06・多分恐らくとてつもなくくだらない理由
一週間ぶりの更新です。
更新が週二から週一になりましたが、
仕事があるからかいつも完成は
更新日当日に(;'◇')ゞ
日本・とある都心のマンションの一室―――
テーブルに座り頬杖をつきながら、足元にいる
お目付け役(猫Ver)に、女神は聞いていた。
「何か最近、ヒロインなのにどんどんアタシの出番が
他キャラに圧迫されているような―――
R15かR18に行ってアタシが全裸になったら、
出番は果たして増えますかね?」
「いきなりメタ発言はおやめください。
後、言ったからには必ずやれよ?
絶対やれよ?」
テーブルの上に飛び乗り、念を押すように
ナヴィは返す。
「んー、でも全裸待機なら3章5話ですでに
やっちゃっているし……」
「そうでしたねそういえば実績と経験がありましたね。
もうヤダこの女神」
過去のフィオナの所業を思い出し、従僕は
うなだれる。
「しかし本当にどうにかなりませんかね。
アタシって出番があっても、ある時はオチ要員、
またある時は出オチ要員だったりしますし」
「フィオナ様、
適材適所という言葉をご存知でしょうか?」
「どーゆー意味?(超笑顔)」
その表情とは裏腹にピリピリした空気が張り詰め、
室内を支配する。
それを慣れた態度で受け流すナヴィ。
「そもそも、神様はあまり表立って動く事は出来ない
ものだと、ユニシス様・アルフリーダ様からキツく
言われているでしょう」
「まーそうなんですけどね。
あー、地球の世界で何か活躍すれば
出番増えるかなあ?
人間として神様の力を使わない方向で……」
「地球での人間のフィオナ様は、バン〇ムと
サ〇ゲの貯金箱以上の価値を見出せないの
ですが」
「失礼な!
最近はD〇Mゲームズの貯金箱も担当してますよ!」
「悪化してんじゃねぇか。
もう面倒になってきたので本編入りますね」
│ ■バクシア国・首都ブラン │
│ ■高級青果店『パッション』応接室 │
「あの―――
私が……ですか? メイではなく?」
指名を受けた少女はその理解に戸惑い、
眷属を通じて女神に質問を聞き返す。
「2択とはいえ、ポーラしゃんを選ぶとは
少々意外でしゅたが」
「僕も、です―――」
「フィオナ様、理由をお聞かせ願えませんか?」
お目付け役、そして先に眷属になった2人も
疑問を口にする。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
アルプの家で一人、フィオナは理由を問われ、
そこに至った経緯を思い出していた。
―――女神回想中―――
(ポーラさんを、ですか?)
【 そう。メイにすると『ずっとアルプ君と一緒に
います!』くらい言いかねん 】
【 ポーラならシモン一筋だし、アルプとファジーの
事で、行動が制限される事も無いだろ 】
『アンカー』に相談したフィオナは、いろいろと
意見を受け付け、また返し、整理していた。
(まあ、理屈はわかりますけど―――
でも逆に言うと、ポーラには眷属になる動機と
メリットがメイより薄いわけでして)
【 そこで、眷属になるメリットの出番だ 】
(どういう事ですか?)
【 シモンが言ってたろ。
豊穣の女神の眷属はステータスにもなるって。
だけどシモンは、アルプやファジーのように
動き回れないっつって断ったわけだ。
そこでな……】
―――女神回想終了―――
「……まず、メイさんについてですが、
アルプへの好意はアタシは関知しません。
それもまた、人間同士の関わり―――
ですが、眷属になればそれなりに、行動が
制限される事も考えられます」
│ ■高級青果店『パッション』応接室 │
「まあ、そういう恐れがあるから俺は辞退
したんだけど」
シモンが頭をかきながら会話に入る。
「一緒の眷属になる、すなわち離れ離れになる
シチュが多くなるってのはね……」
メイが複雑そうに、シモンの言葉に続く。
「……消去法で、私という事でしょうか。
いえ、別に不満があるわけではありませんが」
ポーラが不安気に女神への質問を重ねる。
│ ■アルプの家 │
「―――いいえ。
貴女を選んだのは、きちんとした理由があります。
ですが、それは貴女自身にだけ伝えたいのです。
それは眷属にならねば、聞かせる事は
出来ないのですが……
受けるかどうかは貴女が決めてください。
これについては、質問はしないで―――」
│ ■高級青果店『パッション』応接室 │
「―――と、なかなか大仰な事を言っていましゅが、
どうしましゅ?
どうせたいした理由があるとは思えないのでしゅが」
女神からの神託を、くだけた様子で伝えるナヴィ。
人差し指を額にあてつつ、困惑しながらポーラは
考え込む。
「あ~……その、ウン。温度差が……
―――わかりました。
ポーラ・ネクタリン……
眷属になる事をお受けいたします。
そして、お聞かせください。
私がフィオナ様の眷属に選ばれた理由を―――」
│ ■アルプの家 │
「……貴女を、アルプ、ファジーに続く、
第三の眷属と認めます。
そして、お話ししましょう。
貴女を眷属に選んだ理由を―――」
│ ■高級青果店『パッション』応接室 │
「……ん。神託が切られましゅた。
どうやらここから先は―――
フィオナ様とポーラしゃん、お二人だけで
話す事になりましゅ」
「は、はい……!」
緊張気味に両肩をこわばらせ、それを不安そうに
妹と眷属2人が見守る。
「(ポーラ姉さまに、だけ……?)」
「(ファジー君、ポーラさん本人にしか
話せない理由って何だろう……?)」
「(ボクたちとは違う、特別な理由が……?)」
小声で会話する中、そこにお目付け役と
店の主人も加わる。
「(私はフィオナ様を信じていましゅ……!
多分恐らくとてつもなく絶対にくだらない
理由である事を……!)」
「(ある意味、信頼を超えてブランドだな……)」
応接室の空気がいろいろな意味で張り詰める中―――
当人同士だけで神託がつながれる事になった。
│ ■アルプの家 │
「……ポーラ。これから話す事は、アタシと
貴女にしかわかりません」
(は、はい)
全神経を耳に集中して、ポーラは神託を受け止める。
「今、眷属であるアルプやファジーは、アタシが救った
人間であり―――
その過程で彼らは、眷属となる誓いを立てました。
ですが、貴女やメイさんはそれとは異なります。
アルプやファジーを助けてくれた事はあっても、
アタシが貴女たち姉妹を助けた事はありません」
(そ、そのような事など)
「いかに神の身とはいえ、一方的な使役など
許される事ではありません。
メイさんを選択から外したのは、彼女にさらに
負担を強いてしまうと思ったからです。
そして、聞くところによると、貴女は
シモン君一筋―――
それに相違ありませんね?」
(は、はい……はい?)
いきなり身近な質問が女神から飛んできた事に、
間の抜けた声が出てしまう。
(あの、それと眷属になる理由とどのような関係が)
「当初、シモン君も眷属候補の1人でした。
豊穣の女神の眷属―――
それは彼にとっても光栄であり、ステータスに
なると……
ですが、すでに彼の店はアルプやファジーの作った
果実を売る重要なルートであり―――
また店の跡取りとして、おいそれと動き回る事は
立場上許されません。
それで彼は泣く泣く、眷属を辞退したのです」
(そうだったのですか……)
都合良く事実を深刻そうに作り変え、女神は
話を続ける。
「アタシの目から見ても、彼はかなり有能であり、
この世界の協力者としても欠かせない存在です。
そして、アルプやファジーが来る前でも、
あの店は人気があったのではないですか?」
(鋭いですね、女神様―――)
「ちなみに貴女のように、シモン君目当ての
客は―――未だに根強くいると推測します」
(……はい。他の大人が言わないのであれば
私が言います。
シモン君は一番人気……!
この認識を間違うヤツは別に間違ったままで
良いのです。
競争率減るから……!)
「そして、貴女はアタシの眷属となりました。
シモン君が泣く泣く諦めたステータスを、貴女が
持つ事になったのです。
―――高級青果店『パッション』の跡取り、
その妻候補として……
競争相手に圧倒的なアドバンテージを持つ事に
なるでしょう。
この『恩恵』は眷属となるに十分な価値があると
アタシは思うのですが」
(なるほど……
悪くない取引き―――いいえ。
十分な報酬と思われます)
│ ■高級青果店『パッション』応接室 │
そして、眷属2人とお目付け役、店主が
固唾を飲んで見守る中―――
新たに眷属になった彼女が口を開いた。
「……お話はわかりました。
様々な状況を鑑み―――
あらゆる苦難と困難に打ち勝ち、万難を排し、
必ずやフィオナ様に勝利をもたらす眷属と
なりましょう」
周囲の空気を歪めるような気配をまとい、
決意表明にも似た言葉を話す彼女に、妹と
眷属2人は姿勢をただす。
「ポ、ポーラ姉さま……っ」
「い、いったいポーラさんにどんな使命が……」
「ボクたちとは違う、何かを感じます……っ」
それとは別の反応を、店の跡取りと神の従僕は
小声で語る。
「(な……何かよ。妙な気合いというか
個人的なプレッシャーを感じるんだが)」
「(あー、理由は多分そこらへんにあるでしゅね)」
こうして―――バクシアにおける新たな、
そしてアルプ・ファジーに続いて3人目の
眷属が誕生した。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在2683名―――