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28・狂気も一周回れば正気になるのよ?

2018年9月15日の投稿以来、一周年に

なりました。

(前話は9月14日でギリギリだった)


皆さまのご愛読のおかげです。

ありがとうございます。



日本・とある都心のマンションの一室―――


いつものようにリビングでくつろぐ、女神とその

お目付け役(猫Ver)―――


「そういえばナヴィ、貴方もボガッド家で

 お世話になっていたのよね」


「ええ。アルプ君やファジー君と一緒の時に。

 それが何か?」


片手を舐めて毛づくろいしながら、家主の質問に

応えるナヴィ。


「いえ、アタシも今ボガッド家にいるんですが―――

 貴方の時はどうだったのかなーって」


「んー……とは言われましても。


 強いて言えば、特別扱いはしなくていいって

 言っていたのですが、それがなかなか……


 お風呂なんかも『恐れ多いです』っていっつも

 一人で入っていましたし」


彼はそう言うと体を横にして、

今度は体の毛づくろいを始める。


「あー、あの大きなお風呂で一人ですか。

 それは寂しいかも。


 アタシはメイさんとよく一緒に入ってますけど」


「おや?

 彼女とですか。それはまた何と言いますか。


 いつの間にそんなに仲良くなったんですか?」


横になっていた身を起こすと、ナヴィは前足を揃えて

フィオナに質問する。


「いやーアルプの入浴時を見計らって

 『キャッ誰か入ってるの!?』作戦を

 敢行かんこうしようとしたところ、狙っている獲物が

 同じだからかいつも彼女とかち合ってしまって

 そんな流れに」


「もうお前ら結婚しちゃえよ。

 そこまで一心同体なら。


 さて、そろそろ本編スタートしますね」




│ ■ミイト国・高級ホテル『ドーセット』  │

│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア   │




「―――しゃて、そろそろ始めましゅね」


「うん、お願いします」


ナヴィの問いに侯爵がうなづき、バクシア・

フラール両国と神託が開かれる。


さすがに緊急の案件なので、急遽きゅうきょ全員と

情報共有する必要がある、とフィオナ・

アルプ・ファジーに呼びかけたのだった。




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「明日ですか……ずいぶんと急ですね」


「どういうお考えなんでしょうか……

 トーリ(シンデリン)さんは」


フィオナの後に、第一眷属がぽつりと感想を漏らす。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「しかし、こんなに急じゃアタイらだって

 対応のしようがないぜ」


「ファジーちゃん、そんなにせっかちな人なの?

 トーリさんって」


頭をかきながら語るミモザに続いて、

アルプの母ソニアが第二眷属に質問を投げる。


「変な人ではありましたけど……どうでしょう。


 それで、侯爵様はどうするおつもりなのですか?」


第二眷属の姉にアルプの母、そしてファジーが

めいめいに語り、最後にバーレンシアに話を振る。




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア   │




「僕としては受けるつもりだよ。

 こんな面倒ごとはさっさと終わらせたいし。


 それよりすまないね、仕事中の者もいるだろうに」


(い、いえそんな。

 僕の方はまだ昼休み中ですから―――)


(ボクたちの事より準備は大丈夫なんですか?

 いきなり明日なんて)


侯爵の気遣いに対し、アルプとファジーがそれぞれ

心配の言葉で返す。


「もとより、そのために来たからね。

 こっちでどうこう準備する物は無いさ」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「……トーリ家のお屋敷です。

 万が一という事もないでしょうが―――


 お連れ出来る人数などの指示はございません

 でしたかな? 侯爵様」


屋敷の主である老人が、自国の貴族に問う。




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア   │




「んー……お供は1人までにしてくださいって

 書いてあるね」


シンデリンからの手紙を見ながら、内容を

読み上げる。




│ ■アルプの家          │




「えっ? 1人だけなんですか?」


「護衛って事も兼ねているんだろうけど……

 ちょっと少な過ぎねーか?」


ファジーとミモザが驚き、その声がそのまま

バクシアへ伝えられる。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「貴族同士でもなし、ましてお見合いでは

 それも仕方なかろう。


 しかし―――問題は人選じゃな」


頭を抱えるローンに対し、妻が口が開く。


「どういう事です?


 ナヴィ様か、ビューワー伯爵様では

 ダメなの、あなた?」


横で聞いていたアルプ、そしてフィオナや

メイも同意見だったようで、連続で言葉を発する。


「僕も、そのお二人のうちどちらかかと

 思いましたけど……」


「あ、アタシも」


「わたくしもです」


しかし、唯一残っていた情報屋だけは意見が

異なっていた。


「いやあ、ナヴィ様はちょっとマズいと思う。


 ただでさえトーリ家とつながっているって

 疑われているんだろ?」


「ソルト君の言う通りじゃ。


 ただでさえホテルでの一件(4章19話)以来、

 目を付けられているのだから……


 ここで同行したら、『枠外の者』・『新貴族』の

 疑いに火に油を注いでしまう」


ローンはソルトと考えが一致したようで、その答えは

フラールとミイトにも届けられる。




│ ■アルプの家          │




「という事は―――

 ビューワー伯爵様……

 もしくはグラノーラ様、ポーラさんの

 3人の中から、となりますね」


アルプの母が絞られた選択肢を口にする。




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア   │




「そうでしゅねえ……

 今回、ちょっと目立ちしゅぎましゅたから。


 となると、やはりバートレットしゃんで」


「僕としても、ビューワー君が来てくれれば

 心強いんだけど……


 ちなみにフィオナ様はどうお考えですか?」


ナヴィの後に、侯爵が女神様に助言を求める。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「へあっ!?

 あ、アタシですかっそそそそうですねえ……」


(落ち着いてください。

 別にバートレットさんでいいでしょうに。


 聞いてます? 聞こえてます? フィオナ様?)


いきなりの質問にテンパる女神に何とかお目付け役が

アドバイスしようとするも、その声は届かず―――


「(そそそうだ!

 こういう時こそ『アンカー』ですよ!)」


(オーイ、だからそれは……)


もはやナヴィの言う事など耳に入らず、彼女は

地球、自分の部屋のPCを通じて『アンカー』たちへ

語り掛ける。



【 あ? お見合いのお供? 】


【 バートレット、マルちゃん、新眷属の

 三択、ねえ 】


【 ていうか破談にするって決まってんだろ?

 何でそれで迷うんだよw 】



彼らかのツッコミに、ようやくフィオナも

頭が冷える。


「(あ……いえまあそれはそうかも知れないん

 ですけどぉ、その~……


 誰が一番適材適所かなあって?)」



【 リスクや危険考えれば男しかいないんじゃ 】


【 つまりバートレット一択w 】



「(ま、まあわかってはいたんですよ?

 でも確認というか、様式美って事で

 『アンカー』をですねっ!


 では『アンカー』は今のスレで……800!


 聞きたい事は―――

 『お見合いのお供1名を誰にするか』!


 条件は

 『バートレット、マルゴット、ポーラ、

 この3名の中から』!


 聞きたい事よし! 条件よーし!

 後はバートレットを選ぶだけの簡単な

 『アンカー』です!


 ―――さあ、アタシを導き給え……!!)」




>>800


【 ポーラ 】




その『アンカー』を見た瞬間―――

フィオナの精神と時は完全に停止した。


「(…………あ”?)」



【 いやぁホラ、様式美ってヤツ? 】


【 そこまで言われたら、ねぇ 】


【 それに新しく眷属になったコなんでしょ?

 活躍の場を与えてあげないと(棒 】




│ ■アルプの家          │




「―――ッ!?

 フィオナ様どうしました!?

 敵の襲撃でも!?」


「な、なんだ!?

 何かあったのか、ファジー!」


「あ、あのっ!

 フィオナ様の絶叫が―――」


フラールでうろたえる姉弟の元へ、ミイト国にいる

お目付け役から連絡が入る。




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア   │




「あー、落ち着くでしゅよ。

 ファジー君もミモザしゃんも」


一方で、新たに眷属になったポーラも直接神託を

聞いており、戸惑いを隠せないでいた。


「で、でも、フィオナ様のあの叫びは……

 バクシアで何かあったのでは」


「いつもの発作だから気にしないでいいでしゅ。


 ……おーい。そろそろ正気に戻るでしゅよ」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「だだだだってねえ、バートレットさんを選ぶ

 だけなのに何でこんな何でポーラさんに」


たしなめるナヴィに対し、フィオナは混乱しながらも

反発し反論を試みる。


(軽率に『アンカー』に頼ったのが悪いんです。


 ていうか、人の話を無視して突っ走るその狂気、

 いい加減制御出来ないんですか?)


「狂気も一周回れば正気になるのよ?」


(ほう、では今は?)


「ちょっと一周半くらい回っちゃってるって

 いうか」


(ダメじゃねえか。


 ……っていうか落ち着いてきたのなら

 まず周囲を安心させてください)


ナヴィの言葉で我に返ったフィオナは、ようやく

アルプ達の不安気な表情に気付き、たたずまいを直した。




│ ■アルプの家          │




「あ……どうやら落ち着いたみたい」


「本当? ファジーちゃん」


ボガッド家の様子を耳で確認していたファジーの

言葉に、アルプ家の面々もやっと胸を撫でおろす。


「いったい何があったったってんだよ……


 そういや、どこまで話していたっけ?」


ミモザの問いに、ミイト国の人間が答える。




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア   │




「僕のお供を誰にするか……

 それをフィオナ様にお伺いを立てていたんだけど。


 もしかして、それで何か問題でも」


おずおずとバーレンシア侯爵がたずね―――

ナヴィが安心するように応じる。


「それについては解決したでしゅよ。


 ただ人選がちょっと意外かも知れましぇんが―――」


「え? 私ではないのですか?」


すでに決定したと思っていた人物が、想定外の答えに

思わず言葉を発する。


そして、女神・フィオナの口からお供の名前が

発表されると、指名されたポーラを含め、全員が

驚きの声を上げた。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「ポーラさんって……

 新たに眷属になったって人だろ?


 でも大丈夫なのか?」


ソルトが当然ともいうべき意見を心配そうな

声で述べる。


「ポーラ姉さまがお供って、何か理由でも?」


「い、いやハハハそう!

 アタシの眷属としての初仕事って言いますか、

 それはそれは重大な使命がですね」


メイの問いに応えるフィオナは、心ここにあらずと

いった感じで視線を泳がせる。




│ ■アルプの家          │




「あの姉妹ヘンタイの片割れかよ。

 何でよりによって……」


「ミ、ミモザ姉。

 フィオナ様の決定なんですからっ。

 それに、今はボクと同じ眷属で―――」


姉の言葉を眷属である弟がたしなめ―――

そこにアルプの母も加わる。


「フィオナ様の事です。

 きっと何かお考えあっての事に違いありません」




│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア   │




ミイト国に場面は移り、納得のいく理由を各々が

求める中、伯爵が口を開いた。


「確かに、今回のメンバーの中では―――

 彼女が適任かも知れません」


「ポーラしゃんが、でしゅか?」


ナヴィの問いに対する答えを、マルゴットが引き継ぐ。


「……そうですね。

 私とバートレット様はそもそも、最初から

 『枠外の者』に対抗しておりましたし」


「あー、言われてみれば2人は、初めて本格的に

 『枠外の者』に反旗を翻したみたいなモンだしね」


侯爵に続き、指名された当人も納得した

面持ちで語る。


「そういう意味では―――

 わたしが一番、目立たず、警戒を

 抱かせないかも……


 女神様の眷属になった事だって、彼らが知る由も

 無いでしょうし」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「―――なるほど。

 今回ばかりは不安がありましたが……


 そこまで深いお考えがあったとは。

 ワシもまだまだですな」


「そうです!

 フィオナ様のする事に間違いはありませんっ!」


「は、ははは!

 なんたってアタシは神様ですからね!」


ローンとアルプが納得の声を上げ―――

少しひきつった笑顔の女神とは対照的に、それぞれに

安堵の表情が戻った。




│ ■ミイト国・首都ポルト  │

│ ■シッカ子爵邸      │




ところ変わって、シッカ子爵邸―――


そこでレイシェンは、明日に備えて『準備』を

進めていた。


「ったく……

 騎士団の出自なのは知っていたが、もう何代も

 前の話だろ。

 それでその腕前ってなあ……」


格の違いを見せつけられた男爵が、子爵の背後から

グチるように話しかける。


「『国に事あらば、その剣をふるえ』―――


 初代シッカ子爵が爵位を授かる時に受けた王命です。

 その薫陶は今も生きている。それだけですよ」


手にしていた獲物を置くと、彼女は軽く一息ついた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2826名―――




しまった、終わり方が前回と一緒だ(;´Д`)

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