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09・(知恵熱だから)

一週間ぶりの更新です。

やっぱり作成が時間ギリギリに・・・

時々、会社でシナリオを書きたい

衝動に駆られる(-_-;)



天界、フィオナの実家―――


そこでアルフリーダの従僕にして、フィオナの

お目付け役であるナヴィ(猫Ver)と、

主人の夫であるユニシスが対峙していた。


「―――ふむ、報告ご苦労。

 僕からしっかりと伝えておくよ」


「よろしくお願いします」


本来であればナヴィの報告先は、自分の主人である

アルフリーダなのだが―――

彼女が不在の場合は、こうして夫であるユニシスに

言伝ことづてを頼む事も珍しくなくなっていた。


「……それで、ナヴィ。

 もう1つの報告は?」


ユニシスが言っているのは独自の依頼―――

アルフリーダとは別系統の、彼自身がナヴィに

頼んだ事だった。


やや声をこわばらせ、従僕の返答を待つ事なく

彼は言葉を続ける。


「今のところ、フィオナに変な虫はついて

 いないだろうね?」


「大丈夫です。

 フィオナ様以上に変なヤツはそうそういませんから」


「実の親を目の前にしてよくもそんな……っ!?」


怒りよりも困惑の方が色濃くこもった声で、

ユニシスは反発する。




「それに、今回新たに眷属に迎えたのは

 女性ですし―――

 当分はまあ、うわついた話もないんじゃ

 ないでしょうか」


父親を安心させようと、事実を踏まえてナヴィは

意見を述べる。

しかし、彼の反応は異なっていた。


「じょ、女性、だって……?

 まさかフィオナがそんな、

 そういう道に……

 いや、でもフィオナの魅力なら

 それもあり得ない事では……っ」


「ユニシス様。

 ちょっとこっちへ戻ってきて頂けますか?


 親バカなのはわかっていますが、

 フィオナ様があらぬ方向に誤解されるのは

 さすがに黙っている事は出来ませんので―――」


そこでナヴィは、どういった経緯でポーラが

眷属に選ばれたのか、わかっている範囲で

ユニシスに説明した。




―――ナヴィ説明中―――




「ウ、ウム……そうだったのか。

 確かに今後の事を考えると、眷属に女性もいた方が

 いいのは間違いない。


 あのコもあのコで、考えているんだなあ」


「結果的に何とかなっている事も多いですが、

 それも含めて実力と実績と言えるでしょう」


従僕の説明に納得したのか、軍神は安堵の

ため息をつく。


「そうか……いや、眷属の少年に女装させて

 いるという話もあったから、不安だったのだ。

 聞けば潜入に必要だったというし、それも

 あのコなりに考えた上での結果なら―――


 正直、ついママの影響も疑ってしまって」


「いえそこは100%アルフリーダ様の遺伝子を

 受け継いでいると思われますが」


「ええ……」


「それでは、そろそろ本編に入りましょうか」


疲労の色濃く残る表情をした主人の夫をそのままに、

ナヴィはマイペースを崩さず話を(強引に)進めた。




―――ナヴィ回想中・前回からの続き―――


│ ■徴税官シオニムの家       │


ナヴィとシオニムは向かい合わせの席に座り―――

家主は眉間にシワを寄せながら、言葉を続けた。


「『連合共同金融安定局』の設立―――

 その後すぐにルコルアであった『枠外の者』の

 不穏な動き―――


 あまりにもタイミングが良過ぎます」


「―――『枠外の者』……

 ミイト国出身の人もいたみたいでしゅが、

 上位三ヶ国の政治を動かせるほどの力が

 ありゅのでしゅか?」


その問いに、うなるように考え込むシオニム。


「力があるかどうかはともかく―――

 『枠外の者』の性質として、積極的に政治に

 関わる事は無いと思います。


 政治家とはなるものではなく、利用するもの―――

 そう思っているでしょうから。


 何より、少なくとも彼らは『合法』の範囲内で

 行動してきました。

 今回は『法』そのものを動かす行為です」


「ふみゅう。

 今までとは一線を画す、という事でしゅね」


ナヴィは、イスに深く腰をかける。


「ただ―――」


「?」


その言いかけた言葉に、ナヴィはいったん深く

腰かけた姿勢を直す。


「先ほど、ナヴィ様がおっしゃった言葉です。


 その国の経済を崩壊させる事に対して、

 アルプ君はあまりにも危険だと言い、

 ナヴィ様は連合国家として黙っているはずが

 無いという―――


 確かに、どのような小国でも政情や経済が

 不安定になるのは、連合国家として影響が

 見逃せないものです。


 ですが、それを解消出来る手段さえあれば―――」


―――ナヴィ回想終了―――




│ ■バクシア国・首都ブラン    │

│ ■ボガッド家屋敷        │




ナヴィの話を聞いて―――

ボガッド家に集う面々は、半々で沈痛な表情を

浮かべていた。


「どゆこと?」


女神はきょとんとした表情のまま、

疑問を口にする。


「あー、今は情報共有に集中して欲しいでしゅよ。

 後で私が説明しましゅから。


 フラールの方々にも、事情がよくわからない人も

 いるでしょうし」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「あー、ウン。

 アタイもちょっとどういう事かさっぱり

 わからねー。


 ……わかってんのは、連中の考えが

 ドス黒いって事だけだ」


「それは、ボクも同じです―――」


フラールで待機していた眷属とその姉は、

理解出来ないながらも、その不穏な空気は

感じ取っているようだった。


「なるほどね……」


「それで、シオニムさんの話は終わりでしょうか」


そして、それとは対照的に―――

マルゴットとバートレットは、バクシアにいる

老夫婦と同じような表情をしていた。




│ ■ボガッド家屋敷        │




「……結論としましゅては、


 連合国家内の弱小国を順次破綻さしぇて―――


 順次回復さしぇて……」


ナヴィの言葉の先を、老人が繋いだ。


「経済破壊と再生―――

 そのサイクルを自分たちの手で制御する、

 という事……ですな」


重苦しい空気が、部屋の中を支配する。

耐えきれないように、第一の眷属が口を開いた。


「で、でもおじい様……


 そんな事をして何の意味が?

 破綻した国への経済支援は各国がするんですよね?


 税金だって、商人である『枠外の者』も

 払うんですから―――」


「そ、そうです。

 巡り巡って、負担は自分自身に返ってくるんじゃ」


アルプの考えを補足するかのように、母である

ソニアが続けて語る。


それに対し、義理の父であり祖父が応える。


「『それ以上』の利益が出れば問題はあるまい。


 それに、税金は各国が負担するのだ。

 奉公労働者のオークションによる利益は独占で、

 負担は自分たちを含む全員に均等に分担されるので

 あれば、お釣りが来るだろう」


そして、老人がため息をつくと同時に―――

フラールにいる眷属から、意見が入ってきた。




│ ■アルプの家          │




「ですが、『枠外の者』は用心深いと―――

 それにシオニムさんも、彼らはあまり政治には

 関わろうとしないって」


その疑問に対する答えのように、貴族が引き継ぐ。


「やはり、『新貴族』が絡んでいるのはないかと

 推測します。


 それならば説明が付きますし、彼らに対する

 調査を一段と引き上げるべきでは―――」


「あの、バートレットさんがこうおっしゃって

 いますけど……


 あの、フィオナ様? 聞こえておりますか?

 フィオナ様?」




│ ■ボガッド家屋敷        │




バクシアにいる女神は、二番目の眷属である少年の

呼びかけに対し、ただ無言でうつむいていた。


目を閉じたまま、しかしその肩は小刻みに震え―――

それは祈っているようにも、怒りを表しているようにも

周囲の人間からは見えた。


「……フィオナ様。


 お気持ちはわかりますが、これが人間の世界と

 いうものです。


 どうか、お気を静めてください」


心配そうにフォローする老人のかたわらで―――

お目付け役である従僕は冷ややかな視線で見ていた。


「(いや、こりぇはただ単にシリアスな空気が

 長引いたので、限界が近いだけでしゅね)」


「? 何か言いましたか、ナヴィ様」


思っていた事が思わず小声で漏れていたのか、

アルプが不思議そうに聞き返す。


「あ、まあしょの、えーと。

 ちょっとフィオナ様がいっぱいいっぱい

 でしゅので、今夜はこのへんで」




│ ■アルプの家          │




「……わかりました、フィオナ様。

 では、神託はこれで」


「アタイは明日にでもルコルアへ戻って、

 ソルトとトニックにこの話してくるわ。


 ファジーはアルプさんが戻るまで

 留守番しててくれ」


二番目の眷属と姉が、女神に挨拶と今後の

方針を話す。


「ミモザさん、私も同行するわ」


「い!? いや、国に一時帰るだけだし、

 そんな気を使わなくても」


マルゴットの申し出に、ミモザは戸惑う。


「商人の私がいた方が、いろいろとはかどると

 思いますよ?」


「私が護衛に付くのがいいとも思うのですが……


 一度事件(ソルトとトニックによるファジー

 誘拐未遂)があったわけですし、全員で

 ルコルアに向かったらそれこそココが空に

 なってしまいますから」


マルゴットとバートレットが説得のように説明

する中、ファジーがおずおずと口を開く。


「んー、やっぱりアルプさんが戻ってくるまで

 待っている事は出来ないの?」


チラチラと姉の方を見る弟に対し、ミモザは

たしなめるように応える。


「情報は鮮度が命だ。

 忘れたわけじゃないだろ。


 大丈夫、すぐ戻ってくるって。

 それじゃそろそろ明日に備えて寝よう」




│ ■ボガッド家屋敷        │




「あ、あのフィオナ様……大丈夫ですか?


 顔が真っ赤で―――

 お怒りはわかりますけど」


一方その頃―――

バクシアにいる眷属は、フィオナの具合を

心配していた。


「少し休めば大丈夫でしゅよ(知恵熱だから)。


 今夜はぐっすりと寝て、明日になれば治って

 いると思いましゅので(知恵熱だから)」


そして従僕は、女神を抱えて彼女に用意された

部屋へと向かった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2704名―――




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