04・フィオナ様のくせに
一週間ぶりの更新です。
花粉症なのか咳が酷い(;´Д`)
日本・とある都心のマンションの一室―――
部屋の主である女神・フィオナと、その母である
アルフリーダが、天界越しに会話をしていた。
「ママ、またこっちに来てたんでしょ?
今度は何の買い物?
まあ、この国は面白い物が多いから
仕方ないと思うけど」
『あら、買い物ばかりじゃないわ。
いろいろな事にもチャレンジしているんだから。
ちょうど今、ラクロスっていうのにハマって
いるのよ。
だから天界で仲間増やしていこうかなって』
「ええええっ!? ママすごい!
そんな事も出来るんだー!」
その言葉に、興奮気味で娘が飛びつく。
『ちょっと、おおげさよ。
そんなにスゴい事でも何でも―――』
「だって、踊ったり歌ったり可変戦闘機に乗ったり
するんでしょ!?
今度アタシもいっしょに乗せてください!!」
『うん、フィオナちゃん。
あなた今とんでもない勘違いをしているから
落ち着きなさいね』
―――アルフリーダ説明中―――
「え? あー、はい。
スポーツのラクロスですよね知ってましたよ?」
『盛大な別方面への思い込みをしていたと
思うんだけどまあいいわ。
それじゃ、そろそろ本編スタートしましょう』
│ ■バクシア国・首都ブラン │
│ ■高級青果店『パッション』応接室 │
「えっと……」
「ご迷惑をおかけしました」
ポーラ・メイとミモザとのファジーをめぐる攻防戦が
ナヴィとバートレットの介入により沈静化した後―――
姉妹は大人しく席に着いて反省の態度を示していた。
「……ったくもう。
だいたい、アンタらはアルプさんにご執心じゃ
なかったのかよ」
「そ、それはもういいからっ」
ミモザが悪態をつき、それを当事者である弟が
たしなめる、いつもの流れ―――
「アルプ君ラブなのはメイよ?
私はシモン君一筋ですから」
「そういう事を聞いているのではないのでしゅが」
「つーかじゃあ何でファジーを付け狙うのさ」
ポーラの発言に、ナヴィとミモザがツッコミ返す。
「え? だって美味しい物は別腹というでしょう?」
メイの言葉にミモザは呆れるように押し黙り、
続けてマルゴットが会話を継続する。
「……アルプ、嫌なら嫌ってハッキリ言って
いいんですからね」
「あ、あはは……」
「…………」
彼女の言葉に、アルプは困ったような微笑みで―――
バートレットは無言で苦笑していた。
「話を元に戻そう。
で、新たな眷属って事なんだけど……
アンタら2人のうち、どちらかじゃダメなのか?
俺としちゃ今イチ不安だけどさ。
条件としてはピッタリだと思うんだが―――」
シモンが、ポーラとメイ、姉妹を交互に視線で
行き来しながら話す。
「メイ、あなたはどうなの?
アルプ君と一緒に眷属になれるチャンスよ?」
「ポーラ姉さま、私としても願ってもない話だと
思いますけど……
でも、ご神託でしたっけ?
あれをするには、眷属がそれぞれ離れていた方が
いいんですよね?
一緒にいられないというのは、その」
姉妹の答えに、マルゴットとバートレットが考え込む。
「用途としては、まあ、そうなりますわ」
「遠い場所にいてこそ、威力を発揮する手段
ですからね」
それだと話が違う―――
という事を、隠さずに表情で表に出すメイ。
そこへ、ナヴィを通じてフラールから
神託が下された。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「まあ、まだ選定中で確定事項というわけでは
ありませんので―――
無理強いもしませんから、ここは一度
家に帰って、ゆっくり考えてみては
どうでしょうか」
│ ■高級青果店『パッション』応接室 │
「―――と、フィオナ様はおっしゃって
おられましゅが」
フラールからのフィオナの言葉を、そのまま姉妹へ
伝えるナヴィ。
「……そうですね。お父様やお母様にも
相談しなくては」
「では、また後日―――
お伺いしますわ」
席を立って一礼すると、姉妹は応接室から退出し、
そのまま店の外へと去っていった。
「(フィオナ様にしてみれば、ずいぶんと対応が
普通でしたね)」
(してみればって何ですか。
もちろん、その間にママに眷属の追加条件
聞いておいてね♪
っていう時間稼ぎもありますけど)
「(失礼。フィオナ様のくせにずいぶんと対応が
普通でしたね)」
(何で言い換えたんですかー!
だーかーらー!
何でナヴィはいつもそういう……!)
「あ、あのさ。
どうかしたかい? ナヴィ様」
フィオナと神託を通じていたナヴィを心配して、
ミモザが声をかける。
「あ、いえ。何でもないでしゅ。
それじゃシモン君、手伝うでしゅよ。
そろそろ店が開きましゅよね?」
「お、もうそんな時間か。
じゃあ、久しぶりに手伝ってくれ」
シモンの言葉に、眷属2人も応える。
「あ、じゃあ僕も」
「ボクも手伝います、シモンさん」
それを見て―――商人と貴族も身支度を整え始めた。
「じゃあ、私たちはこれで。
戻るまでアルプ、ナヴィ様、ファジー君をお願い」
「どこ行くんだい? お嬢」
マルゴットより先に、バートレットがシモンに
返答をする。
「『枠外の者』について―――
まだ情報を集めているので、それを聞きに。
相手の動きをつかんでおくのは重要ですし、
気になる事も追加でありますので」
「えっと……アタイは?」
困ったような顔でミモザが周囲の人間を見渡す。
「もちろん、私たちについてきてもらわないと。
情報屋としての意見も聞きたいですし。
ここでファジー君と一緒に手伝いしたいのなら
それでもいいですけど」
「あー、そうなると、シモンさん、ナヴィさん、
アルプさんとファジーと一緒にここで……
ちょっと致死量に達しているから遠慮するわ」
「それがいいでしょうね」
マルゴットとミモザの会話を聞いて、理解出来ない
弟が聞き返すように疑問を口にする。
「?? ちしりょう?」
「あ、いや。気にしなくていいから。
んじゃ、頑張って手伝うんだぞ、ファジー」
「ウン!」
(あー!! あああー!!)
「(諦めてください。
ここにあなたの居場所はありません)」
フィオナの叫びにならない叫びをナヴィは
聞き流し―――
店の準備作業をし始めた。
そうして彼らは夕方過ぎ、それぞれの仕事を終えて
ボガッド家に集う事になるのだが―――
アルプ、ファジー、ナヴィの3人の合計戦闘力は
すさまじく、店の1日の最高売上を更新したのは
言うまでもない。
│ ■ボガッド家屋敷 │
「……という事がありまして」
「シモンさんのお店を手伝うのは初めてでしたけど、
あんなに忙しいなんて」
「最後の方、シモン君が涙目になってましゅたからね」
店の売上に貢献した眷属2名とナヴィは、夕食の後の
お茶がてら、今日の出来事を話していた。
「そんなにすごかったのですか?」
「私とマルゴットは所用のあと―――
直接ボガット家に向かいましたので、
よくわからないのですが」
商人と貴族が若干困惑しながら報告を聞き、
その時の状況が2人目の眷属の姉から語られる。
「アタイがファジーを迎えがてら、お店に行った時、
『在庫があぁああ』『また親父に泣かれるうぅう』
って叫びが聞こえたからね。
―――にしたって、ナヴィ様とファジーまで
接客に出てたのかい?
裏方をやっていた方がよかったんじゃ……」
「あ、あのっ。ナヴィ様もファジー君も、当初は
店の奥の方や倉庫で、商品の補充とかを手伝って
もらっていたんですが―――
ポーラさん、メイさん姉妹が宣伝してくれた
みたいで、2人も接客対応に追われるように……」
ミモザの疑問にアルプが応え、周囲からは苦笑や
ため息が漏れた。
「ははは、有難迷惑というところか」
「それにしても―――
売れ過ぎて困るなんて、面白いものですね」
老夫婦が、苦笑しながら感想を述べる。
「女神の眷属が2人も、さらにそのお供まで
いらっしゃるのですから、無理もないかと。
ところで、ビューワー様とグラノーラ様は
どのようなお話を」
アルプの母、ソニアが話題を変える。
「『枠外の者』について調べていたのですが―――
今のところ目立った動きはありません。
『新貴族』についても、まだ手探り状態ですね。
せっかくバートレットさんにも来て頂いたのに」
「遠縁の伝手である貴族から話を聞いてみたのですが、
噂レベルを超えたものはありません。
そもそも、バーレンシア侯爵をして手を焼いている
みたいですので、私程度ではとても」
「伯爵様や侯爵様でダメなら、どうしようもないよ。
一番いいのは本拠地―――上位3ヶ国で調査してくる
事くらいだと思う」
ミモザが伯爵の弱音にも似た事実の言葉に対し、
現実的な対応を提案する。
その横で、難しい話が続いたからか、アルプが
思わずあくびをかみ殺していた。
「んん……」
「ふわぁ……」
それがうつったのか、ファジーも小さく口を開ける。
「今日は疲れたでしょう?
でも、ちゃんとお風呂に入ってから寝なさいね」
「ファジー、ほら。
待っている間に眠っちゃダメだぞ」
それぞれの保護者が、心配しつつ彼らを席から
立たせる。
「クレア、一緒に全員で入ってきたらどうだ。
5人くらい入れるだろう」
「そうですわねえ。
それじゃ、お先に頂きますわ」
老夫婦の言葉にミモザとファジーは困惑するが、
アルプの母と祖母がそのまま押していくようにして
部屋を出ていった。
「さて、こちらは―――
もう少し、今後の方針を練るとするかの」
初老の男の言葉に、貴族と商人はうなづいた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在2656名―――