26・このアタシが悪かったというのかマジごめん
仕事決まったけど、ペースが落ちるかも_(;._.)_
天界、フィオナの実家―――
そこでフィオナの母であるアルフリーダが、
従僕&娘のお目付け役にしているナヴィ(猫Ver)
から報告を受けていた。
ただし、それはいつものお目付け対象の報告ではなく、
プライベートなもので―――
「……という訳で、天界市役所から私に
神への昇格テストの話が来ているのですが」
「んー、実は私の方にもあったのですよ。
貴方は私の従僕ですから、責任者に連絡、
みたいな感じで。
それに貴方この前、体の不調を訴えて
いたでしょう?
アレが多分、神格を得る兆候だったと
思うのよね」
すでに事情を知っていた事に安堵し、
従僕は主人に意見を伺う。
「それで、どうしましょうか。
今はフィオナ様のサポートから離れる事は
難しいと思われるのですが……」
「貴方自身はどうしたいの?
神になれば、私やフィオナちゃんと同格に
なるし―――
それにもし、あの子と一緒になりたいんだったら、
私は反対しないわよ?」
「それだけは本気でカンベンしてください。
5回くらい命を助けられたとしても躊躇する
レベルですので」
「え? そこまで?」
「まあそれは冗談だとしても―――
フィオナ様の好みが今のところ、多岐に渡り過ぎて
いまして。
あの中の対象の1人になるのは、正直どうかと
いいますか」
「正論過ぎてグゥの音も出ねぇ」
「取り合えず、昇格試験は状態が落ち着くまで
保留にしておいてください。
それでは、そろそろ本編スタートしますね」
│ ■バクシア国・首都ブラン │
│ ■ボガッド家屋敷 │
「あとは、例の鉱山で―――
『それ』を使うだけですか」
バートレットが、まだ見ぬ『それ』に対して
期待するかのように口を開く。
解決策が用意された事でみんなに安心感が広まり、
その実行の時期を話す段階に入っていた。
「しかし―――
それだけの威力がある道具でしたら……
危険は無いのでしょうか?」
マルゴットの問いを、トニックが返す。
「いや、神様なんだろ?
自分が作った物で自分が死ぬなんて事は」
「そ、そうですね。
失礼な事を言いました」
(大丈夫ですよ。
アタシがやれば、一発であんな岩盤など―――)
「ダメでしゅよ」
(……え? え?)
突然のナヴィの言葉に、注目が集まった。
│ ■ファジーの家・食卓 │
「あの、ナヴィ様。
ダメってどういう事だい?」
不安を隠せず、ミモザがその意図を問う。
│ ■ボガッド家屋敷 │
「―――フィオナ様が手を出せるのは、
ここまで、という事でしゅ。
『それ』を使うのは人間でなければ
ならないのでしゅよ」
(で、でもアタシがアルプに黄金の果実を
作った時は、そんな事は)
女神の疑問と抗議に、お目付け役は応える。
「黄金の果実は作っただけでしゅ。
直接それを売って儲けたわけでも、
何かを成し遂げたわけでもありません。
それをどう扱うかは―――
この世界の人間の手に委ねられているのでしゅ」
「……確かに、あれは未だに私の手元に
ありますが……
フィオナ様がそれで利益を得たわけでも、
引き換えに何かを得たわけでもないですね……」
「要は、誰がそれを扱うか、ですか」
マルゴットが、思い出すようにつぶやき―――
バートレットが結論を出す。
「しょれでなくとも、フィオナ様は少々
『関わり過ぎて』いましゅからね」
(え……えっと……
アタシじゃホントだめ?)
おずおずと問い質す女神に、ナヴィは現実を
突き付ける。
「(ただでさえフィオナ様は初めての神担当で、
しかも信者数激減の経緯もありますから
目立ち過ぎなんですよ。
ここでまた、あんなものを作った上に
自らぶっ放したなんて知られたら、
天界市役所から何て言われるか)」
│ ■ファジーの家・食卓 │
「何だと!
このアタシが悪かったというのかマジごめん!!」
「フ、フィオナ様?
どうかしましたか?」
逆ギレと反省と謝罪がごちゃ混ぜになった女神を、
第一の眷属が心配する。
「な、何でもありません。
それより、アタシが使えないとなると―――
バートレットさんの言う通り、アタシの代わりに
誰かに使ってもらうしかありません」
「雷と同じ破壊力を持つ道具……
人間が使っても大丈夫なのかい?」
「扱い方次第では、その。
ちゃんと扱えば安全だと思いますけど」
ミモザの質問に口ごもるフィオナ。
危険な兵器に変わりはなく、扱いを間違えれば
ケガや下手をすれば死に至るもので―――
「じゃーアレだ、頼んだ」
ポン、と笑顔で肩を叩くミモザ。
叩かれた先のソルトは目を丸くして驚く。
「い!? いやいやいや!
ちょっと俺には荷が重いってゆーかー!?」
「情報屋の代わりなんていくらでもいるから♪
それにファジーさらおうとしたのはフィオナ様は
ともかくアタイは別に許してねーんだからな。
いやあ生かしておいて良かったー♪」
「ミ、ミモザ姉っ。
それはもう許してあげようよ」
半ば暴走しかけている姉を、弟は何とか
なだめようとする。
「いや、それを言ったらトニックもだろ!?
何で俺だけ!?」
ソルトは思わず、同罪だった相棒の名前を叫ぶ。
│ ■ボガッド家屋敷 │
「うわ、ふざけんなソルト!
道連れかよテメー!」
国越しにトニックが抗議の声を上げる。
│ ■ファジーの家・食卓 │
「当たり前だ!
だいたいお前、フィオナ様に異教徒って
目を付けられていたし……!」
「まぁまぁ。
ここは1つ、2人仲良く逝ってこいや♪」
元情報屋の3人組の言い争いがヒートアップ
する中―――
バクシアにいるお目付け役が、その流れを変えた。
│ ■ボガッド家屋敷 │
「―――仕方がないでしゅね。
私がサポートに回りましゅから、
誰か1人、使う人を選んでくだしゃい」
「ナヴィ様が、ですか?」
ローン・ボガッドがナヴィの提案に思わず声を上げる。
(え? いいんですか、ナヴィ)
「あれを使うには危険が伴いましゅし、
それに人一人くらいであれば、もし何かあっても
坑道から脱出させられましゅ。
だから問題は―――
誰にしゅるか、なのでしゅが」
また、部屋の中に気まずい沈黙が流れる中、
バートレットが意見を述べた。
「私ではいけませんか?
武器のような物であれば、一通り扱いには
長けているつもりですが」
「んん……そうは言っても未知の武器とも
呼ぶべき物でしゅからね。
しょれに、いざという時抱えられて
脱出可能な人が適任でしゅ」
「……確かに、ビューワー君は長身だからな。
しかし、身の軽い者となるとどうしても……」
ローン・ボガッドは、自分の考えを言おうとして
躊躇し、それを取りやめた。
│ ■ファジーの家・食卓 │
「女子供が適任ってワケかい……
それならアタイが行くよ。
ファジーや、アルプさんにさせるワケには
いかないからな」
「ミ、ミモザ姉……」
吹っ切れたように話すミモザを、ファジーが
心配そうに見つめる。
それを見てフィオナも彼女を止める。
「い、いえ。
そんなに早急に決める必要は」
(あと、誰か自分の代わりにバクシアへ
来て欲しいのですが。
連絡が取れなくなるというのは不便ですし、
アルプ君かファジー君のどちらかが)
「あーうん、そっちの問題も出てくるのね……」
ナヴィからの申し出に、フィオナもだんだんと
疲れの表情を見せ始める。
「(むぅう、もう、ここは1つ『アンカー』に
任せてみましょう……!
『アンカー』は今のスレで……200!
聞きたい事は―――
『ぱんつぁーふぁうすとを扱う人』
条件は―――
・体の軽い女性か年少者
・アタシとナヴィは除外
―――さあ、アタシを導き給え……!!)」
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在2373名―――