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09売り方を考えよう



―――この小説を閲覧する際の注意―――


・異世界物


・設定グダグダ


・自由


・ポロリもあるよ!




「おう黙れや」


「?? 何かありましたか、ナヴィ?」


「いえ、いつものくだらない冒頭の小ネタに

 ツッコミを入れただけです」


日本国のある都市部のマンション、その一室で、

一人の女神と一匹のお目付け役は何気ない会話を

交わしていた。


「そーいえばナヴィは、ママの眷属なんですよね?」


「眷属ではありません。

 どちらかというと従僕―――言葉は悪いですが、

 魔女と使い魔のような関係になります」


「眷属よりワンランク下ってところですか。

 ママに拾われたとか」


「まあそんな感じですね」


「ふぅん……でもママもどうせなら、

 可愛い男の子か格好いい男性でも

 お目付け役にしてくれたらよかったのになー」


「私も人の姿になれますよ?

 年齢から言って、あの眷属の子と

 同じくらいの姿になりますが。

 性別もオスですし―――」


「えっ!? はっ!?

 何それアタシ初耳なんですけど!

 見せて触らせてスリスリさせて!」


「アルフリーダ様から、

 『お前がフィオナの前で人の姿になったら

 3日と無事でいられるはずがない』と警告されて

 おりましたので」


「はぁ!? このアタシを舐めないでください!!


 まずガマンする事自体無理」


「否定しろや。

 いい加減、本編スタートしますね」




│ ■バクシア国・首都ブラン │




「うわぁ……」


忙しなく行き交う人々、二階建て以上の建物が連なる通り、

石畳で舗装された道、様々な商品が並べられる店先―――


初めて見る光景に、アルプの口から嘆息の声が漏れる。


「アルプは、バクシア国は初めてでしたか?」


馬車の車中、隣りに座っていたバートが

一緒に外を見ながら話しかける。


「ううん、前に一度、母と来た事があります。

 でも―――その時はこんなところまでは

 来なくて」


「現物の商取引なら、国境付近の市場で

 事足りますからね。


 首都であれば―――富裕層も多いわ。

 せいぜい高く売りつけてやりなさい」


―――それに、富裕層が多いという事は、

奉公労働者を『雇っている』人も多い―――


マルゴットはその事実を言葉に出せず、飲み込んだ。


「え、でも……」


「ここはバクシアでも年に金貨100枚200枚

 稼ぐような人達が住むところよ。


 逆に安過ぎても相手にされないわ。


 全部売り切れる保証も無いんだから、

 頑張って稼ぎなさい。


 1個銀貨1枚で売るくらいの勢いで、ね」


「は、はいっ」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




【 えっと、1000個ほど持ってきたんだっけか。 】


【 全部銀貨1枚で売れたら

 銀貨1千枚=金貨200枚? 】


【 隣国だが結構経済格差あるな。

 近代か中世だとこんな物かね。 】



「バーレンシア侯爵に1箱あげてしまいましたけど、

 まあ誤差の範囲でしょう。


 あれで侯爵の取り分は1割になりましたし、

 関税や諸経費を差し引いても―――


 って、聞いてます? フィオナ様」


ポカンとしている女神に、すかさずお目付け役が

ツッコミを入れる。


「え? き、聞いてましたよモチロン。

 別にいろいろと数字が出てきて話が面倒くさく

 なってきたなあ何て思ってもいませんよ」


「……では、先ほどまでの状況を

 ご説明お願いします」


「え、ええとですねナヴィが―――」


「はい、私が―――」


「バッタを捕まえて―――」


「バッタを捕まえて―――

 バッタを捕まえてっ!?」


予想外の回答に思わずナヴィは聞き返す。


「その捕食シーンを動画サイトにUP?」


「何で私がそんな世界デビュー

 しなくちゃならないんだよ!

 ちゃんとアルフリーダ様が高級カリカリ

 置いてってくれているわ!!


 ああいいですもう!

 とにかく、あの眷属―――アルプ君の商売を

 見守ってください。

 それくらい出来るでしょう?」


「よーし! それじゃあ今日も頑張って

 あの子の頭のてっぺんからつま先まで

 穴が開くほどに凝視して―――」


「見守れって言ってんだろ、神託カイセン繋ぐぞ」




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■高級青果店『パッション』 │




「ふぅっ、よし!

 これで全部か、お嬢?」


健康的な日焼けの色を隠そうともせず、

その褐色の肌の少年は額の汗を拭いながら、

マルゴットに向き合う。


年齢は13、4才くらいだろうか。

同年代と比べて力仕事に慣れているのか、

細いながらも筋肉質な腕が、

半そでのシャツから伸びる。


「お疲れ様、シモン。

 それで、この子の事なんですけど―――」


「あー、大丈夫大丈夫。

 手紙で大方の話はわかってるぜ。

 お嬢が商談行っている間はちゃんと

 面倒見るからよ。


 アルプだっけ?

 俺の事はシモンって呼んでくれ。

 じゃ、お嬢が帰ってくるまでガッチリ稼ごうぜ!」


「は、はいっ! シモンさん」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




       供物

「おぉ!? 攻略対象が増えた!?

 いいねー、こういう元気いっぱいっていう少年も

 なかなかデュフフ♪

 アルプと並んで立つと、またお互いに魅力を

 引き立たせて……♪」


「―――もしもし、あ、アルフリーダ様に

 繋いでもらえますか?

 ええ、フィオナ様の事で―――」


興奮する女神と己の職務に忠実なお目付け役は、

お互いに正反対の動きを見せる。


「お、おのれナヴィ……!

 貴様、またしても我が野望の前に立ちふさがるか……!」


「何でラスボス風なんだよ!

 つかそんな野望ならいくらでも立ちふさがるわ!!


              信者

 ていうか、ここでの稼ぎで奉公労働者を何人

 買い戻せるかが、かかっているんですから。

 ちゃんと見てください」




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■高級青果店『パッション』 │




「おっし、アルプの売り場はあそこだ。


 スペース的には小さいけど、品種は高級品だからな。

 ドカドカと置いておくと足元見られちまう。

 もし商品が切れたらその都度、氷室ひむろから

 持ってこさせる」


(氷室:冬の間に氷を溜め込んだ自然の冷凍室)


「氷室まであるんですか、スゴい……

 それに、僕とそんなに変わらなそうな

 年なのに、店や商品の事もよく知ってて―――」


商売の段取りをしているうちに、アルプとシモンは

兄弟のように打ち解けていた。


「ま、俺もこの店の跡取りだからな。

 今は一人息子という名の労働力だけど。


 ―――で、いくらくらいで売るつもりなんだ?」


「マルゴットさんは―――

 『1個銀貨1枚で売るくらいのつもりで』って

 おっしゃってましたけど……


 高級品種でも、僕はなるべく多くの人に

 食べてもらいたいと思っています。

 だから、フラール国での値段、

 3個で銀貨1枚で―――」


明るい表情で意気込むアルプとは裏腹に、

シモンは深いため息をついた。


「―――ンな安物、誰も買わねぇよ。

 ここは『高級品を扱う店』で通っているんだぜ?」


きょとん、とするアルプを前に、その短髪を

ガシガシかきながら話を続ける。


丹精たんせい込めて育ててきたアルプにゃ悪いが―――

 ここで商品を買う連中は、味も品質も見やしねぇ。


 『自分はこんな高い物を買える』っていう

 ステータスを買っていくんだよ。


 中にはちゃんと味で買っていく

 『物好き』もいるけどな。


 お嬢は1個銀貨1枚って言ってたんだろ?

 そりゃ正しいと思うぞ」


「え……」


「バクシアで商売するつもりなら、そこンところ

 よっく考えてから売るんだ。


 それでもアルプが『安物』を売ろうってンなら―――

 いくらお嬢の頼みでもココには置けねェ。

 店の名前に傷がつく。


 いいか? 少なくとも1個銀貨1枚だ」


「…………」




│ ■バクシア国・首都ブラン    │

│ ■グラノーラ家所有馬車 車中  │




「―――今頃、『この国』の洗礼を受けている

 頃かしら」


「……わかっていて、ですか?」


重い空気がバートレット・マルゴットの間に漂い、

二人ともそれを受け入れるかのように目を伏せる。


「フィオナ様の事は信じていますが―――

 『人間同士の取り決めに口出し出来ない』以上、

 期待し過ぎるのも酷だと思います。


 それに、フラール国とバクシア国の関係、国力の差は

 一夕一朝で埋まるものではありません。


 今後、望むと望まないに関わらず―――

 バクシアを相手に商売するしかないのです。

 それならば」


「それならば―――早い方が、いい―――


 ……嫌な役目を押し付けてしまいましたね」


「悪いと思ってくださるのなら、

 貸しにしておきますわ。

 いずれ返してもらいますわよ?」


「―――転んでも、タダでは起きませんか」


お互いに苦笑し―――

少し和らいだ空気を乗せたまま―――

馬車は走り続けた。




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■高級青果店『パッション』 │




自分に割り当てられたスペースの中で、

アルプはイスに腰掛けたまま、悩んでいた。


彼も商売で果樹園をやっている以上、

ある程度の『商売の厳しさ』はわかっていた

つもりだった。


しかし―――シモンの話は、それまでの価値観や

母の教えとは違い過ぎた。


「―――僕は、どうすれば……

 フィオナ様……」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




「ほら来たぞ女神様。

 何かアドバイスしろや」


「フッフッフ……

 いきなり来られて、このアタシに何か考えが

 すぐに浮かぶとでも?」


「今のどこに威張れる要素があったんだよ。

 ―――で、黙ったままでいいんですか?」


「し、仕方ありませんね……

 そもそも! こうなったのは『アンカー』の

 責任でもあるんですから……

 か、彼らにも意見を聞いてみましょう」


「言い訳ばかり上手くなってもう……

 ただ、条件付きでもいいらしいですので、

 今回はそれでいきましょう―――


 ・いきなり帰るとか極端なのは無し。

 ・値段を100倍とかいうのもダメ。

 ・エッチやアダルトな案はアウト。(←ココ重要)」


「『アンカー』、300!

 『聞きたい事』は『売り方』!


 ―――さあ、アタシを導き給え……!!」




>>300


【    試食    】



「ん?」


「んんん?」



【 高級品!(無料) 】


【 デパ地下www 】




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在221名―――


―――神の資格はく奪まで、残り21名―――



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