まず侯爵を先頭に部屋に入り、伯爵と商人が

その後に続く。


「お2人も、お疲れ様でしゅ。

 どうでしゅた、話し合いは?」


「やはり、フィオナ様のイメージが一定しませんね」


「いったん主要メンバーにフラールまで来てもらって、

 そこでフィオナ様に降臨して頂くのが一番かと。


 アルプが第一眷属でもありますし、果樹の豊穣の

 女神様であれば、アルプの実家が最適だと思います。


 以前の提案通り、ソルトとトニックに連絡役に

 なってもらって、詳細を詰めようと思っております」


2人は今回マルゴットを加えて、『女神の導き』と

会ってきたのだった。


そこで今後の予定や活動計画を聞き、また

『枠外の者』の情報共有を約束してきたのである。


「ふみゅ。了解でしゅ。

 シモン君のお店が終わった後に、また神託を開くよう

 伝えておくでしゅよ」


それぞれがテーブルに着き、ポーラがお茶を淹れて

回り―――各々の苦労をねぎらう。


「それで、ナヴィ様の方は……」


ポーラが一通り配り終えたお茶を置くと、空いていた

ナヴィの隣りの席に座る。


「一応、念には念を入れて―――

 ラムキュール氏の動向も探って来ましゅたが……

 ミイト国から出るみたいでしゅ。


 トーリ(シンデリン)しゃんのお屋敷で、

 今日にも国外へ出る、みたいな事を言って

 いましゅたから―――」




―――ナヴィ回想中―――


│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷・応接室   │


「今日中に?」


「目的が確認出来たのであれば、序列第3位の国に

 居続ける、意味も金も私には無いからな。


 子爵令嬢と男爵が同行していたのなら、

 間違いはあるまい」


お見合いが無事破談になったのを受けて、

ラムキュールはシンデリンの家で確認と

安堵のため息をつく。


その不健康そうな、狂気の科学者を思わせる

陰気な目は、彼女には興味が無いというように

宙を泳いでいた。


「あんな手荒な真似なんてしなくても

 良かったでしょうに。


 貴方の入れ知恵なら許さないわよ」


同室にはベルティーユとネーブルも控え、屋敷の

主であるシンデリンは、今回の『襲撃』について

改めて抗議の意を込めて問い質す。


その光景を庭に忍び込んだナヴィが観察していた。

もちろん音声もその耳にバッチリ拾いながら―――


「あれは―――シッカ子爵令嬢の判断だと

 聞いている。


 だいたい、どうしてあれだけ事を急いだのだ?

 仮にも貴族相手に翌日、しかも呼びつけるなど

 正気の沙汰ではないぞ」


「嫌な事はさっさと終わらせる主義なのよ。

 それに、本気でまとめるつもりならあんな

 無茶はしないわ。


 そもそも私が望んだお見合いじゃないしね」


正論を述べるラムキュールに、少し怒りの混じった

感情でからかうように返すシンデリン。


事情を知っているラムキュールはマズイと感じたのか、

話題を反らす事にした。




「そういえば―――

 ネーブル君だったかな。


 かなりの腕前らしいが、君に勝るとも劣らない

 強さを誇る女性がこの屋敷にいたと……


 彼女は今どこに?

 それとも、君の姉妹か親戚かね」


「……?

 子爵令嬢と……男爵から……

 聞いてないの……?」


すでに『事情』を知っているはずの彼らから、

その情報を共有していなかった事にベルティーユは

驚いて反問する。


「??

 確かに2人とも、何やら説明しにくそうでは

 あったが―――

 彼女に何か秘密でも?」


さすがに正直に『撃退された』と言えばシンデリンが

逆らった事になり―――

さらにネーブルの女装の件もあり、説明し辛い事では

あったのだろう。


姉妹は困ったような、笑いをこらえるような顔で

今日は『普通の格好』をしたネーブルの顔を見つめ、

それに応えるように彼は真実を話し始める。




「あーそれ、私ですよ。


 お嬢様が、縁談を断る保険として私を

 女装させて―――


 確か『私、男には興味が無いんです』作戦

 でしたっけ?」


「はあ??」


「ちょっと!?

 そこまで説明しなくても……!」


混乱を重ねるラムキュールに対し、彼は淡々と

解説に努める。

それに対しシンデリンは反発の声を上げるが―――


「何ですか?

 めったに無い状況を利用して妄想を満たそうと

 したという私の推測に間違いでも?」


「ち、違うわ!

 2割くらいは違うから!」


「……8割方は……合ってる……」


「それをほぼ間違いないって言うんですよ?」


話の展開についていけないラムキュールを残し、

3人の喧騒けんそうは続いた。


―――ナヴィ回想終了―――




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア  │


「(女装うんぬんの件は、ネーブルさんのためにも

 黙っておきますか)」


「どうかしましたか、ナヴィ様?」


ポーラの問いに、何でもない、というふうに

微笑みながら答える。


「あ、いえ。別に何も。


 あとは、バーレンシア侯爵様が国を離れる前に、

 一度挨拶を、とか話していたくらいでしゅね」


「まあそうだとすると、今回僕たちが『女神の導き』と

 また接触したのも、悟られてなさそうだね」


「目は付けられているでしょうが―――

 それはそれで今さらですし」


当事者である貴族2人は、情報を冷静に分析し、

把握する。


「では後は、トーリ家から挨拶の連絡が来るのを

 待つくらいですか」


「そういえば、今日はどうされますか?

 バーレンシア侯爵様。


 まだお疲れでしたら、夕食をお運びしますけど」


マルゴットとポーラが侯爵に視線を向け、それに

対する彼の答えは―――


「あぁ、もう大丈夫だよ。

 それじゃ、もう少ししたら下まで行こう」


その言葉に安心したように、4人がそれぞれの動作で

ティーカップを口に付けた。




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「ははあ、なるほど……

 ではその『女神の導き』とは、フラールで

 会う事になったと。


 で、アルプの家で降臨を見せればいいのね?」


「ぼ、僕の家でですか!?

 それまでに建て増ししておかないと……」


夕食後、再び女神・眷属達との間に神託が開かれ―――

まずは今後の予定を共有する。


(主要メンバーを呼ぶだけですから、そこまでする

 必要は無いと思いますよ、アルプ君。


 それと―――

 信者数を一気に増やすチャンスでもありますから、

 今度はちゃんとしやがれよダ女神)


「こ、今度はって、そんな言い方……!」


母の従僕の言い様に女神は反発するが―――




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア  │




「降臨1回目(2章第1話)はインパクト重視で

 威厳ブチ壊し、


 2回目(2章第7話)はいきなりメイド服の

 持論を展開し周囲をドン引きさせ、


 3回目(3章第1話)は家に入るのに

 空き巣まがいのピッキング、


 4回目(3章第28・29話)はあろう事か

 よりにもよってジャージ姿で、


 5回目(4章第7話)に至っては降臨場所を

 二重に間違え―――


 フィオナ様はこりぇらの行為に対して、

 何か言い訳がありゅと申しゅか?」


「(至極しごくもっともです反論の余地もございません)」


ナヴィの指摘にフィオナは全面的に非を認め―――

土下座する女神をボガッド家にいる面々は心配そうに

見つめる。


それに助け船を出すように、第二の眷属が

会話を継続する。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「あっあのっ、それでっ、ボクやミモザ姉は

 どうしたらいいですか?」


ファジーの問いに、直接『女神の導き』と

交渉してきたマルゴットが応じる。


(そ、そうですね。

 出来れば、眷属の方々は揃っていた方が

 いいと思われます。


 表立って活動する組織では無いとはいえ、

 フィオナ様の存在を広く知らしめる機会でも

 ありますし―――


 またその真贋しんがんを確かめに来る、という側面も

 あるでしょうから)


「んん!? でも、アルプさんが女神の眷属って

 いうのは、有名なんじゃないのかい?」




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア  │




「正直、有名なのはおとぎ話か物語の域を出ない

 噂―――としてですね」


ミモザの質問に、フラールの出身である伯爵が

返答する。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「ビューワー伯爵がおっしゃられる通りじゃよ、

 ミモザさん。


 アルプが本物の女神様の眷属、使徒だと

 知られれば、王族や貴族、有力者が黙っておる

 わけがない。


 取り込もうとするか、それこそ奪い合いに

 なるじゃろうな」


伯爵の言葉の補足というように、第一眷属の義祖父が

説明を加える。


「女神様は、人間の世界には基本的に手は出せない

 事になっていますから―――

 あまり有名になってもいけないのだと思います。


 その制限の中でも、何とか信者、いえ、人々を

 救おうとしているのがフィオナ様なのですっ!」


アルプの尊敬の眼差しに、逆光を浴びた時のように

思わずフィオナは目を反らし―――


「え、ええ。その通りですアルプ。

 でも、アタシを心の底から信奉し、

 信仰している人には正体を明かす事も

 やぶさかでないとゆーかー?」




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア  │




自尊心じそんしんと欲望が葛藤かっとうしていましゅね」


「?? 何の事です、ナヴィ様」


マルゴットがナヴィの意図がわからず、今の言葉の

意味について質問する。


「あー、何でもありましぇんよ。


 しょれよりポーラしゃんも眷属でしゅが、

 彼女もアルプ君の家に?」


「え? わ、私もですか?」


「そういえば、ネクタリンさんはアルプの家に

 行った事はありませんでしたね。


 えーと、馬車を手配しますから、私と一緒に」


戸惑うポーラにマルゴットが対応していると、

侯爵が会話に割って入ってきた。


「うーん……でも、いっせいに集まるのはどうかなあ?

 今回みたいに襲撃されるかも知れないし……


 バラバラに集まるとか、策を講じた方がいいと思う」


「なるほど、それもそうですわね……


 ソルトさん、トニックさん。

 これからいろいろと動いてもらう事に

 なりそうですが―――」


こうしてその後30分ほど、マルゴットを中心に

フラールでのフィオナ降臨について相談がなされた。




│ ■高級ホテル『ドーセット』・プレミアスイート │




同じ頃・同じホテルで―――

クロート・ディーア公爵は、一通の書類に

目を通していた。


「お父様、まだ起きているの?

 明日にはもう帰るんでしょう?」


娘・ミリアが眠そうに目をこすりながら、

公爵に近寄る。

そんな彼女を膝の上に乗せて優しく話す。


「ああ、そうだね。

 でも急に用事が出来てしまったんだ」


「え……?

 じゃあ、お屋敷には一緒に帰れないんですか?」


娘の頭を撫でながら、父親である彼は諭すように

声をかける。


「いや、屋敷までは一緒に帰るよ。

 ただその後、王宮に行かなければ……


 (シッカ子爵家―――

 本格的に調べる必要がありそうだな)」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2849名―――




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