11・日常の生活の中でも細やかなボケを
1週間ぶりの更新です。
何なの気温30度ってまだ5月なのに(;゜Д゜)
あとだいぶ加筆修正しました。
ミモザとマルゴット、ルコルアへ行くって
言ってたじゃん……_| ̄|○
日本・とある都心のマンションの一室―――
お目付け役兼サポート役であるナヴィ(猫Ver)に、
女神は頼み事をしていた。
「ねーねー、ナヴィ。
ちょっとPC立ち上げて欲しいんだけど」
「何ですか?
また『アンカー』といかがわしい事の
相談ですか?」
いつものやり取りをしつつ、彼は肉球で電源ボタンを
器用に押す。
「それもあるんだけど―――
ちょっと見たい動画とかあってね」
「否定しろや。
というか、手持ちのスマホはどうしたのですか?
いつもはそれで動画も見ていたのでは」
「いえ、それがですね……
うっかり通信を切り替えるのを忘れていて
ですね、あっという間に容量制限が……
家の中なら問題無いんですけど、
PCに慣れておいた方がいいかなーって」
ふぅ、とため息をついて、従僕は話を進める。
「日常の生活の中でも細やかなボケを忘れない、
お見事ですフィオナ様」
「決まり事のように言わないでください!
で、ではそろそろ本編いきましょう」
│ ■バクシア国・首都ブラン │
│ ■ボガッド家屋敷 │
知恵熱が出た2日後の朝―――
第一眷属であるアルプとその母、ソニアと、
ボガッド家当主とその妻である老夫婦と共に、
彼らは食卓を囲んでいた。
「あの、お体の具合の方は
もう大丈夫なのでしょうか、
フィオナ様」
結局、体調を崩したとの事で、1日だけ
様子見で待機したのだった。
フィオナの具合は昨日1日ですでに回復していたが、
アルプがおずおずと彼女の体調をたずねる。
「大丈夫でしゅよ。
おかしいのは頭の方でしゅたから」
「いやーさすがナヴィさん。
朝からキツいッス」
女神と従者はいつもの掛け合いを―――
それを半ば慣れと冷や汗で見つめるボガッド一家。
「あ、あの、それで―――
今後の方針とかはどうなっているのでしょうか」
いたたまれず、ソニアが話を振る。
「ん~……それなんですけど、
情報が無さ過ぎるんですよねえ……
アルプの時のように信者に被害が出ている
わけでも、ファジーの時のように『枠外の者』に
何か仕掛けられているでもないので」
「やっぱり、ここはひとつ―――
上位3ヶ国のいずれかに調査に向かう
べきではないでしゅか?」
ナヴィの言葉に、眷属と母とその義母が
ウンウンとうなづくが―――
一人、ローンだけは眉間にシワを寄せていた。
「えっと、おじい様……
どうかしたんですか?」
義理の孫の言葉に、祖父は語り始める。
「調査はいずれにしろ、しなければならないと
思うのだが―――
『枠外の者』だけならともかく、『新貴族』も、
となると……
貴族相手にうかつに探りを入れたら、
ワシでも手に負えなくなる場合もある。
せめて、同じ貴族の人間がいればいいのだが」
夫の言葉に、妻が提案を口にする。
「あなた、それなら―――
バーレンシア侯爵様やビューワー伯爵様が
いらっしゃるのでは」
ローンは彼女の言葉にふぅ、とひと息つき、
妻に応える。
「商人と貴族を同じに見てはならんよ。
ワシらならば、商談や商品の仕入れやら
何やらで理由は付けられるが……
身分が高い人間というのは、国境を越えた移動にも
それなりの理由が必要だ」
「でも、あの。
バートレット様は、マルゴットさんの
護衛としてバクシアとフラールを行き来
していましたし―――」
「あれはフラールとバクシアが隣国で、かつ
今はバクシア国管理下―――
つまり同一の国と同じ扱いだからこそ出来た
ものであろう。
それに連合国家とはいえ、上位3ヶ国と
それ以外の国々とは、規則の厳しさも警備の
厳重さも異なる」
話を聞いていたお目付け役は、口元に手を
当てて考え込みながら会話に入る。
「ふみゅう。
つまりしょれは、バーレンシア侯爵も
例外ではないという事でしゅね」
「そういえば、バートレットさんも
ルコルアには来ませんでしたし。
一度、例の鉱山の岩盤破壊について、彼が
立候補した事がありますけど(3章26話)―――」
フィオナは、ルコルアでの事を思い出しながら
話に入る。
「あれは、結局提案だけで終わりましたが……
もし実現したら、どんな理由で行かせたらよいか
頭を悩ませていたでしょうな」
腕を組み、考え込む老人に対し、妻はゆっくりと
席を立った。
「ちょっとお茶のおかわりをお持ちします。
少し気分転換してみたらどうかしら」
「あ、お義母様そんな。
そんな事なら私が―――」
そう言いながら眷属の母と義理の祖母は席を立ち、
あとに残る女性は1名だけとなる。
「(う~ん……この展開はちょっとマズいですね。
絶対こっちに質問向けられるでしょうし……
ちょっと『アンカー』どもに相談してみますか)」
そしてフィオナは密かに、地球、自分の部屋から
PC経由でコンタクトを取った。
(とゆーわけでキミ達に出番を与えてやろう。
何か有効な大義名分を教えろ。
教えてくださいお願いします)
【 ん? 貴族が移動する理由? 】
【 そんな事言われてもなあ 】
【 こっちに貴族様はいねーし 】
(いやいや、何かアイデアを……
意見は無いんですか?)
【 いや、なんつーかさ…… 】
【 もっとシンプルな方法を見落としている 】
(む!? その心は!?)
いったんページ更新を待つと、返答が表示された。
【 当人に聞けばいいんじゃね? 】
「……あの、フィオナ様? どうかしましたか?」
眷属の1人が、地球と通信状態だったフィオナを
心配して顔をのぞき込む。
そこにはすでに、彼の母も義祖母も戻ってきていた。
「で、考えはまとまりましゅたか?」
お目付け役はお見通しのようで―――
その先の言葉を促す。
「え、ええと、その―――
せっかくフラールの方にも眷属が今いるので、
当人に相談してみては、という事で?」
「何で疑問形なんでしゅか。
まあいいでしゅが―――」
フィオナとナヴィが言葉を交わした後、
ローンは深く席に腰をかけ直す。
「貴族の事は貴族に聞け―――という事ですか。
まあ、そうですな。
しかし、お体の方は大丈夫ですか?」
ローンが心配そうな目で言葉を返す。
彼の妻や、義理の娘・孫も同様の目をしていた。
「ま、まあ言い出しっぺはアタシですので、ね?
それじゃ、フラールと神託を繋げてみましょう」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「ミモザ姉、今日は何するか聞いてる?」
「あー、マルゴットさんが屋敷から
応援連れてくるって。
バクシアに行く前にアルプさんがいろいろ
指示出してくれていったみたいでさ。
最近、新しく収穫出来た果物の出荷を
しなければならないから、その仕分けの
準備だけお願いしますって言ってた」
「あー、確かモモっていう果物だっけ。
フィオナ様が新しく作った……
―――ってアレ? フィオナ様……ですか!?」
フラールで、食後の時間に今後の準備のために
動こうとしている姉弟へ、女神からの神託が
繋げられた。
│ ■ボガッド家屋敷 │
「ごめんなさい、突然で―――
あ、いいえ、別に緊急事態とかそういうのでは。
えっと、バートレットさんいらっしゃいますか?」
│ ■アルプの家 │
「あの貴族様なら、昨日まではいたんだけど……
昨晩のうちに帰ったよ。
何でも、ここの代官様に今日、会う用事が
あるんだとか」
(そうなんですか?
……っていうかアレ?
もうルコルアから戻ってきたんですか、
ミモザさん)
「昨日、マルゴットさんを待っていたらさ。
一緒にソルトのヤツが来たんだ。
何でも、定期連絡だとか言ってたけど―――
まあ鉱山の手伝いがキツいんで逃げてきたんだろ。
ちょうどよかったんで、例の情報を持たせて
とんぼ返りしてもらったよ」
「相変わらずあの2人には厳しいね、ミモザ姉……」
情報を一通り共有すると、フィオナが話を元に戻す。
(んー、という事は今、バートレットさんは
バーレンシア侯爵に会っているんですね)
「バクシアからフラールへの奉公労働者の帰還が
一段落したので、それからは個人的に相談に
乗る事が多くなったとか仰ってました。
もし急用なら、ボクがひとっ走り行って
来ますけど―――」
第二の眷属の申し出を、女神はやんわりと否定する。
│ ■ボガッド家屋敷 │
「あ、いえ。そこまでの事ではないので―――
う~ん、マルゴットさんは?」
│ ■アルプの家 │
「彼女ならもう少しすりゃ来ると思う。
その後で一緒に代官様のところへ行くか。
で、用件は何だい? フィオナ様」
(あ、実は―――
バートレットさんか、バーレンシア侯爵に……)
│ ■フラール国・バクシア国代官館 │
フィオナが再び神託をフラールとの間に開いた
その日の昼頃―――
フラール国の伯爵は、バクシアの代官である
侯爵の元を訪れていた。
「ああ、すまないなビューワー君。
またこうして呼び出したりして―――」
「いえ、侯爵。お構いなく。
来る度に過分な相談料を頂いておりますし……
今のフラールでは、破格とも言えるほどの」
バクシア・フラール両国による表彰式を経て―――
その準備のためもあってか、彼の『野戦病院』の内装は
それなりにグレードアップしていた。
しかし、建物そのもののボロさは直しようもなく、
補強による補強で、あちこちが武骨ささえ漂う
外観に変質していた。
「いやいや、ホントーに助かってるよ。
正直、この辺で相談相手になりそうな人って
君くらいしかいなかったし……
グラノーラ家のお嬢様にもいろいろと
世話にはなっているけど、得に今回のような
案件は、君にしか相談出来ないからなあ」
「それは―――
『貴族絡み』と見てよろしいのでしょうか?」
バートレットの表情に緊張が混じる。
しかし、バーレンシア侯爵からの返答は、彼の
予想とは異なっていた。
「いやあ、どちらかというと同性のよしみって
いうかね?
男同士だからこそ相談出来たっていうか」
「??」
「実は、本国の実家から連絡があってね。
ミイト国から僕に……
お見合いというか、縁談の話があって―――」
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在2713名―――