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24・割と事態が深刻過ぎるんですが



天界、フィオナの実家―――


そこに母であるアルフリーダ、

その従僕である猫・ナヴィ、

そして娘・フィオナの3人が顔を揃えていた。


「ちょっとーフィオナちゃん?

 また信仰地域が大変な事になっちゃってる

 みたいじゃない」


アルフリーダが、娘に現状を問いただす。


「げ。誰からそれを」


「私がお目付け役だって忘れていませんか?」


うろたえるフィオナに、ナヴィがツッコミを入れる。


「もー☆ダメだぞフィオナちゃん♪

 もっとしっかり信仰地域と信者を見ておかないと」


「えへへ☆アタシけっこう全身全霊で頑張っていると

 思うんですけどいつの間にか信仰地域がピンチに

 なっちゃうのどうしたらいいのかしら♪」


「割と事態が深刻過ぎるんですがそれは」


軽いやり取りをする母子に向かって、さすがに

ツッコミを入れるナヴィ。

そして、ここにいない存在に疑問を抱く。


「そういえば、ユニシス様はどちらへ?」


「あ、パパなら天界市役所に行ってるわ。


 フィオナちゃんの信仰地域に何とか早く介入かいにゅう

 出来ないか、交渉しているみたいだけど―――


 まあ、お役所仕事だし……」


「デスヨネー」


諦めとも嘆きとも取れないため息が、

フィオナの口かられる。




「ま、前回だって何とかなったんだし、

 自分の力で何とかしてみなさい。


 そこまでどうにも出来ない状況ってワケじゃ

 ないんでしょ? ナヴィ」


「いやあ……(全否定)」


従僕の返答と態度、そしてフィオナの表情を見て、

重苦しい空気が部屋を支配しつつあるのが母親にも

わかった。


「だだだ大丈夫よ何たって私とパパの娘なんだから

 そう酷い結果にはならないわ―――


 ねえ、そうでしょ? そうだと言って?」


「確認しないでくださいママ!

 余計不安になります!」


「えーっと……

 それではそろそろ本編に入りますね」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「フィオナ様、ただいま戻りました」


「ただいまー、ミモザ姉」


夕方―――

2人の眷属が、“勤め先”から家に帰ってきた。


「おかえりなさい、2人とも」


「夕食は出来ているよ。

 着替えて、手を洗っておいで」


2人の女性が出迎え、食事への準備を促す。


「腹減ったぁー……

 今日の晩メシ何?」


「アンタはアタイと一緒に料理の盛り付けと

 食卓に運ぶのを手伝え」


一足先に帰っていたソルトに、ミモザの

厳しい言葉が飛ぶ。


「ひでっ!

 何か扱い、やっぱり俺だけ酷くね?」


「ロクな情報も持ち帰らないで何言ってんだ。

 ホラ、とっとと支度するよ」


文句を言うソルトを蹴飛ばすように先に行かせながら、

2人は食事の準備へ向かった。




―――1時間後―――




「ごちそうさまでした、ミモザさん」


「美味しかったけど、初めて食べる味のような……

 ミモザ姉、味付け変えた?」


「ま、まあね。

 アタイの方もちょっと、負けていられないって

 いうか……」


弟からの視線を横にずらしながら、ミモザは応える。


「フィオナ様、これからバクシアとの神託を繋ぐん

 ですよね?」


「ま、まあそう焦らないでも大丈夫ですよ。

 お腹が落ち着いてから―――」


「そういや、こっちはロクな情報は

 得られなかったけど、お2人さんは

 何かあったかい?」


ソルトの質問に、アルプとファジーは顔を見合わせた。


「?? どうかしたんですか?」


「えっと、その……」


フィオナの言葉に、答えに迷うような、もじもじと

ファジーが視線を落とす。

それを見たアルプが、引き継ぐように話を続ける。


「ある事にはあったんですけど……

 ちょっと怖い事を言われて」


「何があったんだい?」


身を乗り出すようにして、心配そうに聞くミモザに、

眷属2人は語り始めた。




―――眷属たち回想中―――


│ ■ラムキュール・ジン屋敷前   │




「アルプ……アルフお兄ちゃん、

 そろそろ、帰る支度を」


「もうそんな時間だっけ?

 わかった。じゃ、この雑草を片付けてから―――」


「あ、いたいたー♪

 アルフちゃん、ファラちゃん」


聞き覚えのある声に2人が振り返ると―――

そこには、あのミイト国の商人がいた。


「あ……」


「ト、トーリ……さん」


「イヤン、そんな他人行儀。

 シンデリンでいーわよー♪」


相変わらずのテンションの高さに押される2人。

そして、初対面の時の話を再開する。


「ねーねー、前話した件なんだけどー。

 考えてくれた?」


「え、えっと……

 ミイト国に行く、でしたっけ?」


ファジーを後ろに隠すようにして、

アルプが応対する。


「そーそー♪

 ちゃーんとお姉ちゃんのところで雇って

 やしなってあげるから。

 何なら永久就職も……♪」


「で、でも、この国は生まれ故郷なんです。

 そこから離れるなんて……」


ファジーの言葉にウソは無いが、それに対する

シンデリンの答えは、想像もつかないものだった。


「そんな事、言ってられなくなるわ。

 どうせこの国はあと少しで大変な事になるわよ。


 まあでも、安心してちょうだい♪

 そうなったらそうなったで、2人の優先権は

 何としてでも手に入れるから。

 いくらかかってもね♪」


「そ、それはどういう……」


アルプが問い返そうとしたその時、屋敷内から

スタウトの声が聞こえた。


「トーリさん、どこにいるんですかー?

 勝手に敷地内を歩き回られると困るんですがー」


「あぁんもう、いいトコロだったのに♪

 じゃ、2人とも。

 その日を楽しみにしててね♪」


そう言い残すと―――

彼女は屋敷の方へ去っていった。




―――眷属たち回想終了―――




「……というような事がありまして」


疲れたような顔をして説明する2人につられるように、

ミモザの口からため息が漏れる。


「まぁーたあの女商人が来たのかい。

 ずいぶんとアルプさんとファジーに

 ご執心のようだねえ」


「それよりも―――

 何か物騒ぶっそうな事言ってねえか?


 まるで何かが起こる事を、わかってそうな

 口ぶりだぜ?」


ソルトの心配に対し、ミモザは親指と中指で輪を

作ると、そのまま彼の額を弾いた。


「って!」


「ンな事はわかりきってんだろ。

 だから対策をいろいろと考えているんだし。


 あの鉱山を手に入れて―――

 今後の対応を決めるんだろ? フィオナ様」


「ソ、ソーデスネ、ハイ」


フィオナに、まだこれといった案は

思い浮かばなかったが―――

その時は確実に近付いていた。




│ ■ラムキュール・ジン屋敷   │

│ ■ラムキュールの部屋     │




同時刻―――

自分の部屋でラムキュールは、1つの書類に

目を通していた。


(……バクシアのボガッド家が、ルコルアの

 月水晶の鉱山を購入?


 それも、ほとんどの鉱山が高騰する中―――

 まったく相場が動かなかった、怪しげな鉱山を?


 ―――バカじゃない、とすると何だ?

 何が目的なのだ?)




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




(おいバカ、そろそろ神託カイセンを繋ぐ準備はいいか?)


「(い、いきなりご挨拶ですねえ……

 えーっと、もうちょっと、もうちょっと何とか)」


ナヴィの問い合わせに焦るフィオナ。

そんな彼女を見て、1人目の眷属が声をかける。


「どうかしましたか? フィオナ様。

 そういえばそろそろ、バクシアのナヴィ様と

 神託を繋ぐ頃では……」


「えっ!? あ、ちょ、ちょっと準備がありまして。

 もう少々お待ちくださいませっ」


そう言うとフィオナは、部屋から出てそのまま

裏庭へと向かった。


逃げるように屋外に出たフィオナは、深くため息を

つくと―――

“今後の対応”に頭を悩ませていた。


「ハァ……どうしてこうなっちゃったんでしょう」


(完全な自業自得だと思われますが?)


「ちょっとはナヴィも考えてくださいよー!

 いいんですかこのままで!?

 ファジー君の国がどうにかなっちゃうかも

 知れないんですよ!」


(……というより、わかってて裏庭に来たわけでは

 ないのですか?)


「……??」


ナヴィの問いがわからず、裏庭を見渡すと―――

そこに、月明かりに照らされ、彼女に鈍い光を

投げかける物があった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2361名―――



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