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07釘バットでピッチャー返し



「ハァハァ……ハァハァ……

 一晩中……一晩中……


 朝まで延長……朝まで延長……

 オプションを全部付けてもらって……

 大丈夫、大丈夫優しくするから―――」




―――(打撃音)―――


―――物語の一部に不適切な発言がありました―――


―――深くお詫びいたします―――




「皆様、私がサポートする女神は健全な青少年への

 配慮が欠けた発言をしたため、お亡くなりになりました」


「こんなクソ小説見に来るような読者が

 健全な訳ないだろいい加減にしろ!!」


「最悪の開き直りだよ!

 あと毎回思うんですが、この冒頭の茶番

 別に必要無いですよね?」


即座に復活する女神に対し、

サポート役は0.5秒でツッコミを返す。


「必要に決まっているじゃないですか!

 お弁当に入っている緑色の草型の仕切りくらい

 必要ですよ!」


「微妙に要らなくない?

 という訳で本編、スタートしますね」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




>>100


【 眷属の子? アルプだっけ。彼に働かせたら? 】



初めて自分が使用した『アンカー』、それを前に女神と

お目付け役は困惑していた。


「さあ最初の『アンカー』をどうしましょうっていうか

 どうしてくれようっていうかアタシは女神フィオナ

 職業は小学校の男子トイレの妖精―――」


「まず正気に戻れ。

 しかし、ずいぶんと現実的というか、

 ヒネリが無いと言いますか―――」



【 奴隷ENDじゃないだけ、

 まだマシじゃね? 】


【 動かせる駒がそれしかないんじゃ、

 そうするしか。 】




│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷  │




「アルプを働かせる……ですか。

 しかし、それは、何と言いますか―――」


「マルゴットも私も、彼をそういう事態に

 させないよう動いておりましたので、

 そうなると本末転倒に」


(ですよねーーーwww)


「で、でも……女神様にも考えがあっての

 事だと思います。

 きっと、何か眷属である僕にしか出来ない

 事とか―――」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




「何の考えもなく『アンカー』に丸投げした

 結果がコレだよ!」


「本当に何の考えも無かったのかよ!

 自覚してるのなら何とかしろや!!


 ただ現状、フリーなのは彼しかいないというのは

 事実ですし、何かさせるなら必然的にあの眷属に

 なるでしょう」



【 その眷属、まだ子供だっけ?

 なら悪い手じゃないと思うぞ? 】


【 そーそー。看板娘とか可愛い子とか、

 客寄せは商売の基本。 】


【 誰かお偉いさんの目に留まれば、

 同情を引けるかも知れんし。 】



「ムムム……ナヴィ、ちょっと神託カイセン繋いでくれる?」




│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷  │




「……僕が何かの売り子なる、

 という事でしょうか?」


「今のアルプは契約上、ウチの奉公労働者です。

 商売を手伝ってもらうのは問題無いのですが―――


 アルプ、あなた、果実や農作物以外の相場とか

 わかります?」


フルフル、と少年は首を横に振る。


「確かに年少者であれば警戒心を抱かせる事は

 ないでしょうが、相場を知らなければ今度は

 言いくるめられたりするでしょう」


「せめて果実があれば―――

 でも、今年はもう出荷が終わって

 いるのよね?」


少年はまた、フルフルと首を横に振った。


「えっ?」


「えっ?」


バートとマルゴットがほとんど同時に

反応し声を上げた。


「……出荷の準備は終わったのですが、

 今のフラール国だと売れない、って……


 それに、バクシア国の人と思われる商人が

 商談を取り仕切っていたのですが……

 バクシアに輸出するなら多少は売れるかも

 知れないけど、輸送費とか関税とかで―――


 20個で銀貨1枚なら、買ってやると

 言われました」


(アルプ? いつもならどのくらいで

 売れていたの?)


「高級品種でしたから、5個で銀貨1枚……

 売る時は3個で銀貨1枚が相場でした」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




「1/4ですか……

 そりゃえげつないですね」


「いつもは毎年各種果実を合計1000個ほど収穫し、

 それで金貨40枚ほどを得ていた、との事。


 それとは別に200個ほどキープして

 他の農家との物々交換に充てていたので、

 利益としてはカツカツですが、生活そのものは

 まだ楽な部類だったようです」


【 まあ売らなくて正解。

 売ればもっと相場がガタ落ちしてた。 】


【 商品の確保は出来たって事でいいのか? 】




│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷  │




「―――商品があるなら任せられそうです。

 それに……私もちょうど商談で、バクシア国へ向かう

 用事がありましたし。


 彼を奉公労働者の一人として連れて行きます。

 その時、商品も一緒に―――」


「アルプが新たに加わるのであれば、

 バーレンシア様に許可を取る必要がありますが、

 その時は私も同行しましょう」


「助かるわ。お願い―――」


(……ん? そういえばアルプ、マルゴットの

 奉公労働者って―――

 あの黄金の果実はどうしたの?)


「あ、あの果実は―――」


「……ああ、あの黄金の果実の事でしたら―――

 あれはちょっと扱いが難しく……


 今のフラール国では買い手を見つけるのは

 容易ではありません。

 ですので、他国でどう売るか思案中です。


 出来れば、あれは最後の切り札にさせてください」


「しかし、マルゴットも変わりましたね。

 最初は果樹園を諦めるよう、言っていたのに」


「あ、あれはアルプを保護してデュフフ♪

 ―――ではなく!

 私の屋敷から通うのは不可能と思ったからです。


 でも、今の彼は―――女神フィオナ様の眷属。

 危ない目には遭わないと確信しています。


 フィオナ様―――感謝いたします。

 どうか―――これからもアルプをお守りください」




│ ■日本国・フィオナの部屋 │




「ハッハッハッ、いやなに礼にはおよばんよ」


「黄金の果実すら売れていないという時点で

 現状およそ1ミリも役に立ってないって

 わかっているんですかくたばれ」


「ちょおっ!?

 何気に辛辣しんらつですよ!?」


「現実をはっきり把握しておいて頂かないと

 困りますから」


【 しかし、相場で売れたところで

 全部で金貨40枚か。 】


【 焼石に水だなー……

 何もしないよりはマシだけど。 】




│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷  │




「バクシアは商業国家です。

 首都で直接売れば諸経費を差し引いても、フラールよりは

 稼げると思います。


 奉公労働者を買い戻すにはとうてい足りませんが、

 千里の道も一歩より、ですね」


「……僕は、フィオナ様を信じています」


「アルプ……」


不安そうな表情を見られたと思ったのか、

バートが相槌を打つ。


「僕には、これが偶然と思えないんです。

 フィオナ様は全部おっしゃられていないだけで―――


 僕が今年の果実の出荷を諦めた事。

 マルゴットさんがバクシアへの商談を控えていた事。


 何だか―――全部つながっているような気がして。


 だから、だから、きっと―――

 向こうで、バクシアで何かが起きると、

 僕は信じています」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




「うへへへへ、ふへへ、おふぅううう……♪


 あんな可愛い子にここまで信じてもらって慕われて、

 それでも平静でいられる女性だけが、

 このアタシに石を投げなさい。

 全部ピッチャー返ししてやるから♪」


「どこから持ってきたのか知らんが

 その釘バットを早くしまえ。

 そして鼻血を拭いてください」


「―――では、次に備えましょう。


 ……それにしても『アンカー』……

 今度使う時は、もっと慎重にやらないと

 いけませんね……」


「どうしても、いざという時だけ

 取っておいて、

 それ以外は質問に留めておいた方が

 良いでしょうね」


女神とお目付け役は、お互いに同意して頷いた。




│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷  │




「―――アルプ、まだ神託はありそう?」


「んん……よくわかりません。

 いつも、フィオナ様からいきなり話しかけて

 くるような感じですので」


「じゃあ、日も暮れてきたし泊まっていきなさい。

 いつ来ても対応出来るように―――

 それに、バクシア国へ行く打ち合わせもしないと。


 バートさんもご一緒してくださるわよね?」


「―――仕方ありませんね。

 私がいないと、彼が襲われてしまいそうですし」


「失礼な。

 きちんと合意は取りますわよ?」


「??」


2人は意地悪そうにお互いに苦笑し―――

そしてポカンと2人を見上げる少年の表情が

残された。




―――3時間後―――




すでにアルプとバート、2人が寝入っている頃―――

マルゴットは一人書類に目を通していた。


そこにノックの音が聞こえ、彼女は入室を促す。


「―――お嬢様、失礼いたします。

 まだお休みにならないのですか?」


初老の執事らしき男性が、手にティーセットを携え

部屋に入ってきた。


「あなたこそ、こんな時間に来るなんて―――

 何かわかったようね」


テーブルの上にカップが置かれ、湯気と共に

お茶が注がれる。


淹れ終わると同時に、彼が口を開いた。


「やはり、お嬢様の危惧された通り―――

 『枠外わくがいの者』が絡んでいるようです」


「やれやれ、ですわ。

 でも―――それなら納得も出来ます。


 爺、今度やって来たバクシア国の代官との関係は?」


「申し訳ありません。

 そこまでは、まだ―――


 ただ身分はかなり高いようです。

 典型的な没落貴族、というところでしょうか」


「―――いいわ。どうせ近いうちに彼に会うから。

 自分の目で確かめます」


そこまで言うと、彼女はカップのふちに口を付けた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在241名―――


―――神の資格はく奪まで、残り41名―――




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