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01・新貴族

4章スタートです。

我ながら結構続いているなあと感心(;´Д`)



日本・とある都心のマンションの一室―――


部屋の主である女神・フィオナと、そのお目付け役

ナヴィ(猫Ver)が対峙していた。


「アタシは強烈な反対と不満を

 表明するものであります!」


「被告人、意見を認めます」


フィオナの言葉を、ナヴィは冷静に受け止め

対応する。


「前回、3章の最後でアタシがあんな扱い

 だったのは納得がいかず、やり直しを

 要求するものであります!!」


「却下。

 あの扱いは被告人の普段の言動から見て

 極めて妥当であり―――

 被告人の要求は不当なものだと判断します」


「イヤァアアアア!!」


「それでは、そろそろ本編入りますね」




│ ■フラール国     │




「はぁあああぁあ~……」


フラール国・バクシア代官館―――


そこの主であるレンジ・バーレンシア侯爵は、

深いため息と共にテーブルの上に顔を沈めた。


「お疲れ様でした、侯爵」


そんな彼に、バートレットが気遣う言葉をかける。


他にも、アルプ、その母であるソニア、マルゴットと

いった面々が揃っていた。


「あ、あの侯爵様―――

 今果物をお持ちしますから」


アルプとソニアがいそいそと厨房へと消え、

後には貴族2人と商人が残される。


「……合同とはいえ、とてもこの国の式典とは

 思えない規模とレベルでしたからね」


マルゴットが、慰めるようにテーブルに突っ伏したままの

バーレンシア侯爵に話しかける。


「……フラール国跡継ぎと、バクシアからは

 王こそ来なかったものの、その妹君いもうとぎみの娘、

 フラウア様が王族代表として来られ……


 ああ、僕の胃のスペアがあと何個あればいいと

 思った事か……アハハハハハ……」


フラール国へバクシア国代官としてやってきた彼は、

その両国への貢献が認められ―――

この度、表彰される運びとなったのだが……


彼に取ってはかなりの重圧だったようで、

その式典をやり遂げた後、抜け殻のように力なく

五体を重力に任せていた。




「ですが、バーレンシア侯爵様の功績からすれば、

 今回の表彰は当然ですわ。


 侯爵の代官権限―――その商売の取り分が2割と

 知られた途端、我が国に来ていたバクシア商人も、

 横暴な振る舞いをしなくなりましたし」


「それに、バクシアへの批判も収まりつつあると

 聞きましたよ。


 それらは皆、侯爵の働きによるものです」


フラール国の貴族と商人から称賛を受け―――

ようやく彼は頭だけを上げる。


「正直、どうしてこうなったのかは

 自分でもわからないんだけどねぇ」


そこへ、果物を切り分けたお皿を持って、

2人が戻って来た。

そしてテーブルの上に置きながら、少年と

その母親が彼に声をかける。


「バーレンシア侯爵様は、もっとご自分の事を

 誇ってください」


「バクシアのフラウア様も仰っておりましたよね?


 『貴方のフラールでの仕事ぶりを見れば、

 誰が我が国を非難するでしょうか』って―――」


「まあ、僕のような下級の貴族の身分からすれば、

 今回の件は身に余る光栄ってところかな。


 その身がそろそろ壊れそうだけど……」


「…………」


その言葉に、バートレットが不思議そうな顔をして

考え込むような表情になった。


それに気付いたのか、首ごと彼に視線を向ける。




「どうかしたのかな? ビューワー君」


「いえ、その―――

 バーレンシア様は『侯爵』ですよね?


 以前も確か、ご自分の事を下級貴族と

 言っていた記憶がありますが……


 でも身分としては、決して下級とは思えません。

 『伯爵』である私よりも上のはず……」


バートレットの返答を聞いて、今度はバーレンシアが

考え込むような表情になる。


「ああ、ちょっと自虐が過ぎたようだね。


 確かに、『従来』の貴族の中では、

 僕の地位はそれなりに高いんだけどさ。


 ビューワー君は聞いた事あるかな?

 『新貴族』って―――」


それを聞いたフラール国出身者は、

それぞれ顔を見合わせる。


「『新貴族』??」


「やっぱり知らないか。

 まあ、バクシアでもここ数年の間に

 台頭してきた勢力だからね」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




同じ頃―――

アルプの家で待機していた女神とお目付け役は、

ミモザ・ファジー姉弟から式典の話を聞いていた。


さすがに神の身で公の行事に参加する事は

ナヴィが止めたため、留守番という形に

なったのである。


「―――な感じでしたね。


 バーレンシア侯爵様がガチガチに緊張してて、

 見てるこっちの方がたまらなく不安になりました

 けど……」


「しっかし、あの侯爵様が出てきた途端、

 歓声がすごかったな。

 ホントに人気あるんだねえ、あの人」


2人の話を聞きながら、フムフムとうなづく

フィオナとナヴィ。


「しょういえば―――

 どうしてお2人だけ先に戻ってきたのでしゅか?」


「アルプさんとソニアさんはボガッド家の名代みょうだいとして、

 バートレットさんとマルゴットさんはフラール国の

 主要関係者として、一度バクシア代官の館に

 寄ってから帰ってくるって」


「多分簡単な挨拶だけで、すぐ戻るって

 言ってました」


「まあバーレンシア侯爵のところなら

 問題は無いでしょう。


 帰ってくるまで待つとしますか―――」


そして、時間にして2時間ほど後―――


日も暮れかけた頃に、ようやく4人は果樹園に

戻って来た。




「お、遅くなりましたっ」


「申し訳ありません。

 フィオナ様、ナヴィ様―――


 もしよろしければ、すぐお食事の用意を

 いたします」


果樹園の主である母子が戻ると同時に、

謝罪の言葉を話しながら慌ただしく動く。


「い、いえ。

 お腹は大丈夫ですけど……


 すぐ戻って来ると聞いていましたので―――

 バーレンシア侯爵の館で、何かあったのですか?」


すると、アルプとソニアの後ろからバートレットと

マルゴットが姿を現し、代わりというように会話を

引き継ぐ。


「何か、というほどの事ではないのですが」


「少し気になる事を言われましたので、

 フィオナ様もお耳にも入れておいた方が

 いいと思いまして―――」


神妙な面持ちの彼らを見て、場を和ますためか

ミモザが口を挟んだ。


「まあ、何か食いながらにしようよ。

 小腹も空いているだろ?


 軽めの物でも作るからさ。

 ファジー、手伝ってくれ」


「あっ、ハイ」


5分ほど後―――

軽食よりも簡素な、しかし温かい料理がテーブルに

運ばれ、それを囲むようにして8人が席に着いた。




「……ふぃんきほく?」


「口に物を入れたまましゃべるなでしゅ。

 このダ女神。


 しかし、初めて聞く名前でしゅね。

 何者なのでしゅか?」


「私たちも、バーレンシア侯爵様の館で

 初めて聞かされました」


「少なくともフラールでは聞いた事は

 ありません」


ソニアとアルプが率直に語り―――

それを受けてか、ルコルアの人間が

その答えに追加する。


「アタイの国でも聞いた事ないなあ。


 ―――で、何を持って『新』なんて名乗ってんだい?

 新しい階級でも作ってんの?」


貴族であるバートレットから、それに対する

答えが発される。


「侯爵の話では―――

 貴族である事に違いは無いようです。


 ただ、生まれ持った地位で評価されるのではなく、

 その者が何をしたか、実績のみが評価される―――

 という勢力だという事です」


「実力主義って事ですかね?


 それに対して、バーレンシア侯爵が自虐的に

 なってたんですね」


「まあ、苦労人みたいでしゅし、気持ちはわからない

 でもないでしゅけど……」


フィオナとナヴィの言葉に、バートレットは

苦笑しながら言葉を続ける。




「……どうでしょうか。


 本当にその連中が実力主義というのであれば、

 貴族の地位も捨てて―――

 自分だけの力とやらで、能力を世に問えば

 いいだけの話です。


 そもそも、貴族の家に生まれた時点で、ある程度の

 アドバンテージは平民よりあるわけですから」


イスに深く腰掛けるようにして、上を向きながら

ミモザが感想を述べる。


「んー、しょせんは貴族のお遊び―――

 仲間内でのなれ合いってヤツ?」


「単に、そういう事であればいいんですけど……


 上手く言えませんが、性質というか―――

 『枠外の者』と似通っているような気がしまして」


マルゴットが補完するかのように、こちらへ

話を持ってきた理由を語る。


「ふみゅう。確かに、『実力主義』と称して、

 やりたい放題している可能性もありましゅからね。


 調べてみましゅか、フィオナ様―――」


「ほうでふね。

 まふはぶぁくしあへひって……」


「だかりゃ口に物を入れたまましゃべるなでしゅ。

 このダ女神」


こうして、まずはバクシアで情報を収集する

運びとなった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2558名―――




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