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30・変態は変態を知る

今回で3章が終わります。

4章へ続きますが、さてネタをどう

考えるか……( ̄▽ ̄;)



│ ■ラムキュール・ジン屋敷   │




すでに日が落ち、火の光が暗闇を照らす頃―――

ナヴィ(人間Ver)は屋敷の庭まで潜入していた。


そして、かつてフィオナの眷属を通じて得た

情報をもとに、ある部屋を目指して外側から

窓へと飛び上がった。




│ ■ラムキュールの部屋     │




屋敷の主の部屋の中で―――

彼と一人の女性が対峙していた。


2人とも落ち着いた口調だが、それとは裏腹に

張り詰めた空気が空間を支配する。


「それでぇ?

 どうするの?」


「どうしようも無い。

 計画の修正許容ラインを超えている。


 全く目を付けていなかった鉱山―――

 そこが一気に、しかも私の所有する鉱山と

 同等かそれ以上の価値になった。


 年内は計画通りに進むだろうが、今年の採掘量が

 発表された時点で詰むだろうな」


シンデリン・トーリは立ったまま―――

そしてラムキュールはイスに腰掛け、片足を組みながら

お互いに視線を合わせる事なく話していた。


「(……フィオナ様、聞こえますか?

 これってやっぱり……)」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「そうですね。

 やっぱり私たちが所有した鉱山について、でしょう」


神託を通じ、他の眷属や女性陣もうなずく。


「たった数日の事なのに、もう耳に入っちゃって

 いるんですね」


「まあ敵さんも情報収集していただろうしな」


姉弟が感想口々に感想を述べ、

その言葉に対しフィオナが疑問を口にする。


「そういえば―――

 ソルトさんやトニックさんの姿が見えない

 ですけど……」


「え、ええ。

 ここ数日は動きはないと思って、彼らには今

 鉱山の労働力確保のために求人に回ってもらって

 いるんです。


 申し訳ありません……」


「いえ、謝るような事では―――


 それに動きと言っても、どうも諦めるような

 感じですし」


(そうですね。

 少なくとも、事が上手く運んでいるような

 印象ではないです)


ナヴィを通じて神託の向こうから、続けて

状況・情報が入ってくる。




│ ■ラムキュールの部屋     │




「それにしても、この屋敷を閉じちゃうなんて。

 もったいないわねえ」


「鉱山の維持だけならここは必要ない。


 優先権のオークション会場として必要だっただけだ。

 ここを存続させる意味も金も私にはもう無い」


全く抑揚よくようの無い声でラムキュールは語り、

シンデリンは残念そうな言葉とは裏腹に、笑顔で話す。


「……あら? という事は―――

 ここで働いている人たちは?」


「今月いっぱいで解雇だろうな。

 働く場所が無くなるのだから」


「えぇええええっ!?

 じゃあ私が狙っていたあの兄妹は

 どうするのよ!」


「知るか。

 自分で、勝手に交渉でも何でも

 したらいいだろう」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「……これ、僕たちは明日お休みした方が

 いいですよね」


ファジーと顔を見合わせながら、

周囲に同意を求めるアルプ。


「つーかもう出なくていいんじゃね?


 連中が何やらかそうとしたのかはわかんないけど、

 阻止出来たみたいだし。

 このままフェードアウトしたって別にいいだろ」


「ただ、ラムキュールのお屋敷の方は、

 解雇されるにしろ確認は必要でしょうね。


 相場より低いから、出るところに出たら

 立場的にマズくなるってのは彼もわかって

 いるだろうけど―――


 明日、私が出向くわ。

 一応念のために、ね」


後片付けを引き受けるかのように、マルゴットが

提案し―――

最後にフィオナが言葉を続けた。


「という訳ですので、ナヴィ。

 適当な頃合いで帰ってきてください」


(了解です)


お目付け役に指示を出すと、それぞれの予定で

明日を迎える事になった。




│ ■ラムキュール・ジン屋敷   │




当日になって―――

その日の午前中、日も少し高くなった頃、

マルゴットはラムキュールの屋敷を訪れていた。


屋敷の中ではすでに自分たちが解雇されるのが

伝わっていたのか、使用人たちが慌ただしく不安気に

動き回る。


ともかくも、スタウトの案内で―――

マルゴットはラムキュールの部屋で彼に出会う

事になった。




│ ■ラムキュールの部屋     │




「……確か、フラール国の豪商のお嬢さん……

 でしたかな」


ラムキュールは不機嫌とも疲れともつかない表情で、

彼女を出迎える。


「今はバクシアのボガッド家と親しくしております。

 その辺の事情は、そちらがよくご存じかと」


「……フン」


―――この時、2人はお互いの力量を一目で見抜いた。

『英雄は英雄を知る』の例えも有るが、目の前の人物が、

ただの商人ではないと悟ったのである。




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




同時刻―――もう1組の対峙が発生していた。


2人の眷属を背に隠すようにして、女神は1人の

同性の商人と向き合う。


「えーウソ!? そこにいるのファラちゃんでしょ!?

 男の娘だったんだーそれってスッゴいプレミアム!!


 あぁんもう、ちゃんと計画通りコトが進んでいれば、

 今頃は……!」


ミモザが食材を買いに出かけており、仕方なく

一番の年長者であるフィオナが訪問者に対応

するため、玄関へと出たのだが―――


興奮気味に話すシンデリンに対し、

フィオナは真っ向から彼女のテンションを否定する。


「わかっていませんね……

 このコの価値は女装などに非ず。


 素材こそが一番のお洒落……!

 男の娘だから魅力があるのではありません。


 こんな可愛いコが女の子のはずがない!

 そこまでの魅力を兼ね備えてこそです!」


「……むむぅ」


―――この時、2人はお互いの力量を一目で見抜いた。

『変態は変態を知る』の例えも有るが、目の前の人物が、

変態等という範疇はんちゅうでは語れない事を悟ったのである。




│ ■ラムキュールの部屋     │




「―――あれは君が絡んでいたのか。

 おかげで、この屋敷の使用人は全員クビだ。

 満足かね?」


「ご心配なく。

 ちょうど人手がいくらあっても足りない

 ところでしたので。


 こちらの鉱山―――

 その労働者の世話をする人も必要になると

 思いますから―――」


「……く……」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「ファラちゃんのメイド服―――

 あれは貴女のチョイスなの?


 ただ余りにも王道過ぎるわ。

 あんなもので満足?」


「ご心配なく。

 あれはただ、潜入用に選んだだけですので。


 必要とあればいくらでもバクシアにいる姉妹ヘンタイ

 送ってきてくれると思いますから―――」


「ぐぬぬ」




│ ■ラムキュールの部屋     │




「今回は引こう。

 だがこの程度で、私が諦めると思うな―――」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「今回は引くわ。

 でもこの程度で、私は絶対諦めないわよ―――」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │


それから数日経ち―――

ようやくルコルアでの一件が本当に一段落した後―――


同性の眷属とお目付け役が、今回の件を思い出しながら

語り合っていた。


「しょういえば2人とも、フィオナ様の

 ジャージ……もとい、あの衣装を見ても

 何も言いませんでしゅたよね?」


「あ、あれは……

 確かに驚きましたけど」


「ミモザ姉もマルゴットさんも何も言って

 無かったので、僕たちもスルーしなければ

 いけないと思いまして」


「大人でしゅね。

 うちのダ女神が、余計な気を使わせて

 申し訳ないでしゅ」


お目付け役は深々と頭を下げる。


「い、いえそんな」


「そういえば結局―――

 今回、『枠外の者』は何を狙っていたので

 しょうか」


「しょれは今、バクシアの方でも、

 調査を進めているでしゅ。


 しょれより―――

 フラール国に行く準備は出来てましゅか?」


ナヴィが振った話は、ミモザ・ファジー姉弟が

アルプの果樹園に戻ると同時に―――


アルプを始めとして、国をあげての表彰式を

見に行くためである。


「バーレンシア侯爵の晴れ舞台ですからね。

 ぜひ見に行きませんと」


そこへ、ラムキュールの屋敷にいたスタウトが

姿を現した。


「あ、スタウトさん。

 お屋敷にいた人たちの希望はどうなりました?」


「半々ってところですかねえ。

 鉱山か、果樹園か―――


 どちらも給金が前以上に上がりますので、

 国を離れるかどうかで迷っているだけですけど」


「あの、スタウトさん。

 そんなていねいな対応でなくても

 いいですから。

 前と同じ感じで大丈夫ですよ。


 今回の件、こうなったのは僕たちにも責任が

 あるんですし……」


「そうはいきませんよ。

 新しい雇い主なんですから。


 まあ、ファジー君には屋敷の全員が驚いて

 いましたけど。


 あ、そういえば呼ばれてましたよ。

 フラールに行く準備の事で―――」


その言葉に3人は、スタウトの後について

奥の部屋へと消えた。


カシャ☆




―――女神フィオナ信者数:現在2477名―――


―――4章へ続く―――




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