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24・で、今度は何と遭遇したんですか

1週間ぶりの更新です。


何て言うかツッコミどころが多いけど見てしまう

キ〇肉マンの展開のように。


そんな小説を目指して頑張ります。


勢いだけのギャグ・ラブコメです。




日本・とある都心のマンションの一室―――


自らの住まいの中、なぜか忍び足で緊張気味に

行動する女神がいた。


薄暗い照明の中、彼女はある衣装の一部を手に取り、

それを満足そうに見つめる。


「よ、よし……後はこれを……」


「どうするつもりでしゅか?」


パッと室内が明るくなり、そこには風呂上りと

思われる、肌着を付けて湯気をまとった

お目付け役(人間Ver)がいた。


「あ……あの……」


「はい」


「これは……足にく靴下というもので……」


「知ってましゅ」


電気が点けられた瞬間からお互いにほとんど

ポーズを変えず―――

少年の方は涼し気に、少女の方は滝のような汗を

流しながら会話を続ける。


「で、人の靴下なんか持って何をする気

 なんでしゅか?

 しょれに、洗濯前のものですから汚い

 でしゅよ?」


「い、いやあ……用途はその、いろいろあると

 言いますか」


視線を露骨に横にそらしながら、フィオナは

ナヴィの質問に応えさせられる。




「ろくでもない用途というのは想像出来ましゅので

 言わなくても結構でしゅ。


 ですが―――何で私の物を?

 眷属のアルプ君だってファジー君だっているのに、

 そんな事をした記憶はないのでしゅが」


お目付け役は首を傾げながら女神の行動に

疑問を感じ、それはそのまま質問となって

フィオナに向かう。


「あー、アルプはあまり裕福じゃなかったのと、

 家事全般しっかりやるタイプなので……

 多分数の増減は一発でバレると思うんですよね。


 ファジーの方はあの姉妹ヘンタイのせいでミモザさんの

 警戒レベルが上がってて……」


「実行しようとはしたんでしゅか」


「し、しようと思うくらいいいじゃないですか!

 妄想もさせてもらえないんですか!?」


ポリポリと頭をかきながら、呆れたように、

かつなだめるようにナヴィは答える。


「ギリアウトと言いたいところでしゅが、

 実行前という事でセーフにしておきましゅ。


 しょれでは、そろそろ本編スタートしましゅよ」




│ ■ミイト国・首都ポルト  │




「―――しゃて、戻りましゅか。

 ポーラしゃん」


「はい」


ナヴィとポーラが化粧品店から出て数歩―――

ふと、『彼』は歩みを止めて振り返る。


「……?

 どうかしましたか、ナヴィ様」


同行者の突然の停止に、彼女は問いかける。


「(この気配―――

 私がお風呂に入る時、フィオナ様が無駄に遮蔽物に

 隠れながら様子を伺う時に似ている……)


 ……まったく。

 良い気分のまま、帰りたかったんでしゅがねえ」


「??」


言葉の意味がわからず、ポーラは何か異変が

あったのか確認するように、周囲を見回す。


そして、尾行していた男はその様子を見て

戸惑いながら、自分も歩を止める。


(……な、なんだ?

 これだけ離れているんだぞ……


 まさかあの2人、気付いたとでもいうのか?)


「あの、ナヴィ様?」


「……すいません、気のせいだったみたいでしゅ。


 あと、また『様』って呼んでましゅよ、

 ポーラしゃん」


「あ! は、はいっ、気をつけます」


2人がまた行動を再開すると―――

50mほど離れてけていたバトラコスも、

それに合わせて足を動かす。




(気のせい……か?


 しかし、念のためもう少し離れた方が

 良さそうだな。


 くそ、バーレンシア侯爵っていえば、

 名ばかりの貧乏貴族じゃなかったのかよ。


 いつの間にあんな手練てだれを用意しやがったんだ……)


彼は目標に注意を払いながら、距離を取るために

若干方向を変更しながら進む。


しかしその行動はまた―――

ナヴィに筒抜けで把握されていた。


「(この気配―――

 フィオナ様が私に何か仕掛けようとして

 気付かれ、何とかごまかそうとしてその場を

 離れる時に似ている……)


 ふみゅ。

 ソルトしゃんやトニックしゃんとは少々

 異なるみたいでしゅが、こっちもかなりの

 腕前のようでしゅね」


「?? あの、先ほどからどうかしましたか?」


「あ、何でもありません。

 早くホテルに戻りましゅよ。


 (自分一人だけなら振り切れるけど、

 ポーラさんもいるし……


 街中で襲い掛かって来る事も考えられないし、

 ただの尾行と見るべきですかね。


 ならばいったんホテルに戻った後、

 ですね―――)」


一人、後方にくっつけた事を承知の上で、

ナヴィはポーラと共に宿泊施設まで戻る事にした。




│ ■ミイト国・首都ポルト    │

│ ■高級ホテル『ドーセット』  │




「バーレンシア侯爵様お付きの方ですね。

 お帰りなさいませ」


ホテルまで戻ると、受付の執事姿の男性が

うやうやしく頭を下げる。


2人は頭を下げて返礼すると、泊まっていた部屋まで

一直線に足を速めた。


「……も、もう顔まで覚えられているんですね。

 さすがは高級ホテル……」


「ポーラしゃん、荷物は預けていいでしゅか?」


「あ、はい。ありがとうございます」


まずは『玄関先』の部屋に入り、そこにいた

同行者と帰宅の挨拶をする。


「ただいまでしゅ」


「ただいま戻りましたー」


その声に、まずは伯爵と商人が応じる。


「お帰りなさい、ポーラさん」


「お帰りなさい、まずはお湯でも浴びてきたら

 いかがですか?


 ……と言えるところがすごい施設ですね。

 常時いつでも入浴出来る設備が個々の部屋に

 ついているなんて」


2人の姿を見て、もう1人の姿が見えない侯爵の

事をポーラが質問する。


「バーレンシア侯爵様は……?

 まだ帰ってきておられないのでしょうか」


「出先でまた気絶でもしましゅたか?」


遠慮の無いナヴィのツッコミに、困った顔を

しながらも、2人は対応する。




「いえ、それがですね……

 またと言いますか……


 帰ってきてはおられるのですが、今は自室で

 寝ております。


 落ちていると言った方が正しいかも」


「精神疲労はあると思います。

 ちょっと期待をかけられ過ぎたと言いますか……


 夜になったらフィオナ様に神託をつないで

 状況を説明したいのですが。

 ナヴィ様、よろしいですか?」


バートレットの申し出に、ナヴィは取り合えず

承諾する。


「?? まあ、いいでしゅけど。

 何かあったんでしゅか?」


「私は本日同行しておりませんので、

 詳細はわからないのですが……」


「それはポーラさんがお風呂から出てきてから

 お話ししましょう。

 その頃には侯爵様も回復しておられるでしょうし。


 しかし、あまり有名になるというのも、困り物

 なのですね」


どうやら、事情がわかっているのはバートレット

だけらしい。


ひとまずは落ち着くまで、という事なのだろう。

そして緊急性が無いと判断したナヴィは、自分の行動を

起こす事にした。




「そうでしゅか。


 では、私も自分の部屋で少し休んでいましゅ」


そう言うと3人を後にして自分の部屋まで戻り―――

扉を開けて中に入ると、イスでもベッドでもなく

窓に近付く。


そして窓枠に手をかけると、その身はそのまま

外へとひるがえり、壁を蹴って屋根へと移動した。


「しゃてと、アイツは……


 ―――いましゅね」


視線の先は、自分たちを尾けてきた男―――

それがホテル入口からさほど離れていない場所に

たたずんでいた。


「ハッキリと言っていたな。

 『バーレンシア侯爵様お付きの方』と……


 であるならば確定だ。

 あの時ぶつかってきたトーリ家の者と同じ店から

 出て来たんだ。

 無関係どころの話じゃねえ。


 連中―――少なくとも

 バーレンシア侯爵とシンデリン・トーリは

 裏でつながってやがる……!


 この情報は早く伝えねえと」


きびすを返してホテルに背を向け、バトラコスは

報告のために自らの目的地へ向かって早足で

歩きだした。


今度は自分がナヴィに尾けられている事も

知らずに―――


「ここの街は高い建物が多いでしゅから、

 楽に尾行出来ましゅね。


 さあ、案内して頂きましゅよ。


 出来ればポーラしゃんが―――

 お風呂から上がる前までにね」


そうしてナヴィはスカートの端をつかむと、

軽やかにスキップするかのように、屋根の上を

走り始めた。




│ ■ミイト国・首都ポルト  │

│ ■シッカ子爵邸      │




その後、5分ほど歩いたところですぐ馬車に

乗り換えた彼が行き着いた先は―――

トーリ姉妹とラムキュール、そして家主の

レイシェンが『密会』していた屋敷であった。


すでにシンデリンとベルティーユの姿は無く―――

商人と子爵令嬢が、彼を室内で出迎える。


「良かった、ラムキュールの旦那もまだいたか」


「……今回は『新貴族』の指令で動いていたはず。

 何かあったのか?」


緊張のためか顔をこわばらせるバトラコスとは

対照的に、2人はあくまでも冷静な表情を崩さない。


「ギュウルフ男爵―――

 商人であるラムキュール氏を『旦那』と呼ぶのは

 爵位持ちとしてはいかがなものかと存じますが」


「そうは言っても『枠外の者』は『スポンサー』様

 だからなあ。


 このバトラコス・ギュウルフだけじゃなく、

 『新貴族』の連中は多かれ少なかれ、世話に

 なってんじゃねーか。


 それに『新貴族』ってのは身分関係なく、

 生まれ持った地位では評価されない―――だろ?」


貴族の一方が一方をとがめ―――

それに反発する貴族に、商人は先を促す。




「そんなくだらない建前はどうでもいい。


 それで、何があったのだ?

 先日の任務失敗に関わる事か?」


「話が早くて助かるねえ。


 俺の任務を邪魔したあの2人―――

 トーリ家のモンとバーレンシア侯爵のお付きだが……


 同じ店から出てくるのをこの目で見た」


その報告に、ラムキュールとレイシェンは表情こそ

変えないものの、雰囲気が一変する。


「……確かなのですか?」


「トーリ家のモンはともかく、バーレンシア侯爵の

 付き人とやらはホテルまで行って確認した」


商人は大きくため息をつくと、イスに深くかけ直す。


「どういう事なのだ?


 シンデリン・トーリはあのお見合い自体、

 乗り気では無かったはず。


 それを利用した意趣返いしゅがえしでも考えているのか?」


「だがよ。

 行動によっちゃ『枠外の者』・『新貴族』―――

 両方敵に回す行為になるぜ。


 あのお嬢様、そこまでバカだったか?」


男2人が疑問を呈する中―――

子爵令嬢は黙って書類をテーブルの上に

投げるように置く。




「そうなりますと―――


 今しがた届いたばかりの『コレ』の信憑性しんぴょうせい

 高くなりますね」


「何だ、こりゃあ?」


バトラコスはぶっきらぼうに返すと、レイシェンは

あくまでも涼し気な表情を変えずに答える。


「彼女のお見合い相手……バーレンシア侯爵の

 調査報告書です。


 今日の彼の動向をまとめたものなのですが。


 彼は―――」


この時―――

ナヴィに見張られ、かつ話している事を全て

聞かれている事に彼らは気付いていなかった。


(うーん……

 何か勘違いされているみたいですね)




│ ■高級ホテル『ドーセット』       │

│ ■バーレンシア侯爵一行 応接フロア   │




「あの、まだ侯爵様は起きられませんか?」


お風呂から上がったばかりのポーラは、同性である

マルゴットにたずねる。


「そうね。

 でも、今まで一番疲れた顔をして

 いらっしゃったから……


 で、今度は何と遭遇したんですか侯爵様は?

 別の神様?

 それとも上位存在ですか?」


「立て続けにバーレンシア侯爵の身に何か起きて

 苛立いらだつのはわかりますが、落ち着いてください、

 マルゴット」


笑顔で話す彼女に困惑しながら、バートレットは

マルゴットをたしなめる。


「まあ冗談はともかく……


 本当に何があったんです?

 バートレットさん」


マルゴットの問いに、伯爵はふぅ、とため息をつく。

続いて出てきた言葉は―――


「…………


 どうやら、『枠外の者』・『新貴族』に組織だって

 対抗する勢力が存在するようです。


 そして、バーレンシア侯爵に……

 彼らから、そのリーダー、旗頭はたがしらになって欲しい、


 という要請が……」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2807名―――




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