表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/402

03・呼びませんでした

一週間ぶりの更新です。


今週も何とか出来ました(・∀・)ノシ



日本・とある都心のマンションの一室―――


お目付け役の猫・ナヴィは毛づくろいをしながら、

スマホに集中する女神フィオナに話しかけた。


「そういえば、ルコルアの鉱山って結局

 どうなったんでしたっけ」


スマホから一瞬顔を上げ、また画面に戻して

フィオナが応える。


「んー、元鉱山主のワインさん雇って、引き続き

 運営してもらう事になりましたよ。


 確か、スタウトさんが鉱山経営見習いとして、

 補佐役についたとか」


「地元の人にやってもらうのが一番いいでしょうね。


 それはそうと―――

 もう瓦礫って片付いたんですか?

 アレがそのままなのはマズい気が……」


縁浅からぬ円筒形の物体を思い出し、

それをフィオナに問い質す。


「ぱんつぁーふぁうすと君のこと?


 もうパパが回収したって言ってました。

 さすがに、あっちの世界には残せないって」


「まあ、そうでしょうね。


 ファジー君は悲しむでしょうけど……」


「男の子は、涙を乗り越えて強くなるものよ」


「そんな理由の涙はイヤですね……」


「何を言っているの!? 尊いのよ!?

 そして美味しいに決まっているのよ!」


「そこで味覚に言及するのがわからないしわかりたくも

 ないのですが。


 まあ、そろそろ本編入りましょうか」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「はぁ」


夜になって、アルプの家で一人―――

女神・フィオナはため息をつく。


(どうしましたか?)


そこへ、サポート役のナヴィから神託カイセンを繋げられる。


「いえ、何ていうかヒマで……

 食事もアルプのお母様が用意していってくれたのを

 温めるだけでしたし」


(ヒマならヒマで、新たな眷属をどちらにするか

 決めていれば良かったでしょうに。


 それで、シモン君とバーレンシア侯爵、

 どちらをバクシアの眷属に選ぶのですか?)


フィオナは前回、バクシア側でどちらにするのか

盛り上がっていた事を思い出した。


「そういえば、そっちではどうなったんですか?」




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




ボガッド家で与えられた一室で、ナヴィが女神の

質問に応える。


「アルプ君とファジー君は―――

 歳が近いからかも知れましぇんが、

 シモン君を希望していたでしゅよ。


 ローンしゃんやマルゴットしゃん、

 バートレットしゃんは、バーレンシア侯爵を

 押していましゅた。


 こっちは、政治的に便宜べんぎを図れる範囲が

 大きいから、でしょうね」


(それで、結論としましては?)


「最終的には―――

 女神、フィオナ様の御心みこころのままに、

 という事でしゅた」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「えぇ~……

 そーいうの苦手なんですよねえアタシ」


(お前の眷属だろ何とかしろよ。


 それ以前に、眷属を増やす方向でいくのは

 いいんですが、大丈夫ですか?)


「?? 何が?」




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「何が、ってでしゅねえ……


 アルプ君の時はアルフリーダ様が、

 ファジー君の時は信者数がMAXの8割という

 条件を満たしましゅたが。


 もう1人増やすにあたっての条件は

 達成しているんでしゅか?」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「あー、え? で、出来るんじゃなかったっけ……


 多分」


(何とも頼りないですねえ。


 それは後ほどアルフリーダ様に確認して

 おきましょう。


 今回は決定ではなく、眷属候補の選定と思えば)


「で、ですよねっ。

 それで、どちらを選ぶかなんですけど」


(まあこの場合―――

 候補を選ぶだけで、どちらでも何とか

 なりそうですし。


 久しぶりに『アンカー』に頼ってみては)


「お、そうですね。

 ではちょっと聞いてみますか」


そこでフィオナはバクシアとの神託をいったん閉じ、

地球、自分の部屋のPCを通じて『アンカー』たちへ

語り掛ける事にした。



【 ん? 今度はなんだ? 】


【 あー、前に一回やった眷属決めか 】


【 今回はバクシア限定か? 】



「そ、そうです。

 それでですね、今回は2人、候補という事で―――

 シモン君かバーレンシア侯爵のどちらかを」


フィオナが条件を設定しようとすると、不意に

意見が割り込んできた。



【 あー……でも今回は、ちょっとなあ 】


【 状況が違うってゆーか…… 】



「?? なんですか?」



【 アルプもファジーも、比較的フリーなんだよ 】


【 これまでの眷属みたいに使えるかっていうと 】



「どういう意味ですか?」



【 まあ、とにかく当人の意志の確認を取ってみれば? 】


【 眷属もお目付け役もバクシアにいるんだしさ 】



「んー……まあ、そうですね。


 取り合えず、シモン君の意志も聞いてみましょう」


そこでフィオナはナヴィに神託で『アンカー』と

話し合った内容を告げると―――

翌日改めて、まずシモンに相談する運びとなった。




│ ■高級青果店『パッション』応接室 │




翌朝―――

アルプ・バートレット・マルゴット・ナヴィと、

ファジー・ミモザ姉弟は、シモンの店を訪れていた。


「何かずいぶんとお客さんが多いな。

 お嬢、何かあったのか?」


まずは長年の顔なじみであるマルゴットに、

シモンは来店した目的を問い質す。


「安心して。別に悪いことが起きたわけじゃ

 ないから。


 実は―――」


彼女は、まず新たな眷属となったファジーと

その姉ミモザとの顔合わせ、そしてバクシアに

おけるフィオナ様の眷属候補に、シモンが

上がっている事を告げた。


「俺が!? フィオナ様の?


 ……いや、そりゃ確かに光栄な事だと

 思うけど……」


「え? い、イヤなんですか?」


歯切れの悪い答えは想定外だったのか、思わず

アルプが聞き返す。




「落ち着け、そうじゃない。


 もちろん青果店の跡継ぎの俺にとって、

 フィオナ様の眷属って話は魅力的だし

 何よりステータスになる。


 ただ―――

 俺にアルプやファジー君と同じマネが

 出来るかっていうとなあ」


「話がよく見えません。

 身体的な能力なら、別段劣っている事も

 ないと思うのですが」


バートレットが、シモンの懸念を払拭ふっしょくするように

質問を返す。


「立場的なモン、っつーかな……


 俺、この店からほとんど動けないんだけど。

 それでもいいか?」


(んー、どういう事でしょう、ナヴィ?)


神託を繋いでいた女神が、サポート役を通して

疑問を投げかける。


「ふみゅう。

 確かに、ファジー君と比べれば―――

 自由行動はそれほど出来ないかもしれませんが……


 しかし、アルプ君だって今や果樹園で人を雇う

 立場でしゅよ?

 彼とあまり違わないのでは」


ナヴィの質問に、シモンは困ったような顔をして

応える。




「でも、話を聞いている限りでは―――

 ルコルアやバクシアへ行き来したり、ファジー君と

 一緒に潜入調査までしているだろ?


 俺の場合、跡継ぎって事もあるし、俺がいなけりゃ

 店が回らない部分もちらほらと出てきているんだ」


「つまり、あちこち出かけたり、フィオナ様と一緒に

 他国へついて行くって事は出来ないってわけかい」


ミモザが補足するように会話に入ってくる。


「それに、この店の目玉商品である

 アルプの果実は、俺が管理担当しているし、

 最近はファジー君のところで獲れた果実も

 扱い始めたから、結構忙しいんだよ」


「……確かに、そのルートに支障をきたすわけには

 いかないですね。


 でもそうなると―――

 もう1人の候補、バーレンシア侯爵様は……」


マルゴットが途中で止めた言葉を、

バートレットが引き継いだ。


「余計、難しいでしょうね。


 彼は立場上フラールに釘付けですし、

 そうおいそれと他国へは行けません」


(ムムム……)


一人フラールでうなる女神。

それを知ってか知らずか、シモンは諦め気味に

提案を投げる。




「誰かいりゃいいんだけどなあ。


 ある程度自由があって、それでいて―――

 立場的にあまり拘束もされていないで動ける……

 しかもフィオナ様の事情も理解していて……


 でもそんなヤツ、どこに―――」


そこへ、黄色い掛け声と共に女性が2人、

姉妹が店に入ってきた。


「何か呼びませんでしたか?」


「呼びませんでした」


ポーラの問い合わせに対し、0.5秒で

回答するシモン。


「あれ? おかしいですわねえ。

 呼ばれているような気がしたんですけど」


「それよりわたくしの美少年感知シックスセンスがビンビンに

 反応しているんですけど、アルプ君とナヴィ様、

 ビューワー様も来ておられますよね?

 さあさっそく濃いサービスを」


その時、ポーラ・メイ姉妹は時間が止まったように

微動だにせず、視線だけで訪問者を一巡し、状況を

把握する。

そして一点を見つめたまま言葉を発した。




「もしかして、あなたは……」


「ファジー君……?」


瞬間移動のようにファジーの前にダッシュで

駆け寄り―――

同時にミモザが彼を後ろに隠しガードする。


「あなたが話に聞いていた逸材ね!?」


「お前らが話に聞いていた姉妹ヘンタイか!!

 見るな触るな近付くな!!」


いきなり発生した修羅場に、周囲は困惑し―――

我を取り戻したナヴィとバートレットが彼女たちを

引き離すまで、混乱は続いた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2588名―――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ