表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/402

22・期待が背に重いですね

近況報告:明日手術した傷の抜糸予定。

だから何だという事でもありますが( ̄▽ ̄;)



日本・とある都心のマンションの一室―――


「へー、ママがそんな事を」


サポート兼お目付け役の猫・ナヴィと、女神フィオナが

とりとめのない会話をしていた。


「衣装とBL本の店とか言っておりましたが。

 心当たりはありますか?」


「“アンカー”に聞いてみてもいいですけど、

 答えはたいてい―――」



【 ん? 秋〇原行けば? 】



「……投げやりというか、シンプルな答えですね」



【 ンな事言っても、

 ネット以外でってなるとなー 】


【 そのテの商品なら、むしろそこ以上に

 品揃えがいいところは無いだろ 】



「何というか、特化した場所なんですね」


ナヴィが、感心ともあきれともつかないため息をつく。


「そういえばナヴィは、どこか出歩かないんですか?

 せっかく地球こちらに来ているのに。


 こっちの猫との交流とかは」


「元が猫ですから、あまり変化の無い生活が

 合っているんだと思います。


 それと、もうアルフリーダ様の従僕になって

 長いですから―――

 ここで他の野良猫と会ってもトラブルの元にしか

 なりませんし」



【 まあそれなら、無理に出歩く必要は

 ないかもね 】


【 特に秋葉〇なんか、野良猫どころか

 野良メイドまでいるし 】



「野良メイド!?

 何ですかその存在初めて聞きましたよ!?」


困惑と驚きの声を上げるフィオナに、

ナヴィがツッコミを入れる。


「どう見ても騙されています。

 本当にありがとうございました。


 だからアルフリーダ様が仰っていたでしょう。

 “アンカー”の言う事はほどほどに聞いて

 おけって」


「む、むうぅ……」


「それじゃ、そろそろ本編入りましょうか」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




翌朝、早朝―――

女神と1人の眷属、そしてその姉が、

身支度を整えていた。


「―――それじゃ、問題の鉱山に向かいましょう。

 ミモザ姉は案内と助言をお願い」


「ああ。

 じゃあアルプさん、ソルト。

 留守は頼んだよ」


あの後、バクシアとルコルアの間でさらに話が

詰められ―――


マルゴットの「万が一のために、最低限の金貨は

再起出来る程度に残しておきたい」という意見を

取り入れて、金貨1千枚は残すとし、


ローン・ボガッド:金貨1万4千枚

マルゴット・グラノーラ:金貨4千枚


をそれぞれが出し、残りの2千枚をアルプが

出して、合計2万枚の金貨を調達する、

という事で落ち着いた。


もちろん、『購入する事になれば』という条件で。


(バートレットはフラールがバクシア管理下に

 入った関係で、現状徴税が実質ゼロであり、

 『財産を処分する』という提案を他3名が

 説得して止めさせた)




「鉱山に出向いて、購入するかどうか―――

 最終的にはアタシと眷属2名にお任せする、

 という事でしたが……」


「ボ、ボクにそんな大役が務まるかなあ……」


不安そうに声を落とすファジーに、先輩眷属である

アルプが励ますように話しかける。


「ファジー君、フィオナ様の決められた事に

 間違いはありません。


 僕たちはただ、フィオナ様のお心のままに」


「ありがとう、アルプ。

 必ずや、良き方向に進むように……


 (やべぇよ信頼100%MAXの目がアタシに

 突き刺さるよ助けてパパママ)」


盲信、と言ってもいい目で、フィオナを見つめる

アルプ。

その視線に笑顔で返し、裏腹に心では焦りまくる女神。


(期待が背に重いですねフィオナ様)


「(く……っ、こ、断ってやる!

 絶対に鉱山購入は諦めさせねば……!)


お目付け役からバクシア越しにツッコミを喰らい―――

見えない何かに追い詰められるかのような覚悟で、

フィオナは眷属とその姉と共に、その鉱山へと向かった。




│ ■ルコルア国・月水晶鉱山  │




「ここですか……」


1時間ほど馬車に揺られ、行き着いた3人が

見た物は―――

それなりに大きな、設備の整った鉱山だった。


「ここが……金貨2万枚の鉱山?」


ファジーが驚きの声を上げたのは、相場と

かけ離れている、という意味も含まれていた。


「…………」


ミモザが周囲を見渡し、少しけわしい表情となる。

それを見た弟が気になり、彼女と視線を合わせた。


「どうしたの? ミモザ姉」


「いや、これだけの規模の鉱山なのに―――

 人がまばらだな、って思ってさ」


「そうなんですか?」


ミモザの説明によると―――

通常、このくらいの鉱山の規模であれば、

もっと人がいてもおかしくないと言う。


「アタイも、情報屋を始めた頃―――

 両親が鉱山に出稼ぎに行っている時に、

 時々顔を見に行ってたからわかるんだけどさ。


 これくらいの鉱山なら、3倍くらいは人が

 いるもんなんだけどな」


「そういえば、そんな事言ってたっけ」


「うーん……

 となりますと、さびれているというか、

 それとも人が足りていないのか……」


「でも今は、ちょうど出稼ぎのシーズンですよ?」


「だよねえ……」


3人が頭を悩ませていると、不意に声をかけられた。




「何じゃね、アンタらは?

 鉱山労働希望者には見えんし……


 家族がここで働いておるのか?

 何なら、呼んできてやるが」


声の方へ振り向くと、70は過ぎていると思われる

老人が立っていた。


「え、えっと、ボクたちは」


どう説明したらいいものかわからず、

しどろもどろになるファジー。

すかさず、ミモザが代わりに応える。


「―――この鉱山の下見に来たんだよ。

 今、金貨2万枚だって? この鉱山」


「……はぁ?」


意味がわからない、というように、老人は

ミモザの言葉に聞き返すと同時に驚くような

態度を見せた。


「(あ、あのっ、いいんですか?

 そんなに正直に答えて―――)」


「(下手に隠した方が怪しまれるって。

 そンなら、最初から本当の目的を

 話した方がいい。


 それに購入するとなると国が絡むんだから。

 ごまかしたりするのはマズイ)」


情報屋としての経験から、フィオナの不安を

取り除くようにミモザが話す。


そんな3人をまじまじと見つめていた老人が、

くるりと背を向けた。


「あ、あのっ?」


「誰か知らんが、物好きもいたもんだ。

 ―――ついてこい」


戸惑うファジーの声に目もくれず、老人は

スタスタと歩き出した。


「ど、どこへ行くんですか?

 オーナーにでも会わせてくれるんですか?」


フィオナが後を追いながら質問する。

返ってきた答えは―――


「ワシがオーナーじゃよ。

 詳しい事は、ワシの部屋で話そう」


その言葉に、3人は黙って老人の後に

ついていく事にした。




老人の言う『部屋』に入ると―――

古いが、それなりに格調高い家具が、それほど

広くもない間取りにきちんと収められていた。


老人がテーブルの向こう側に座ると、それが合図で

あるかのように、反対側の席に3人が座る。


「冷やかしのようには見えんが―――

 代理人かね」


どう見ても、未成年の女子供3人組に対して

相応の評価を投げてくる。


「これでも全権委任だよ。

 ここで購入を決める事だって出来る。


 アタイはサポートで―――

 決定権を持っているのはこの2人だ」


ミモザの説明に、老人はフィオナとファジーの顔を

交互に見渡す。


「そうかね。


 自己紹介がまだだったな。

 ワシはカベルネ・ワインだ。


 ここの鉱山のオーナーをしておる」


「フィオナです」


「ファ、ファジーです」


「ミモザだ」


老人の自己紹介に、3人も名乗る。




「さて、鉱山の値段を聞いてきたが……

 金貨2万枚がここの相場、それは合っている。


 で、購入するのかね?」


「えっ? あ、あのー……

 それについて話を」


老人の単刀直入な物言いに、ファジーは困惑した

表情を浮かべる。


「話?


 他の鉱山の相場は上がっているのに、

 ココだけは上がっておらん。

 それは事実だ。


 非常にリスクが高く、誰も手を出そうとは思わん。

 買わない理由はあっても買う理由なぞ無い。


 それを承知で来たのではないか?」


「(ど、どういう事? ミモザ姉)」


「(つまり―――

 条件としては提示済みで、そこから動く

 事はない。


 だからこその『低価格』って事なんだろう。

 何らかの裏事情はあるだろうが、それも含めて

 ノークレームノーリターンでってヤツだ。


 さて、どうしたものかね、フィオナ様)」


「(え……っ、あ、アタシですか?


 む、むぅう……そうですよね、アタシが

 決めなければ……


 ここはひとつ、久しぶりにやるとしましょうか。

 『アンカー』を……!)」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2256名―――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ