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12・それでこそ私が仕える女神様

一週間ぶりの更新です。


書き終わったと思っていたら、

「バーカまだタイトル考えてないじゃん」

という状況の自分が危うい。



日本・とある都心のマンションの一室―――


そこを担当外の異世界の住処すみかとしている

女神・フィオナは、自分の眷属と神託を繋げていた。



│ ■バクシア国・首都ブラン      │



(……聞こえますか、ポーラ。

 様子はどうでしょうか)


まだ日差しが柔らかな午前中―――

商店が並ぶ大通りを歩く姉妹。


2人とも銀のロングウェーブの髪をなびかせ―――

一枚の絵のように、さっそうと街中を進む。


そこへ、自分が眷属の契約を交わした女神から

神託が下される。


正確には、彼女たちがまだ自宅にいた時点から、

神託は繋がっていた。




「はい。聞こえますフィオナ様。


 それで、私はその―――

 今シモン君の店で働いている、アルプ君の様子を

 見に行けばよろしいのでしょうか?」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




「はい。貴女の目を通して、視覚も確保

 出来ておりますから。


 神託を繋ぐ練習、とでも思ってもらえれば」



│ ■バクシア国・首都ブラン      │



再び別世界で、3番目の眷属は神託を引き続き

受け取る。


「まあ、私としてはいいのですが―――


 こうして出番も増えますし……

 まさか眷属になってすぐ、3話も出番が無いとは

 思いもしませんでしたし」


「メタらないでポーラ姉さま。


 しかし、フィオナ様―――

 眷属であれば、その目や耳を通してこちらと感覚を

 共有出来るんですよね?」


(はい、そうですけど?)


妹の質問を引き継ぐように、姉が続ける。


「練習というのはわかりますが、それなら

 アルプ君とも感覚を共有出来るでのは

 ないでしょうか?


 わざわざアルプ君の元へ行く必要は―――

 いえ、シモン君に会えるから私は別に

 いいんですけど……」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




ポーラの疑問に、女神・フィオナはふぅ、と

ため息をついて語り始めた。


「アルプはアタシの一番最初の眷属であり―――

 フラールの奉公労働者解放のため、一心同体とも

 いえるほど、感覚を共有していました。


 ですが―――

 今は恐ろしい力によって、それもままならなく

 なってしまっているのです」


(そ、そのような事が……!?

 いったい何があったのですか!?)


予想外の女神の言葉に、固唾かたずを呑んで

眷属は質問を重ねる。

しかしその答えは―――


「いやあお風呂の時とか着替えの時とか狙って

 黙って神託カイセン繋いでいたら、ナヴィから

 『いい加減プライバシーの侵害はやめやがれ』って

 無理やり止められましてね」




│ ■バクシア国・首都ブラン      │




「は、はあ……

 それで、『恐ろしい力』というのは―――」


眷属は呆れつつも、女神にその先を促す。


(怒った時のナヴィめっちゃ怖かったわー。

 あぁでも猫Verの時だったし、

 もし人間Verで怒られたらと思うと

 どうにかなっちゃいそうでハァハァ)


「それでこそ私が仕える女神様です……


 では、そろそろ本編スタートしましょう」




│ ■フラール国・バクシア国代官館  │




「はあ……

 縁談―――ですか」


同性という理由で相談を頼まれたバートレットは、

バーレンシア侯爵への助言に苦慮くりょしていた。


「私も独身ですし―――

 それに我が国とバクシア国、ミイト国とは

 国力も雲泥の差です。


 正直に申し上げまして、あまり助言らしい事は

 出来ないかと」


「そう言わずに何か意見を頼むよ……


 それに、国力の差を言うんだったら、

 ミイト国の前じゃ、我がバクシアもフラールも

 五十歩百歩、似たようなものさ」


すがるように言葉を続けるバーレンシア侯爵に、

仕方なく情報の詳細を求める。


「侯爵様の―――ご実家の意向としては?」


「あっちはかなり乗り気だよ。

 気持ちはわかるけどね。


 ミイト国との縁は喉から手が出るほど

 欲しいはずさ。

 地位だけは高い没落貴族みたいな

 モンだったし」


「そうなのですか?」


「それが僕の代で借金は帳消し。

 フラールでの代官としての評価もなぜか

 内外に高い。


 価値が最も跳ね上がっている今のうちに―――

 というのは悪い考えじゃないさ」


お互いに取り決めでもあったかのように、

2人同時にふぅ、と一息つく。


少しの沈黙の後―――

バートレットの方からさらに質問が重ねられる。


「お相手は―――誰なのですか?」


「貴族ではないみたいだ。

 ただ、ミイト国の中でも名門の商会の

 お嬢様だとか。


 恐らく、正式な婚姻が結ばれる段階で

 どこかの貴族の養女になる手続きを

 するつもりじゃないかな」


そう言いながら、バーレンシア侯爵は

テーブルの上の書類をあさる。


「あったあった、これだ。


 ええと、ミイト国・トーリ財閥の……」




│ ■ミイト国         │

│ ■シンデリン家屋敷     │




「ところで、お嬢様―――

 また実家の方からお手紙が来ておりますが」


従者の少年がお茶を注ぎながら話題を振り―――

その主筋の女性が応える。


「どうせお見合いの話よ。

 放っておいていいわ。


 それにしても―――

 この前の話はかなーり頭にきたわよ」


親指の先をガジガジと噛みながら、その時の事を

思い出したのか、不機嫌な表情になる。


「そんなに嫌な相手だったのですか?」


「顔も見た事が無い相手の事なんて知らないわ。

 それに、その方が怒りをぶつけられる対象が

 わかっているだけまだマシよ。


 アレは自分たちのミスの後始末を押し付ける気

 満々だったもの」


シンデリンはそのまま一気にお茶を口に流し込むと、

そのカップをネーブルに渡す。


「今、お茶のお替りを。

 それと、クッキーがありますが……

 チョコとバター、どちらになさいますか?」


「それじゃ、バターで」


「まあバターしか無いんですけどね」


「なぜ聞いた」


「様式美?」


そんなやり取りをしつつ―――

ネーブルはティーセットを持って、部屋を退出した。




│ ■フラール国・バクシア国代官館  │




バートレットが館に到着してから2時間後―――

マルゴット・ファジー・ミモザが合流していた。


マルゴットが連れてきた応援の人達をアルプ家の

留守番にするという、力業を使ってではあるが。


「あっ、あのっ、侯爵様。

 台所をお借りしますね。

 ちょうど、アルプさんの果樹園で獲れた

 新しい果物が―――」


「それはあたいがするよ。

 神託は眷属のファジーしか受け取れないんだから、

 ここにいてくれ」


姉が弟を席に座らせ、自分は奥へと消える。

すでに席についている商人の女性は、

手紙を視線で舐めるように、隅から隅まで

目を通していた。


「シンデリン・トーリ……

 フラールでアルプとファジー君が会った、

 あの女ですね」


マルゴットの言葉に、バートレットが考え込む。


「やはり『枠外の者』でしたか……

 しかし、どうして今頃侯爵を?」


「あの、こう言っては何ですけど、

 バーレンシア侯爵様と『枠外の者』の

 関係って……」


ファジーが口に出し、最後まで言えずに

言いよどむ。

それをフォローするかのように、本人が

話を続ける。


「まあ僕も、それなりのリスクを承知で

 ここの代官になったからね。


 だけど、本当に何で今頃なんだろうねえ」


度胸があるのか鈍感なのか、それとも自己評価が

低いのか―――

どちらとも取れる態度で彼は応える。


「私は、理由は2つあると考えます。


 無礼な事を言ってしまいますが―――

 捨て駒同然と考えていたバーレンシア侯爵様が、

 予想外に力を付けてしまった。


 そのアフターケアとして、敵対する前に

 お詫びか謝罪を用意する必要があったのかと」


「なるほど。で、もう1つは?」


商人の考えに対し、その先を促す侯爵。




「もう1つは―――

 あわよくば、味方勢力として取り込む事です。


 ミイト国の人間を差し出してきたという事は、

 かなりの本気が伺えます」


その言葉に、2人の貴族は納得したような、

感心したようなため息をついた。


「素直に味方になってくれればそれでよし、

 最低限、敵に回らなければ構わない―――

 という事ですか」


「なるほど。よく考えたものだねえ」


他人事のように頭をかく侯爵の元へ、

ミモザが切ったモモを持って現れる。


「お待たせ。アルプさんのところで新しく

 採れた、モモだよ」


そして今までの話の内容を、彼女にも共有させる

事になった。


一通りミモザが話を理解した後―――

眷属の少年に神託が繋げられる。


(ファジー、聞こえますか?

 今はどこに?)


「あっ、フィオナ様!

 今は代官様の館にいます。

 フィオナ様にもお話を共有しますね」




―――ファジー説明中―――




(なるほど。そういう事になっていたのですか。

 でも、これは渡りに船かもしれません)


「?? どういう事でしょうか、フィオナ様」


フィオナの言葉に、マルゴットが質問する。


(実は、こちらでも上位3ヶ国へ行く必要性が

 語られていたのです。


 ただ、『新貴族』とやらが絡んでいる事から、

 こちらでも貴族の協力が要るのではないかと―――)


「なるほど。

 それなら僕の話はまさにピッタリだね」


女神の話に、好意的に応える侯爵。


(ええ、ただ―――

 聞いておかなければならない事もあります)


「僕に? 女神様がどのような?」



│ ■シンデリン家屋敷     │



「そういえば、お嬢様は―――」


「?? 何、ネーブル?」




│ ■フラール国・バクシア国代官館  │




「……お見合い自体、ご自分ではどう思って

 いるのですか、と―――フィオナ様が」


「ああ、そういや確かに……

 で、どうなんだい? 侯爵様」


姉弟の言葉に、少しバーレンシアは考え込む。


「ん~……そうだねえ……」




│ ■シンデリン家屋敷     │




「確か、相手は侯爵様なのよねえ。

 一度くらい、会ってみてあげてもいいかしら」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2719名―――




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