10・お前シンデレラの姉2だな
一週間ぶりの更新です。
UPする1時間前に仕上げました(;'∀')
誤字脱字校正? (ヾノ・∀・`)ムリムリ
あと、ユニーク数が2000を超えました。
ありがとうございます<(_ _)>
地球・日本国―――
「う~……暑ぃですねえ」
都内の、自分が住んでいるマンションから少し離れた
道で、帰途につく女神が一人―――
「早く家に帰らないと。
ちょっと軽くコンビニでアイスを買うつもりが、
電子マネーに釣られてしまうとは……
他もいろいろ買っちゃったし。
だってあのキャラのダウンロード特典付きって
そりゃあ買うに決まってるでしょゲフゲフゲフ♪」
そこへ、家で待っているお目付け役・ナヴィの声が
直接脳内に響いた。
(フィオナ様……
今、貴女の頭に直接語りかけています……
聞こえますか、フィオナ様……
なんで最後気持ち悪い語尾なんですか……)
「あ、ナヴィ。
どうかしたの? アタシならすぐ帰るけど」
いつものツッコミをスルーして、フィオナは
足を速めた。
(……いえ、フィオナ様。
外出する際、エアコンを稼働させてから
出て行かれましたよね……?)
「あー、ウン。
ここ最近は過ごしやすかったから
空調だけだったけど、何か今日は
暑くなりそうだったから。
でも付けてって正解だったでしょ?
外、今すっごく暑いよー夏だよ夏!
いや、お礼なんてそんな体でお願いします」
何気なく恩着せがましいをすっ飛ばして、
具体的な見返りを要求するフィオナ。
しかし、ナヴィから返ってきた答えは―――
(フィオナ様……
貴女が出かけて行く時に付けていったエアコンは
冷房ではありません……
ましてや、除湿でもありません……
暖房です……
聞こえやがっていますか……フィオナ様……)
「サーセン。
お詫びはスー〇ーカップでよろしいで
ございましょうか」
(では、それで手を打ちましょう……
早く帰ってくるのです……
それではそろそろ本編スタートします……)
│ ■バクシア国・首都ブラン │
│ ■ボガッド家屋敷・フィオナの部屋 │
知恵熱が出てフラフラになったフィオナは―――
ボガッド家で用意された自分の部屋で横になりながら、
お目付け役であるナヴィに介抱されていた。
「大丈夫でしゅか、フィオナ様―――
少しは落ち着きましゅたか?」
その声に額に手をあてて身をよじりながら、
女神は何とかベッドの上で体勢を整える。
「ぅおのぉれえぇええ……覚えておきなさい……
この借りはいつか必ず返してやります……!」
「何処で誰に何を返すつもりでしゅか。
『枠外の者』とはいえ、そんな理由で恨まれたら
さしゅがに同情しましゅよ」
仰向けになり、手でパタパタと自分をあおぎながら
フィオナは会話を続ける。
「……で、結局のところどーなんです?
連中は何しようとしてるの?」
「フラールの再現―――
奉公労働者のオークションをしゅるために、
その国の経済を破壊しましゅ。
でしゅが、しょれだと連合国家内での影響が
大きくなりましゅ。
しょこで、『連合共同金融安定局』という機関を
作って、経済破たんさせた国家の救済を、各国の
負担で行わしぇる……
オークションの利益は独占、経済破たんの補填は
各国で負担、という事でしゅ」
「なるほど、よくわかりました」
フィオナのキラキラした瞳を見て、
ナヴィは確信していた。
絶対にわかっていない、と―――
そして彼はため息をつき、
「では、フィオナ様の脳でもわかるように
噛み砕いて説明いたしましゅね」
「だから何でそんな意地悪な言い方するんですか!?
さてはお前シンデレラの姉2だな!?」
「姉1は誰なんでしゅか。
いいから聞いててくだしゃいね。まず―――」
―――ナヴィ説明中―――
「―――なるほど。
つまりワザと弱らせてから自分だけ美味しく頂き、
アフターケアはみんなに押し付けると……
そして復活させてはまた弱らせて美味しく頂く―――
そんな都合の良いシチュをいつでも堪能出来ると
いう事ですね!?
何て事を! 許せん!!」
「言い方はアレでしゅが、まあそういう事でしゅね。
なまじ間違ってないだけに腹立つぅ」
それでも、一応は内容を理解した事に安堵し、
サポート役はホッと一息ついた。
「しかし、これからどうしましゅかね。
バクシアでの眷属が出来た事は
いいのでしゅが―――
肝心の『新貴族』に対する調査も手段も
わかりましぇんし」
「普段だったら『アンカー』に相談するか
方法を決定するかなんですけど……」
【 てか、情報が足りな過ぎる 】
【 せめて、上位3ヶ国の中に眷属がいればな――― 】
【 今のところ、何か仕掛けられてる事もねーし 】
「―――という意見ばかりで、これといった方針が
立てられないんですよ」
「しょれはまあ仕方ないでしゅよ。
情報が足りてないのは確かでしゅし。
上位3ヶ国の中でも、『枠外の者』は
ミイト国のシンデリンという者しか、
姿を見せていましぇん。
あの女性商人だけでも、何かわかればいいん
でしゅが……」
2人して頭を悩ませつつも、これといった
答えは出ず―――
そのままバクシアでの夜は過ぎていった。
│ ■ミイト国 │
│ ■シンデリン家屋敷 │
同じ頃―――
フィオナ達の話題に上がっていた『枠外の者』、
シンデリン・トーリは、ルコルアにおける計画と、
その失敗した過程を調査した報告書に目を通していた。
「あの、アルフ・ファラ兄妹―――
ファラちゃんの正体はともかくとして、
アルフ君の正体が、あのアルプ・ボガッドとはね。
フラールの奉公労働者解放の中心人物にして、
バクシアの代官とも親交があり―――
今や両国友好のシンボルともいえる少年」
ゆっくりと座っているイスに深く腰掛けるようにして、
再び書類に目を通すために身を乗り出す。
「本当に必要な時は自ら動く―――
なかなかイイ男じゃない。
たまらないわ。
実力主義とうそぶく『新貴族』の中にも、
ここまで出来る人間がどれほどいるか……」
そこにノックの音と共に扉が開かれ、
一人の少年が入ってきた。
年齢は12、3才くらいだろうか。
『こちら』の世界では珍しい黒髪に黒目、
やや伸び過ぎの短髪を揺らしながら、
手にはお茶のポッドとカップ、ソーサーを乗せた
トレイを捧げるように両手で抱える。
小柄ながら、正式な執事の黒いジャケットの下に
白シャツ、そしてウエストコートを収め―――
革靴を絨毯の上に沈ませながら、彼女の前に歩み寄る。
「お嬢様、入ってもよろしいでしょうか」
「入ってきてから言わないでくれる?
毎度毎度―――」
いつもの事なのか、疲れた視線を彼に向ける
シンデリン。
それに構わず、彼はティーポッドの中の液体を
手慣れた様子でカップにそそぐ。
「どうぞ、お嬢様」
「ありがとう、ネーブル」
彼からソーサーに乗ったティーカップを受け取り、
彼女は静かに口を付けた。
「お味の方はいかがでしょうか?」
「その味がしないんだけど」
微妙な表情を従者に向けるお嬢様。
それに従者の少年はきょとんとした表情のまま
応える。
「え? だって水は味しないでしょう?」
「だから何で水なの!?
なんか匂いしなくて透明だなーとは思ったけど!
思いましたけれども!」
「いえお嬢様、こまめな水分補給は大事ですよ?」
「論点が違うわ!!」
従者の言動に振り回されるようにして、彼女は
テーブルに突っ伏す。
そして顔を上げて改めて書類に目を通す。
「はぁああ~……にしても、アルプ君とファジー君、
さらにビューワー家とグラノーラ家―――
その裏にいる、女神様とその使いとやらの存在……
ナヴィ様? と呼ばれる少年、かあ。
まだお目にかかった事はないけれど―――
噂によると絶世の美男美女で……
常に2人で行動し、その主従関係は見る者全てを
感服させるものだとか」
実際に、フィオナとシンデリンは相対した事が
あるのだが、シンデリンは彼女をフィオナと
認識しておらず、
ナヴィはナヴィで、この時はラムキュールの
屋敷に向かうマルゴットを陰ながら護衛して
いたため、面識は未だ無かった。
そういう意味では、まだ『本当の』2人を
見ていない事になる。
「そんなに気になりますか?
女神様と―――その使いの少年が」
従者の少年は、自分の主人の口ぶりに疑問を挟む。
「そりゃあねえ。
私を含め『枠外の者』が、どんなに調査しても
まだ実態がつかめない謎の人物。
断片的にわかる情報では、まさに理想の従者……!
どこかの誰かのような、主人に対して意図が読めない
行動を仕掛けてくるような使用人じゃなくて」
「……ご主人様。親元からもう離れているのですから、
『お嬢様』と呼ばせないでください。
ご主人様、僕が起きた後のベッドに勝手に入って
変な声を出しながら笑うのを止めてください。
ご主人様、貴女の趣味に口出しする気は
ありませんが、買ってきたいかがわしい本の
人物を、僕の名前で上書きするのをやめて
頂けませんか?」
言葉が矢となり、見えないダメージが
シンデリンを貫く。
それに耐えながら、彼女は身震いしつつも
身を起こした。
「ふふふ……やるじゃない。
いつの間にかトリプルアローを習得していたとは」
「僕にやらかしてくれた事を考えれば、
あと100連発くらいいけそうなんですけどね。
その女神様の従者とやらに憧れる前に―――
それに相応しいご主人様になるのが先なのでは」
まともな主従の会話とは思えないやり取りに、
『ご主人様』はイスに深く腰を掛け直す。
「ふふふ―――いいわねぇ。
私が貴方に求めるのは、その忌憚の無さと
正確な分析よ。
これからも頼りにしてるわ」
「いくらカッコつけたって、内容が最低なのは
変わりませんからね」
従者からトドメの一撃をもらうと、そのまま
シンデリンは再びテーブルに突っ伏した。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在2707名―――
シンデリンは犠牲になったのだ……
最近、真面目な空気の比重が高くなったシナリオに
ウンザリした作者の犠牲に……