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14・ハードル高過ぎやしないでしょーか

1週間ぶりの更新です。


連載10ヶ月にしてPV10万達成しました。

ありがとうございます。



日本・とある都心のマンションの一室―――


モニターの横で寝転がる女神と、それに

寄りかかるように身を置くお目付け役(猫Ver)

がいた。


「そういえばフィオナ様―――

 このところ大人しいようですが、本当に

 お止めになったのですか?」


「?? 何をですか?」


ナヴィの問いがわからず、女神は聞き返す。


「いえ、アルプ君に対する神託ノゾキについてですが。


 このところ、全くその素振りすら見られないので」


「神託と書いてノゾキと読ませるのは

 ココくらいでしょーね。


 ちゃんと止めましたよ、大丈夫です。

 というより最近は、ポーラさんに神託に

 慣れてもらう練習をしているので、

 そんな時間は」


女神は応えつつ、お目付け役の背中と頭を撫でる。


「そうですか、それならいいのですが。

 近頃、いつになく落ち着いておられるので」


「イエ、アタシハ常ニ落チ着イテマスヨ?」


「…………」


「…………」


数秒の沈黙の後、ナヴィはおもむろに爪を出す。


「 よ し 、 吐 け 」


「あははははナヴィにはかなわないなー。


 いえ実はポーラさんに神託を繋げつつ、アルプに

 近付いてもらうのが何ていうか臨場感がすごく

 あって返って興奮するといいますかハァハァ」


お目付け役は爪をしまうと同時に、ため息を

吐き出した。


「……まあ、フィオナ様がそれでいいのなら、

 言う事はないんですけどね。


 実害は無いようですし、本編スタートしますか」




│ ■バクシア国・首都ブラン      │

│ ■ボガッド家屋敷          │




「なるほど―――


 いざという時の『断る理由』ですか」


バートレットが、腕を組みながら考える。


男性陣はナヴィから一通り話を聞いて、それぞれが

答えを求めて頭を悩ませていた。


「あちらから断ってくる可能性は

 ないんですか?」


「その気が無ければ、女性の方の面子を立てて

 断って頂くというのはありますけど―――


 問題は、縁談を申し込んできたのがあちらと

 いう事です」


アルプが楽観的な意見を述べて、それをマルゴットが

消極的に返す。


「しかもミイト国でも有数の財閥の娘……


 商人と貴族とはいえ、力関係ではこちらの方が

 はるかに分が悪い」


老人が、そのシワをより深くする。


「さすがに、侯爵様に無理強いはしないんじゃ

 ねーか?」


「それは無いと思いますが―――

 侯爵様も面子を保って断られないと

 いけないですし」


今度はミモザとポーラが意見を出し合う。


「それに、今回は少し複雑なんですよ。


 同じ国家内ならともかく、異なる国同士の

 縁談ですから」


「お義母様……


 断っても、尾を引く可能性があるという

 事ですか?」


義母であるクレアの言葉にソニアが疑問を呈し、

その問いに、唯一の貴族であるバートレットが応じる。


「―――その可能性は否定出来ないでしょう。


 特にバクシア国内から、

 ミイト国の機嫌を損ねるくらいならと、

 同調する人間が出てきても不思議ではありません」


「ふみゅう。つまり、断る時―――」


ナヴィがそれまでの意見を条件としてまとめる。




「こちらの貴族の面子を保ちつつ、

 だけど相手の面子も潰しゃず、

 かと言って力関係の弱みを悟らしぇず、

 その一方で怒らしぇる事もなく、

 舐められりゅ事もない。


 という事で手を打てればいいわけでしゅね?」


「ハードル高過ぎやしないでしょーか!?」


女神が悲鳴のような叫びをあげ―――

その場にいた全員が、ため息にも似た

息を深く吐き出す。


「あの、そういえば―――


 バーレンシア侯爵様には、すでに誰か

 心に決めた方はいらっしゃらないのですか?」


眷属の母が、素朴にして単純な疑問を口にする。


「それは私たちも、こちらに向かっている途中で

 聞いたのですが……


 貧乏だったから出会いとか全然なくて、

 借金の清算と金回りが良くなってからは

 お見合い話はたくさん来たけど、代官業で

 忙しかったと―――」


世知辛せちがらいですね……」


マルゴットの返答に、肩を落としてフィオナが

感想を述べる。


「貴族であれば、生まれる前から婚約者が

 決まっている事も珍しくないのですが」


「何ソレ貴族怖ぇ」


平民のミモザが、バートレットの言葉に

相応の反応をする。




「確かに、婚約者か許婚いいなづけがいれば―――

 断る理由としては最も有効ですが……」


「う~ん……そうでしゅねえ……


 お2人の誰かが、婚約者としゅて

 付いていくというのは?」


ポーラの後にナヴィが提案すると―――

彼女と同時にマルゴットが顔を見合わせ、

真っ赤になって否定する。


「いやいやいや、そんなっ!?

 私はアルプ一筋で―――」


「私だってシモン君以外絶対に……!」


「落ち着いてください、2人とも。

 あくまでも『そういう役として』と

 いう事でしょう」


半ば混乱気味の2人を、バートレットが

なだめ―――

そして一番の年長者の女性が、たしなめるように

言葉を発する。


「それに、演技力も必要になると思います。


 今のお2人を見るに、それはちょっと……

 それもバーレンシア侯爵様にも演技を

 押し通してもらうとなりますと」


「いっその事、その場にいない人の方が

 適役かも知れないですね」


ソニアが義母の言葉を継ぎ、そこでまた

沈黙が訪れる。




「……でも、そんな都合のいいヤツ

 いるのかい?」


「ミモザさんやメイさんなら信用が

 置けますけど―――」


ミモザとアルプの後に、ローンが否定的に続く。


「令嬢とはいえミイト国の者じゃ。

 下手な相手はそれこそお金か物で『解決』

 されてしまうだろう」


「う~ん、そうですねえ……


 ちょっとお時間を頂けませんか?」


「あー、『アンカー』を使うんでしゅね。

 この場合は仕方ないでしゅ」


女神とお目付け役が『こちら』の世界では

わからない単語について合意し―――

フィオナは、地球あちらのPCとイメージを繋げた。




【 んー? 今度は何の用だ? 】


【 見合いを断るための恋人役? 】


【 ベタだけど、連れてかないなら

 いいんじゃねーの 】



「(まあそうなんですけど、問題はそれを

 誰にするかで―――)」



【 でも条件、かなり厳しくね? 】


【 令嬢とはいえ、バクシアの侯爵以上の

 力持ってんだろ? 】


【 下手な相手だとすぐ見破らちまうしなー 】



いったん意識をバクシアに戻し、フィオナは周囲に

意見を求める。


「んー……身分偽装って、もしかして簡単に

 バレたりしますか?」


「……トーリ家がその気になれば、隠し通せる

 ものではありません」


「私のように、役人の娘だとか―――

 もしくは貴族階級、有力者関係だと特に」


女神の問いに、フラールの豪商の娘と、

徴税官の父を持つ眷属が答える。


「……アタイなんかどうだい?


 結構あちこち飛び回っているし……

 平民だけど、情報屋として身バレした

 事はねーし」


「身元のわからない少女など、それこそ真っ先に

 調査対象じゃよ、ベリーニ(ミモザ)さん」


「それに、フラールに来た時は、

 身分を偽らなかったのでしょう?


 バーレンシア侯爵がフラールの代官

 なのですから、下手をすればむしろそこから

 一気に情報を抜かれるでしょうね」


ミモザの提案を、ローンとバートレットが

分析して否定する。


「騙した事がわかれば、返って事態は

 悪化してしまいますよ」


「結局は身分を隠す事は出来ないのですか……

 でも、他に手は―――」


眷属の少年の母と義祖母が「うーん」とうなり、

それが周囲に伝染していく。


「(ん~……なかなか状況が厳しくなって

 いきますねぇ)」




【 オイ女神様。身バレしなきゃいいんだろ? 】



「(ム!? そんな事出来るの?)」



【 出来るというか、いる 】


【 どんなに調べられても調べようがない…… 】


【 そんな候補が2名ほど 】



「(で、では……

 久しぶりに『アンカー』といきましょう!


 『アンカー』は今のスレで……500!


 聞きたい事は―――

 『婚約者役の候補者2名』!

 『調べられても身バレしない者』!


 ―――さあ、アタシを導き給え……!!)」




>>500


【 YOU&ナヴィ 】




「(……は?)」



【 異世界の存在なんだから、追跡不可能だろ 】


【 しかも神様とその関係者だし 】


【 出番が増えるよ! やったねフィオナちゃん! 】



「NOおおおおおおお!!」


ひと際大きな女神の悲鳴が室内に解き放たれ―――

沈黙、そして説明と周囲の理解が落ち着くまで、

約10分ほどの時間を要した。


「まあ確かに―――

 私とフィオナ様なら、調査しゃれてもどうにも

 ならないでしゅよ。


 候補者2名と言っても女性はフィオナ様

 だけでしゅから、実質1名でしゅが」


ナヴィが保証するように語り、それでようやく

安堵感が室内に広がる。


「ま、まま、まあ?

 恋人役を務めるのもやぶさかではないと

 ゆーかー?」


それとは対照的に、明らかに動揺する女神1人。

しかしお目付け役はそのまま追い打ちをかける事を

忘れない。


「『アンカー』を使ってしまったんでしょう。

 自業自得というものでしゅよ」


「しかし、問題はバーレンシア侯爵様

 ですよね……」


「何か問題がありましゅか?」


アルプの疑問をナヴィが確認する。


「いえ、だって……

 フィオナ様が恋人役って知ったら……」


「……あー、うん……

 今度こそプレッシャーで死ぬんじゃ

 ねーかな……」


ミモザが頭を抱えると同時に、他もそれに合わせて

考え込む。




「とは言いましゅても……


 『アンカー』で、

 『婚約者役の候補者2名』、

 『調べられても身バレしない者』、

 と限定してしまったんでしゅから。


 まさか男の私がしょれをやるわけにも」


そのお目付け役の言葉に呼応するかのように、

5人の女性陣が声を一斉に上げた。


「それです!(byフィオナ)」


「それですわ!(byポーラ)」


「それだな!(byミモザ)」


「そう、ですわね……(byクレア)」


「それも、アリなのでは(byソニア)」


そして、その流れに置いていかれたかのように―――

アルプ・バートレット・ローンの男性陣はポカンと

していた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2738名―――




出社して無料自販機でいつもの冷たいお茶の

ボタンを押したら氷水出てきた水おいしいです。

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