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19・あ……失礼しましゅ(裏声)

1週間ぶりの更新です。


今これ書いているの0:45分だぜ

ヒャッハー(*゜∀゜)


相変わらずギリギリや・・・



「それでは、行ってらっしゃいませ」


日本・とある都心のマンションの一室―――


一匹の猫が、自分の主人である母親とその娘を

見送る挨拶をしていた。


「夕方には戻りますからね、ナヴィ」


「ていうか、ママはその格好でいいの?

 母子でお出かけするのは別に不自然じゃないし、

 アタシに取っても都合がいいんだけど……」


フィオナの質問の意図がわからず、アルフリーダは

質問を返す。


「?? 何か問題があるかしら?」


「そーじゃなくってぇ……


 年齢とか姿形とかママは自由自在じゃない。

 アタシの友達って事にしてもいーんだしさ」


娘に続いて、ナヴィも意見を述べる。


「そういえばそうですね。


 この前、近所の子供におばさんって

 呼ばれていましたし、別にもっと

 若い姿になってもいいと思うんですが」


「え? そんな事あったんだ」


ナヴィの話を知らなかったのか、フィオナは視線を

母親に向ける。


「ま、まあねー。

 あのくらいの子供から見れば、ママくらいの人は

 みんなおばさんだしー」


「そう言われた後に子供の頭をワシづかみにして


 『お姉さんと呼ばなきゃ、

 明日の命は保証出来ないゾ♪』


 と言ってトラウマを植え付けた件について」


従僕からのツッコミに、滝のような汗を流しながら

アルフリーダは反論する。




「いいいいやあだだだってねえ。


 あれは条件反射とゆーかー。

 事故とゆーかー。

 不可抗力とゆーかー」


しかし、従僕と娘コンビはここぞとばかりに

畳みかける。


「アルフリーダ様の場合、実際に実行出来て

 しまいますからね。

 脅しでは済まないですよ」


「人には散々ヘンな事してない?

 とか言っておいて、何してるんですかママ?」


がっくりとうなだれるアルフリーダの口から、

2人に向けて声が発される。


「ナヴィには高級マグロ鮭入り缶……

 フィオナちゃんには、私の秘蔵のお宝詰め合わせ……


 それでどや?」


「 ぎょ  」


「OK。

 ママの選択にハズレは無いから楽しみだわ♪」


何らかの合意が彼らの間で成された後―――

ようやく当初の目的に向けて動き始める。


「じゃあ行ってきます、ナヴィ」


「さっき言った缶詰は、帰りにでも買ってくるわ。

 それじゃ、留守番よろしく」


「お気をつけて行ってらっしゃいませ。


 それでは、そろそろ本編に入りましょう」




│ ■ミイト国・首都ポルト         │

│ ■バーレンシアご一行・宿泊施設ロビー  │




「そろそろ時間ね……

 ネーブル、あなたはココで待機してて」


「?? 私は行かなくてもいいんですか?」


主人の言葉に、疑問を感じて従者が返す。


「……ネーブルお兄ちゃん……いえお姉ちゃんは、

 あくまでも保険……」


「要は、『一緒に来た事ありますよ』って、相手に

 言える程度でいいのよ。


 それに、今から手の内を全部さらしてあげる

 必要も無いわけだし」


姉妹の提案に、ネーブルは頭を下げ―――


「じゃあせいぜい、目立たないように隠れて

 おりますね」


そう言って従者である『彼女』は2人を見送った。




│ ■バーレンシアご一行・宿泊施設 ナヴィ部屋  │




「そろそろ時間だね。

 では、ナヴィ様は下のロビーで待機という事で。


 ネクタリン(ポーラ)さんも同行してくれ。

 後は打ち合わせ通りに―――」


バーレンシア侯爵の言葉に、ドレスに身を包んだ

ナヴィとポーラは応える。


「わかったでしゅ」


「私たちは、お見送りの時にでも合流します」


2人は一礼すると、後を貴族2人と商人に

任せる事にして、部屋を退出した。




│ ■バーレンシアご一行・宿泊施設ロビー  │




「……ここも広いでしゅね。

 どこか、端のテーブルにでも

 座りましゅか」


ロビーまで来たナヴィは、一緒に来た女性に

着席を促す。


「あ、では―――

 飲み物でも持ってまいりますね」


「早めにお願いするでしゅ」


あちこちから視線を引き付けている事に

気付いたナヴィは、そそくさとそれを

避けるように移動し始めた。


大きな柱と、外壁に挟まれた、広い空間の中では

窮屈と感じるくらいの場所にあるテーブル。

目的地に着いた『彼女』は、スカートを抑えながら

腰を下ろす。


席に着き、たたずまいを直し―――

そこでようやくナヴィは、先客の存在に気付いた。


「あ……失礼しましゅ(裏声)」


「い、いえ。お構いなく(裏声)」


ナヴィとネーブル―――

お互いに、気まずそうに顔を合わせる事なく、

『彼女たち』は同じテーブルに着いた。




│ ■バーレンシア侯爵部屋     │




同時刻―――

上の階では、『恋人役』を率いてきた

当人同士が顔を合わせていた。


「お初にお目にかかります、バーレンシア侯爵様。

 シンデリン・トーリです」


「……妹の……ベルティーユ・トーリです……」


「レンジ・バーレンシアです。

 本日は大変お日柄もよく絶好のお見合い日和で

 後は若い2人に任せ」


すでにテンパる様相を見せ始めた彼のフォローのため、

慌ててもう一人の貴族が割って入る。


「―――しかし、お2人のみですか?

 商人とはいえトーリ財閥、そこのお嬢様とも

 あろうお方が」


「バートレット・ビューワー伯爵様、でしたね。


 そちらにいらっしゃるのは、マルゴット・

 グラノーラ様―――


 本日、従者は連れてきておりますが、下のロビーで

 待機させています。


 今回はほんの顔見せに伺っただけですので」


微笑みと共に、質問に答えるシンデリン。

続いて妹が3人に声をかける。


「……そういえば……

 そちらにも、あとお2人ほどいらっしゃった

 ような……


 その方たちは、どちらに……?」


「今は2人とも、下のロビーにおります。


 でも、初対面のはずですのに―――

 こちらに着いたばかりでありながら、

 何でもわかっていらっしゃるんですね」


マルゴットが妹に返し、姉がそれに応える。




「あら、私どもにも―――

 わからない事は、わかりませんわ。


 そうですわね、帰りにロビーを通りますから、

 そのお2人への挨拶はその時に」


狐とタヌキの化かし合いのようなやり取りに―――

バーレンシア侯爵は胃が痛くなり始めていた。


「(ううぅう……

 何で顔合わせだけで、こんな緊張感あふれる

 会話を経験しなきゃならないんだ……)」


「(しっかりしてください。


 それに、貴族の世界なら、こんな交渉は

 日常茶飯事でしょう?)」


階級が違えど同じ貴族がフォローに回るが、

彼の弱気は直らない。


「(貴族同士なら構わないんだけど、

 相手は商人で、しかもお嬢様だし……

 男ならまだ返しようがあるんだけど)」


見かねて、マルゴットもフォローに参戦する。


「(でも、女性のエスコートとか、作法として

 学びますよね?

 それを思い出して対応すれば大丈夫なのでは)」


「(貧乏貴族舐めないで。

 実戦経験がとぼし過ぎるんだよう)」


泣き言に近い態度になってきた侯爵と、それを

何とか立て直そうとする伯爵と商人。

その光景をトーリ家姉妹は意図が読めずに

見つめていた。




│ ■バーレンシアご一行・宿泊施設ロビー  │




「……何か騒がしいでしゅ……わね(裏声)」


「そのようです……わ(裏声)」


近過ぎず遠過ぎず―――

自分たちの周囲に人だかりが出来ているのを、

あえて意識しないようにして、ナヴィとネーブルは

言葉を交わす。


「(……まあ、お2人が揃っていて目立たないと

 いう事は、不可能でしょうから)」


ナヴィの側で同じテーブルに着きながら―――

ポーラは諦めにも似た笑顔で状況を受け入れていた。


(ナヴィ様の方は男性なんだけど―――

 それを周囲の方たちが知ったらどうなるかしら)


実はネーブルの方も男なのだが、それを知る術の無い

ポーラは、『彼女たち』の間の特等席で極上の時間を

過ごす。


「そういえば、あの―――

 あなたはどんな用事で、ここに

 来られたのでしゅか?」


何気なくナヴィが会話を振り、ネーブルもそれに

気さくに答える。


「私は、ご主人様の付き添いです。

 ここに来られたお客様と約束がありましたので―――


 今日のところは挨拶だけで、すぐに戻られると

 思います」


「そうでしゅたか。


 私たちも似たようなものでしゅて」


ナヴィが苦笑しながら話すと、それにつられるように

ネーブルもまた微笑み返す。




「お茶のお代わりをお持ちしましょうか?」


ポーラがさり気なく2人に奉仕を申し出る。

その時、ナヴィとネーブルの視線が重なった。


「!」


「……!」


その視線の先には、一人の、まだ7、8才くらいの

少女がいた。


銀に光を反射させたような波打つ金色のロングヘアー、

人形のように、フリル・リボンを適度にあしらった

ドレス風のワンピースは白を基調とし、そのスカート

から生えるタイツには、草花を思わせる模様が刺繍

されている。


その先にはドレスと対を成すように褐色の底の浅い

靴を履き、幼さをアピールしていた。


そして視線は2人同時に、その近くにいた男に

移動した。


白いリネン製のシャツ・ベスト。

その上にフロックコートを着込んだ、いかにもな

貴族然とした格好の男性―――


「……どうします?

 捕まえますか?」


「……騒ぎになるのは避けたいでしゅわ。

 止めてもらえれば、そりぇで」


2人の会話についていけず、ポーラはただ

不思議そうな表情で視線を交互に移す。


そんな彼女を残し、まずネーブルが席を立ち―――

同時に人並みが左右に割れる。

そんな現象を背負い、後ろから男に近付いた。




「あの……」


「!?」


「キャッ!?(裏声)」


いきなり挙動不審気味に振り返ったが、ネーブルの

驚いた顔を見て、すぐに微笑み返す。


「い、いや。これは失礼。

 どうかしましたかな、お嬢さん」


「す、すいません。人違いでした。

 背中が、気になる人に似ていたものですから」


「いえいえ。お気になさらず」


美人(男)に話しかけられて気が緩んだのか、

彼は紳士的にネーブルに対応する


その背後に音も無くナヴィが回り込み―――

少しだけしゃがんだかと思うと、すぐに離れた。


「申し訳ございません」


「それでは、私はこれで」


会釈するネーブルに微笑み返すと、彼はそのまま

入口へと向かっていった。


そしてナヴィはネーブル、遅れてきたポーラと

合流し、先ほど見ていた少女の元へと向かう。


「……もしもし、お嬢しゃん。

 こりぇ、落としましゅたよ」


ナヴィがしゃがんで少女に差し出したのは、

凝った造形をした小さなブローチだった。

チューリップのようなふくらみの先端部分から、

それを支える柄が、枝葉に別れ伸びている。




「あ! これ、お母さまから頂いた物なの!

 ポケットに入れておいたはずなのに……


 ありがとう、お姉ちゃんたち」


少女は明かりがついたような笑顔を見せ、

3人に頭をぺこりと下げてお礼をした。


「ん。もう落としちゃダメよ」


「気をつけるんでしゅよ」


てってって、と効果音がつくような足取りで

去っていく少女を見送ると―――

ポーラはポカンとしていた口をやっと閉じ、

そして質問のために口を開く。


「あ、あの。あれって……」


その答えの代わりというように、ナヴィとネーブルは

互いの健闘をたたえる。


「ん? あの男があの女の子から盗った物を

 『返してもらった』だけでしゅ。


 そりぇより、いい足止めでしゅたよ」


「そちらこそ、いい手際でした」


そこに、後ろから別の声が加わった。


「帰りますよ、ネーブル……あら?」


「ナヴィさ……ナヴィさん、ネクタリンさん。

 お客様が帰られるので……え?」


そこに現れた、それぞれの『恋人役』を頼んだ

面々は、『彼女』たちを見て固まった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2781名―――




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