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21・プライドで欲望が満たされるかしら

1週間ぶりの更新です。


最近の暑さは命を削る暑さ( ̄□ ̄;)



日本・とある都心のマンションの一室―――

ではなく、天界・フィオナの実家。


そこで主従であるアルフリーダとナヴィ(猫Ver)は、

いつもの定時連絡をしていた。


「ご苦労様です。

 今回は、あのコはあんまり動いてないようね」


「ミイト国に眷属はいませんからね。

 制限は受けますから、どうしても」


報告を聞き終わったのか、女神はイスに座る。

そしてポンポン、と膝を叩く。

それが合図であるかのように、従僕の猫は

その場所へ飛び乗った。

頭頂部、背中、顔とやさしく撫でられ、

彼はゴロゴロと喉を鳴らす。


「―――そういえば、アルフリーダ様。


 今日はいつものお姿ですが、家の中では

 結構お姿を変えておられますよね?」


「あー、時々プレイでグフフ♪


 ……コホン。まあ、プライベートな空間であれば

 多少はね。


 でも、どうして?」


従僕は、膝の上で身を丸めながら質問に答える。


「いえ、以前―――

 フィオナ様が、外出時に姿形を変えてはどうかと

 提案した事を思い出しまして。


 私としては、別にいいのではと思うのですが」


その言葉に、彼女は片手でその長髪を

クルクルと巻いていじりながら小さくため息をつく。




「まあね。私だってどちらでもいいんだけど……


 私が姿形を変えて出かけようとすると、

 あの人『涙目』になるから……


 心の声がいろいろと駄々もれでね。


 『え? 何? 浮気? 不倫?

 何? 僕捨てられるの?』


 って……」


「メンタル弱過ぎませんかね軍神ユニシス様」


一度起き上がって伸びをした後、ナヴィは

テーブルの上に飛び移る。


「私も、自分の物にするためにいろいろと

 やっちゃったから、依存させちゃったかもね。


 神様にする前に調きょ―――教育し過ぎたせいかも」


「今、調教って言いかけませんでした?」


「さ、それじゃそろそろ本編入りましょう」


「だから今調教って言いかけませんでした?」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




アルプの母、そしてミモザ・ファジー姉弟が集う

アルプの実家―――


朝食を終えて、グラノーラ家から派遣された

従業員たちがそれぞれの持ち場に向かい、

リビングには眷属の身内、他2名が残されていた。


「つーか、前に来た時も思ったんだけどさ。

 何でココにファジー君がいてアルプさんが

 いねーんだ?」


「アルプさんはフィオナ様のお世話をするため、

 バクシアに残っているんだ。

 ボガッド家の跡継ぎでもあるし、お屋敷で

 面倒を見るために残ったんだよ」


ソルトの質問にミモザが応え―――

同じく情報屋の相棒が続く。


「……うげ。って事はフィオナ様も今、

 ボガッド家のお屋敷にいるって事か」


「相変わらずトニックさん、フィオナ様が

 苦手みたいだけど……何かあったの?」


トニックの気弱に吐き出すような発言に、

ファジーは疑問を唱える。


「別にコイツらに『さん』付けなんて

 いらねーよ。


 『空気』『モブ』で十分だろ」


「ひどくね!?」


「それ最近スッゲー気にしているんだから

 止めてもらえませんか!?

 せっかく名前持ちで登場しているのに」


昔の仲間に容赦の無い言葉をぶつけるミモザに、

2人は抗議する。




「名前持ちで空気モブといえば……

 スタウトさんどうしてます?

 元気にしていますか?」


「あなたも意外と容赦無いわね、ファジーちゃん」


次いで出たファジーのセリフに、アルプの母・

ソニアが苦笑しながら話す。


「スタウトさんなら相変わらずワインのじいさんに

 鉱山運営を叩きこまれているよ。


 一人前になるのにあと3年はかかるってさ」


「あと、ラムキュールの旦那の屋敷、

 売りに出されたらしいぜ。


 確か金貨500枚とかいってたっけ」


ソルトとトニックの言葉の後―――

ミモザがパンパン、と手を叩いた。


「そろそろ話は終わりだ。

 バクシアから神託が来る頃だしな。


 どうだ、ファジー?」


「えっと……あ、ハイ!

 フィオナ様、聞こえます!」




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




同じ頃―――

フィオナはアルプとその義理の老夫婦、

そしてメイを同席させて神託を繋げていた。


「こちらも聞こえてますよ、ファジー。

 アルプもここにいます。


 ナヴィ、そっちはどう? 聞こえる?」




│ ■ミイト国・首都ポルト           │

│ ■バーレンシアご一行・宿泊施設 ナヴィ部屋 │




「大丈夫でしゅよ。ちゃんと聞こえていましゅ。


 バーレンシアしゃん、バートレットしゃん、

 マルゴットしゃん、ポーラしゃんもいましゅ」


ナヴィの話し方で神託が繋がったのがわかり、

名前を出された4人は身構える。


「まあ初日からいろいろあったけど、

 無事、こっちには到着したからね」


「その事につきましても、ご報告を―――」


2人の貴族が交わした言葉を合図に、

ミイト・バクシア・ルコルアを交えての

神託を通した連絡がスタートした。




│ ■アルプの家          │




「無事到着したんですね、良かった……!」


「しかし初っ端から騒ぎに巻き込まれているたぁ……

 侯爵様、トラブル体質なんじゃねーの?」


「あの、アルプの恩人でもあるので

 ほどほどに……」


ミイト国で前日にあった事の顛末を聞いて、

取り合えず姉弟は、眷属の母と一緒に胸を

撫でおろす。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「月水晶の鉱山に新たな設備投資の要請か。


 予想以上に算出が見込めるらしいからな。

 何人か、声をかけてみよう。


 詳細をまとめた書類を後で持ってきてくれ」


「あ、やっぱり説明だけじゃダメですか?」


ローンの対応に、女神が不安そうに聞き返す。


「さすがに口だけでは、祖語そごが生じる場合も

 ございます。


 すぐに対応出来る物は別として―――

 やはり書面にしたものは必要になるので……」




│ ■アルプの家          │




「じゃーソルト、頼むわ。

 俺はこのままルコルアへ戻るから」


「相変わらず女神様苦手なのな、トニック……

 お前とフィオナ様の間に何があったんだよ」


バクシアへ行く人選が終わり―――

さらに次の指示がミイト国から入る。




│ ■バーレンシアご一行・宿泊施設 ナヴィ部屋 │




「その書類は一読された後、内容を書き写して

 こちらへ送ってください。


 バーレンシア侯爵様宛であれば、検閲けんえつ

 されないでしょうから」


マルゴットが侯爵、その他に同意を促すように見渡し、

周囲もまた納得したようにうなづく。


「しょれと、まだお見合いの正式な日は決まって

 いましぇん。


 わかりましゅたら連絡します。

 共有する情報はこりぇくらいでしゅかね?」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「あ、あとファジー君。

 ルコルア産の果物もそろそろストックが

 切れるって、シモンさんが」


「そういうのは、後でまとめて輸送してもらうよう

 手配しよう」


フィオナの眷属であり、義理の孫でもある少年に

ローンが応える。


「ほむ。他に伝えたい事とかある人いますか?」


「あ、じゃあソニアさん。お土産用にいくつか

 トニックさんに持って来て欲しい物が……」


女神が質問すると、アルプの義理の祖母・クレアを

皮切りに、それから2・3雑談混じりに個人的に

連絡・報告が上げられ、伝えられ―――

神託は閉じられた。




│ ■バーレンシアご一行・宿泊施設 ナヴィ部屋 │




「ふぅ。皆様、お疲れ様でしゅ」


ナヴィがミイト国での神託終了を告げ―――

4人はホッと一息つく。


「いやー、しかしアルプ君の方もボガッド氏の方も

 商売は順調みたいだねえ」


「ローンさんの事ですから、『枠外の者』に組する事は

 無いでしょうし」


侯爵と伯爵が感想のような言葉を漏らし、

続いて商人が意見を述べる。


「あとは『新貴族』とやらですね―――


 今日も引き続き調べて来たいと思いますけど、

 皆さんはどうされますか?」


「僕も調べてみるよ。

 お見合い以外は特にする事ないしね。


 それに僕なら、そこそこ高い地位にいるから

 僕と一緒にくれば面白い話も聞けるんじゃないかな?


 ……要するにゴメンナサイ誰か付いてきてください」


バーレンシア侯爵の正直な申し出に、

バートレットが声をかける。




「元から私も行くつもりですよ。

 自分も伯爵とはいえ、フラール国の貴族では

 一人で調べる事も限られますしね」


「マルゴットしゃんは?

 お二人と一緒にまた調査に―――」


ナヴィの提案に、商人のお嬢様は首を左右に振る。


「私も出来ればそうしたいのですが……


 あのアルプ君とファジー君の果実―――

 それがミイト国でも話題になっておりまして。


 今日はその方たちとの会合があるので……

 それも表向きの目的の1つでしたし」


「ふみゅ。では私は―――


 今日はポーラしゃんと適当に外出、という事で」


「はははっ、ははい!

 喜んでお付き合いさせて頂きますっ」


今日の方針が決まると―――

ナヴィはそのまま自室で、4人はそれぞれの部屋で

身支度をするために退室した。




│ ■ミイト国              │

│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷     │




「昼食後に出掛けるから―――

 貴方もそれに合わせて外出しなさい、ネーブル」


「本当によろしいのですか?

 私が護衛に付いた方が……」


同じ頃―――

お見合い先の主従もまた、予定の確認を

お互いに話し合っていた。


「出来ればそうしたいわよ。

 でも、貴方の話の調査の方が先。


 タダのコソ泥ならいいけど、妙に気になってね」


「……ん……

 少なくとも……被害者と……犯人は……

 特定しておく必要が……ある……


 目撃者も多い……から……

 ……多分、すぐわかると思う……」


姉妹としては、先日のスリ(未遂)事件の方が

気に掛かるらしく―――

今日は彼とは別行動を取る事に決めた。


「でもそれなら、こんな格好は必要ないのでは」


新たに用意された『衣装』を前にして少年は戸惑う。


「……少なくとも……お見合いの『期間』だけは……

 女性として……通してもらう……」


「もし調べられてバレたりしたら、余計に話が

 ややこしくなりそうだしー」


「フツーに私が女装しないで男として外出したら、

 そもそも調査目標だってわからないのでは?」


火の玉ストレートで正論を突き付けられた姉妹は、

顔を見合わせ、そして姉の方から動いた。




「……仕方ありませんね。


 ここは私の奥の手を使うしかないようです」


彼の前まで近寄り、その威圧感に従者は身構える。

やがて彼女の顔がネーブルの見上げる視線から正面へ、

そしてさらに沈み―――

気が付くと足元にシンデリンの頭があった。


「この通りですお願いいたします」


「……お姉さま……素敵……!

 欲望のためには全てを投げ出す、その覚悟……!」


主人であるはずの彼女が床に額をこすりつけんばかりの

行動に、さすがの従者も困惑する。


「この行為は恥知らずと言います、ベルティーユ様。


 しかしプライドが無いのですか?

 女装して欲しいがために従者に頭を下げるとか……」


「プライドで欲望が満たされるかしら少年よ」


「あ、はいソーデスネすいません」


こうして今後の予定を決めた彼らは―――

それぞれの『その時』まで待つ事になった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2791名―――




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