表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/402

32・やるよ? アタシやっちゃうよ?

去年の季節イベ等が来ると一周回って

また使えるという特典がある。

継続は力なり(違う)



日本・とある都心のマンションの一室―――


いつものようにリビングでくつろぐ女神・フィオナと、

そのお目付け役・ナヴィ(猫Ver)。


少女は手持ちのスマホを見つめながら、今プレイ中で

あろうゲームについての情報を口にする。


「お。そろそろあのイベントが来ますね」


「んー、この時期のイベントというと……

 ああ、ハロウィンですか?」


特に向きを変える事なく横になったまま、

ナヴィは受け答えする。


「そうですよ!

 妙齢の子供たちに自分にイタズラさせても

 犯罪にならない、最高のイベントです!」


「去年の想定(2章13話目)から一歩も

 成長していない素晴らしいクズっぷり、

 お見事でございますフィオナ様」


「オイオイそんなに褒めるなよ照れるぜ。


 しかし、あの2人には何を着てもらおうかしら。

 カボチャでも小悪魔でもなるべく露出が多ければ

 何でもゲフゲフゲフ♪」


皮肉をものともしない女神に呆れながらも、

口には出さず大きくため息をつくナヴィ。


そこに、響き渡る声が室内に介入した。




『あ、フィオナ。突然すまない。

 そちらにママは来ているかな?』


「パパ? 今日は来てないみたいだけど……


 でもハロウィンだから、何か買い物でも

 しているのかもね、ママ」


『ハロウィン? ああ、そちらのイベントかい?

 ママそういうの好きだからなあ』


父と娘の何気ない会話が続き、当初の目的である

母の所在の有無を確認すると、フィオナの方から

話を振った。


「そういえばパパ、ちょうどハロウィンの事で

 聞きたい事があって―――」


「聞かない方がいいかと思いますユニシス様。

 今すぐ耳をふさぐ事をオススメします」


『え” い、いや娘の言う事なんだし、

 話くらい聞いたって』


女神に即座にツッコミを入れるお目付け役の言葉に

戸惑うものの、そのままユニシスはフィオナの相談、

もとい妄想に付き合わされる事になった。




―――フィオナ説明中―――




『ん~……あの2人にどんな仮装をしてもらうか、ねえ』


内容が内容だけに、言葉を選ぼうとする軍神ユニシス

あったが、これといって的確なものは思いつかず、

取り合えずお茶を濁す事にした。


『そ、そういえばフィオナは何か着たい衣装とか

 無いのかい?』


「え? アタシですか?

 基本的には子供のお祭りっぽいので、それは

 どうなのかなーと」


「まあ、この国では本来の趣旨から外れている

 みたいですし、大人も楽しんでいる人が多い

 ようですから」


ユニシスの提案にナヴィが助け船を出し、

その問いにフィオナは悩んでいたが、やがて

手元のスマホを操作すると、一つの画面を

同居人へ向けた。


「こ、これなんかいいんじゃないかと

 思っているんですが健康的で……

 あの2人とお揃いでも着れるんじゃ

 ないかなーとか?」


その画面に映されたのは、ひと昔前の女子学生が

着るような、白い体操服とブルマのセットだった。


さすがに羞恥心があるのか画面から視線を外し、

男性陣の反応を待っていると―――




『あー、これかあ。

 く時、思ったよりゴム強くてびっくり

 するんだよね』


「そうですよねユニシス様。

 地球こちらの女性はこれ履いて運動するんでしょう?

 私もよく出来るなって思いましたよ」


「ほうほうナルホドそうですかーウンちょっと

 待って状況がいろいろとおかしい」


父親とお目付け役の会話に戸惑いながらも、彼女は

一応ツッコミを入れる。


『いや、フィオナの言いたい事もわかるんだけど、

 そのー、ママがね……

 ホラ、僕の年齢とか変えたい放題だし』


「私も散々着せ替えさせられた記憶がありますので。

 だいたい知っているといいますか」


父親とお目付け役の扱いを聞いて、フィオナは

頬を膨らませる。


「まったくもうママったら……

 パパとナヴィになんて事を。

 次ママに会ったらちゃんと言っておきます。


 『アタシも混ぜて!』って」


『あー、うーん……』


「さて、そろそろ本編スタートしますか……」




│ ■ミイト国・首都ポルト         │

│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷・応接室  │




「―――対応策ならあります。


 理論上可能、実現不可能なものではありますが」


「ま、待てよ。

 まさか『新貴族』を抜けるってんじゃ……」


“連合共同金融安定局”への対策を話そうとする

レイシェンに、ギュウルフは思わず口を挟む。


「貴族として借りを返す、それだけの事です。

 このまま放免ほうめんとあっては、立つ瀬がありません。


 それに―――言葉通りこれは、

 対策と呼べるかどうかも怪しいものですので……」


バーレンシアとバートレット、貴族2人が顔を

見合わせ―――

伯爵の方から彼女に先を促す。


「いったい、どのようなものですか?

 実現不可能とは……」


「―――簡単な事です。

 勝てる方法がなければ、戦わなければ

 いいのです」


その答えに部屋の全員は呆気にとられ、また

理解した順に戸惑う。




「……んー……

 それって、全面降伏……?」


ベルティーユが直球で理解した事を口に出す。

それに対しレイシェンは話を続ける。


「何もするな、とは言っておりません。


 『連合共同金融安定局』―――

 これは、連合国いずれの国が経済破綻になった時に

 動きます。


 逆に言えば、経済破綻する国が出てこなければ、

 出番は無いのです」


「ふみゅ。つまり?」


レイシェンの言葉を待たず、今度はベルティーユの

姉が答えを引き継いだ。


「―――経済破綻しそうな国があれば、それを

 回避させればいい、という事ね?」


『枠外の者』・『新貴族』を敵に回して―――

とはさすがに言えず、それを飲み込む。


「それって、どうなのかなあ。

 出来ると思ってる?」


ポリポリと頬をかきながら侯爵がつぶやく。


「ですから、わたくしは実現不可能だと

 予め断っているのです。


 フラールやルコルアで『枠外の者』の計画を

 邪魔した、女神様とその眷属とやらが現実に

 いれば、可能かもしれませんが……」




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「まあ、いるんですけどね」


困ったように微笑みながらアルプは、自分の

主人である女神に視線を向ける。


「お? やるよ? アタシやっちゃうよ?

 やっと神様らしくなってきたじゃん♪」


何もない空間に気合いを入れるようにパンチを

繰り出す彼女を、眷属とその義理の祖父、

そして情報屋はただ見つめていた。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「やる事はこれまでと変わらないもんね、ミモザ姉」


「奉公労働者を出させないように動けば、必然的に

 そうなるしかねーわな」


「そもそも、勝手に敵認定されてしまっているような

 ものですからねえ」


第二の眷属とその姉、そして第一眷属の母は、

半ば当然、半ば達観したかのように話す。




│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷・応接室  │




そうして一通り『事情聴取』も終わり―――

彼らを解放しよう、という雰囲気が形成されつつ

あった。


しかし、それまで発言の乏しかった第三の眷属が

空気の流れを変える。


「あのー……

 ちょっとよろしいでしょうか、お2人とも」


ポーラの不意の質問に、男爵と子爵令嬢は同時に

彼女の方へ振り向く。


「何だ?」


「確か―――ネクタリンさん、でしたね。

 バクシアの徴税官の家の……」


すでに同行者である自分の情報は調査済みだと

改めて実感するが、彼女はそのまま質問を続ける。


「『枠外の者』はともかく―――


 どうしてお2人は『新貴族』に協力を?」


一瞬、気まずい沈黙が訪れるが、自嘲気味じちょうぎみ

ギュウルフの方から応える。


「どうして、って―――

 金だよ、金。


 親父の代で結構な借金背負っちまってな。

 だから俺はどちらかというと『枠外の者』に

 頭が上がらねえんだ」


「わたくしは……

 借金は無いのですが、領地の財政が火の車

 でして。


 慢性的まんせいてきなものですから、こればかりは……」


それを聞いていた侯爵はアゴに、伯爵は額に

人差し指を曲げて当て、納得がいかないと

いうような態度を取る。




「う~ん……

 借金のある男爵はともかく、ねえ」


「ミイト国の貴族が、そこまでお金に困る

 事態が想像出来ないのですが……」


レイシェンの表情を察したのか、男爵が代弁

するかのように口を開く。


「―――このお嬢様はちょっとワケありでな。


 律儀に先祖からの言いつけを守って、

 それが原因で余裕が無いようなモノだからよ」


「……先祖から?


 でも、そうなるとますますわかりません。

 『新貴族』は従来の伝統派貴族とは一線を画す

 存在のはず……」


ポーラが首を傾げると、今度は当人―――

レイシェンから直に答えが返ってきた。


「シッカ家はもともと武門の出なのです。

 それゆえ、他の子爵家に比べて軍備に多くの

 力を割いております。


 それは万が一の時、王家の助けとなるため……」


聞く側の貴族2人がそれで状況を把握し、言葉で

表現する。


「なるほどねぇ。

 忠義を尽くすためにしてきた事が、

 皮肉にも負担となって―――」


「心ならずも意に沿わない相手と組まざるを得ない、

 というところですか」


誰からともなくため息をつかれ、それが伝染するように

周囲に広がっていく。




「あのー、シッカさん?

 ご入用ならウチがいくらか……」


商人のシンデリンが融資を申し出るが、即座に

彼女に反発される。


「あなた『枠外の者』でしょう!?

 それに、借りるくらいならとっくにラムキュール氏に

 借りていますよ!


 そして借りた結果がコレです!」


「コレ言うな」


レイシェンに指さしされたギュウルフが不満気に

応え―――

一息つくとレイシェンは冷静になり、同情を

誘うでもなく、表情を崩さずに淡々と述べる。


「毎年、納税の時期になると頭が痛くなります。


 見返りを求めて忠義を尽くしているわけでは

 ありませんが―――

 時代遅れと言われても否定出来ない自分が

 おります。


 情けない限りではありますが……」


「納税……」


その言葉に、徴税官の娘が反応した。




│ ■バクシア国・ボガッド家屋敷  │




「……ん? ポーラさん?

 はあはあ、お父さんを?


 ここに連れて来ればいいの?

 えーと、ボガッドさんちょっといいですか?」


女神の言葉に、ローンが対応し事情を聞く。


「ネクタリンさんの父親を?


 ウーム、それはちと難しいですな……

 ワシが商売先でもない屋敷に徴税官を

 招くというのは」


難色を示す彼に、さらに彼女から神託カイセンを通して

要請が来る。


「あ、場所はどこでも構わないそうです。


 とにかく、お父さんと連絡が取れれば、との事で」


「ポーラさんの家ではダメなんですか?」


アルプの質問に、再度ミイト国から返事がフィオナを

通して伝えられる。


「出来れば、今こちらにいる人たちとも話せた

 方がいいそうです。


 ポーラさんの家では、その……

 あまり広くはないので」


「ワシが徴税官の自宅に行く事は出来ませんよ。

 癒着ゆちゃくと思われてしまいます」


それぞれが眉間にシワを寄せて悩み始めたその時、

再びミイト国の眷属から提案が届いた。




│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷・応接室  │




「では、シモン君の店でお願いします!

 あそこの応接室なら、それなりに人数も

 入れたはずですので……!」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2840名―――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ