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17・恋のさや当て

1週間ぶりの更新です。


やはりギリギリまで校正や見直しに

時間がかかるなあ(-_-;)



日本・とある都心のマンションの一室―――


部屋の主人である女神・フィオナが寝転んで

スマホをポチポチといじっていると―――

室内に母親の声が響いた。


『あ、フィオナちゃん。

 ナヴィはいる?』


「ん、ママ?

 ナヴィはえーっと、お散歩かな?

 あのコに何か用?」


アルフリーダは自分の従僕がいない事を聞いて、

別の話題に切り替える。


『ああ、別にいいのよ。

 緊急ってわけじゃないから。


 それよりフィオナちゃん、

 聞きたい事があるんだけど』


「何ですか、ママ?」


『昨日、聖地アキハバラの同人誌書店の18禁コーナーに

 いなかった?』


突然、プライベートな行動を問われ、慌てて

フィオナは全力で否定する。


「いいいいやアタシはそんな事はー。

 見間違いじゃないッスか?

 ワタシトモダチ、アナタトモダチ」


『私が18禁コーナーにいたから間違えないわよ?』


「……いました」


観念と同時にフィオナは肯定する。




『せっかくモニター越しじゃない異性を相手に

 しているのに、このコったらもう……

 いつになったらリアルの方は進展するのかしら』


「あ、あれは予行演習というか何というか。


 ……っていうか、あの時ママも現場にいたって

 事ですよね?」


娘の質問に対し、母親は押し黙る。

10秒ほどの沈黙の後、アルフリーダの方から

口を開き―――


『だがちょっと待って欲しい。


 私が娘の行先に居合わせたのではなく、

 娘が私の行先にやってきたとは言えない

 だろうか』


「どっちにしても同じだと思うんですけどソレ。


 しかし、ママも一応気にするんですね」


『別にどうって事はないと思っていたけど、

 あの場に母娘揃っていたという事を

 改めて認識させられると何ていうか。


 じゃあ、そろそろ本編入りましょう』


「あいあいさー」




│ ■ミイト国・首都ポルト      │

│ ■ミイト国行き馬車 車中     │




(……今、この世界ではないどこかで不毛なやり取りが

 行われた気が)


正確に主人とその娘のやり取りを察知したかのように、

ナヴィ(人間Ver)は馬車の窓へと視線を向ける。


「……ここはもうミイト国の首都ですが。

 外に何か気配でも? ナヴィ様」


彼の仕草にいち早く気付いたバートレットが、

自分の言葉に合わせ外の気配を探る。


「あ、しょういう事ではないでしゅ。


 ―――しょういえばバーレンシア侯爵しゃん、

 この馬車の行先は?


 直接、トーリ家まで行くんでしゅか?」


ナヴィの言葉に、侯爵は首を左右に振る。


「まず、あちらが指定した宿屋に向かう事に

 なっています。


 それに―――2、3日は時間がありますから。

 向こうにも準備ってものがあるでしょうし。


 到着してすぐにどうこうというのは

 ないはずです」


現場まで来て返って落ち着いたのか、

彼は冷静に説明する。


「でも、そうなりますと……」


不意に、マルゴットが口を開き―――


「困るのは、ナヴィ様の扱い、でしょうか」


続いてポーラが、同時にナヴィの顔を見て語る。




「?? 何がでしゅか?」


女性陣2人は一度お互いに顔を見合わせ、

そしてまずマルゴットが応える。


「ナヴィ様の立ち位置です。

 恋人役ではありますが、それはあくまでも

 断り切れない時のための方便であって―――」


「さすがに宿に入る時は、身分や名前を明らかに

 しなければいけないと思いますが……」


不安そうに補完するポーラに、侯爵が割って入る。


「多分、その恐れは無いんじゃないかなあ。


 国境でも首都に入る時でも―――

 トーリ家の招待状を見せただけで

 ほぼノーチェックだったし。


 ま、逆に言えば調査済み―――

 何かあっても対応出来るって事なんだろうけど」


「しかし、いざという時のための設定は

 必要でしょう。


 恋人と言うのはプライベートな関係ですから

 言う必要はありませんが―――

 付き人か、それとも幼馴染とか……」


バートレットの言葉を聞いて、なぜか女性2名は

黄色い声を上げる。


「……何にせよ、目立つ行動は避けた方が

 よさそうでしゅね。


 部屋に入ったら大人しくしてましゅか」


ナヴィの回答に、女性陣から今度は対照的に、

「えー」という声が上がる。




「取り合えず、宿に着きましたらフィオナ様へ

 報告だけでも入れましょう。

 ナヴィ様、お願い出来ますか?」


「そうでしゅね」


「僕とビューワー君は取り合えず挨拶回りかな?

 まったく、貴族ってのは面倒くさい。


 グラノーラ(マルゴット)さんと

 ネクタリン(ポーラ)さんはどうする?」


侯爵から今後の予定を問われ、商人から応える。


「そうですね……

 めったに無い機会ですので、以前取引した

 ところに顔を出そうかと。


 実はアルプのところの果実、ミイト国でも

 扱ってもらえるか交渉中なんですけど、

 ファジー君の物も扱ってもらえるかも」


マルゴットの後に、ポーラも苦笑しながら続く。


「私は特にありませんね。


 部屋で大人しくしています」


「わかりました。

 それでは、フィオナ様へのご報告、

 よろしくお願いします」


バートレットの言葉と前後して―――

馬車の速度が落ち、目的地が近い事を告げた。




│ ■バクシア国・首都ブラン      │

│ ■ボガッド家屋敷          │




「ですから、アルプ君の様子を見に行くだけなら

 私にお任せをおぉおおおおお」


「いえいえ、この程度の事、眷属でもない人に

 頼む事でもありませんからあぁああああ」


プロレスラーの力比べのように、互いの両手を

フィンガーロックして、女神と少女は引き合い

押し合う。


アルプは仕事―――

『奇跡の果実』の試食提供のため、いつもの通り

シモンの店へと行ったのだが、彼の元へ様子見に

行く役をめぐって、フィオナとメイは対立していた。


「ぐぬぬぬぬぬ……!

 フィオナ様、にはっ、何かあった時の神託を、

 眷属、の、人達にっ、下す、重要な、お役目が

 ああああああああ」


「ふぬうううう……!

 でも、それな、らっ、どこでも、でき、ます、

 しいいいいいいい」


それを眺めながら、老夫婦は目元を緩ませて

お茶をすする。


「ハハハ、若いのう、クレア」


「アルプちゃんも大変ね。

 今からこんなにモテると」


そこに、ミイト国へ行ったお目付け役が

割って入る。




(……聞こえますか、フィオナ様。

 こちらは無事、ミイト国へ到着しました。


 で、お2人で何してるんですか?

 コンビ結成? それとも心の病気?)


「こ・れ・は、ですねぇ~……

 『恋のさや当て』ってヤツですよぉ……

 んぐぐぐぐ……!」


「絶対に負けられない戦いが……

 ここに……ある……

 おふううう……!」


(女の子同士の『恋のさや当て』って、

 こんな汗臭く筋肉のきしみが聞こえてきそうな

 ものでしたっけねえ……?)


ミイト国から神託を繋げているナヴィは、

呆れながらも打開策を申し出る。


(察するに、アルプ君の店にどちらが行くかで

 揉めているんですよね?


 ンなもの、2人で行けばいいじゃないですか)


ナヴィからの仲裁を、フィオナは口にして

メイに伝える。


「そ……そうか……!

 その手があったか……!


 メイさん、このままでラチがあきません。

 同時に行く、という事でどうでしょうか?


 ちなみに、これはナヴィからの提案でもあります」


「むむ……

 女神様と、さらにその使いのご提案とあらば、

 従わないわけにはいきませんね……


 ではそうしましょう行きましょう……!」


こうして、ようやく2人は―――

目的であるシモンの店へと向かった。




│ ■ミイト国・首都ポルト      │

│ ■バーレンシアご一行・宿泊施設  │




「ふぅ。やれやれ、でしゅ」


ようやく事が収まったのを確認して、ナヴィは

安堵のため息をつく。


「どうかされましたか、ナヴィ様?」


唯一、彼と一緒に部屋に残っていた眷属、

ポーラが反応して視線を向ける。


「いや、まあ……

 何かフィオナ様とメイしゃんが、一緒に

 アルプ君のお店へ行くところだったらしい

 でしゅ。


 無事ミイト国に着いたという事は報告して

 ありましゅので」


「そうですか。

 ポーラと仲良くして頂いているみたいで、

 何よりです。


 ……しかし、本当に広いですねこの部屋……

 王宮の一室と言われても信じますよ」


そう言いながら、彼女は室内を見渡す。


「ここが個室というんでしゅから、ねえ。


 ボガッド家のリビングぐらいありましゅよ、ココ」


「侯爵様は早々に現実逃避して、

 逃げるように外出しましたからね……」


2人は改めて、バーレンシア侯爵を呼び出した

トーリ家、そしてミイト国の財力を実感していた。




│ ■ミイト国・首都ポルト      │

│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷   │




「うああぁあああ、

 ついに到着してしまったぁーっ!!」


「いえ、そりゃ呼び出したんですから来るでしょう」


バーレンシア侯爵一行到着の報を受けて―――

シンデリンは焦りの叫びを上げる。

そして自然の流れのようにネーブルがツッコむ。


「……まだ……見つからないの?

 断る……理由……」


涼しい顔で、妹がティーカップを口につける。


「ていうか、ベルちゃんも何か考えてよぉ~。

 せっかく私のために登場したんでしょ?」


「あるには……ある……」


ベルティーユの言葉に、シンデリンはすがりつく。


「なっ何それ!?

 どうすればいいの?」


「……この方法は……

 ネーブルお兄ちゃんの……手伝いが必要……」


「僕の、ですか?

 しかし、恋人役というのは以前も話した通り、

 無理があると……」


彼の疑問に、妹はふるふると首を左右に振る。


「確かに、普通の恋人であれば……

 平民であるお兄ちゃんでは……理由として弱い……


 そこで、『断る理由』にもう1つ……

 劇的なインパクトを……」


「そ、それは!?」


姉の言葉に、すうっと妹は息を吸って―――


「―――名付けて……


 『私、男には興味が無いんです』作戦……!」


その言葉に―――

主従二人は顔を見合わせたまま、口をポカンと開けた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2759名―――




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