21・前向きに善処して頂けたらなー
近況報告:ちょっとした手術完了('◇')ゞ
歳取るとあちこちガタがきてもー(;´Д`)
日本・とある都心のマンションの一室―――
女神・フィオナのサポート役兼お目付け役の
猫・ナヴィは、自らの主人であるアルフリーダと
コンタクトを取っていた。
『神殿に来てくれたのに留守でごめんなさい。
報告はパパから聞いたから―――
お疲れ様です、ナヴィ』
「いえ、これが私の仕事ですから」
『それと、フィオナちゃんの姿が見えないんだけど、
買い物かしら?』
「はい。近くのコンビニに行くと言ってました。
すぐ帰ってくると思いますが……んむ。
ん、ンン」
猫の姿であるナヴィは、体勢を何度か変えて
座り直した。
『……ナヴィ? どうしたの?』
「いえ、どことなくお腹の調子というか具合が」
『それは胃ガンよ』
「へあっ!?」
唐突な主人の言葉に、従僕はうろたえる。
「い、いえ、あの。
ただ単にお腹の調子が悪くなった程度で、
そんな重病では―――」
『貴方は医者でも何でもないでしょう?
シロウト判断はいけないわ』
「今のどこに医者の判断があったんですか!?
ていうかアルフリーダ様だって医学の神では
ないでしょう?」
うろたえまくるナヴィに、クスクスと笑いながら
アルフリーダが声を掛ける。
『冗談よ。
ホントに重病だったとしても、貴方は私の
従僕なんだから、どうとでもなりますし。
治す事は出来ないけど、病状の成長は
止める事が出来るから』
│ ■女神:アルフリーダ・ルールー │
│ ■時と成長を司り、見守る女神 │
「毎度の事ながらチートですよねその能力……」
『じゃ、そろそろお暇するわね』
「あれ? 間もなくフィオナ様も帰られると
思いますが」
『いいわ。
それに、ナヴィに任せておけば安心だし』
「もったいないお言葉です。
―――何か、フィオナ様に言伝は」
従僕の言葉に、主人である女神は少し考え―――
『そうねえ……
地球にいる“アンカー”とやらに知識を借りている
みたいだけど、ほどほどにしておきなさいって
言っておいてくれる?』
「承知しました」
『後は、どうせ“アンカー”に何か聞くんだったら、
衣装とかBL本とか扱っている店をついでに聞いて
おいて欲しいかなーって』
「……本のジャンルについてはアルフリーダ様の
趣味を知っておりますので、別にとやかく言う
つもりはありませんが―――
衣装、というのは?」
『うん、ちょっとパパ(を若返らせて
無理やり着せて遊ぶ)のためにね♪』
「ああ、ユニシス様(に喜んでもらうため)にですか」
│ ■天界・フィオナの神殿 │
「はっくしゅっ!!
……何だろう、神様なのに急に寒気が」
同じ頃―――軍神ユニシスは何かを感じ取り、
盛大なクシャミを発していた。
│ ■日本国・フィオナの部屋 │
『じゃ、フィオナによろしくね』
「はい、失礼いたします。
では、こちらもそろそろ本編スタートします」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
その日の夜―――
夕食を終えて、一息付いた頃に、バクシアと神託を
繋いで情報を共有する運びになった。
「では、そろそろ始めますか。
ナヴィ、聞こえる?」
│ ■バクシア国・首都ブラン │
│ ■ボガッド家屋敷 │
フィオナの神託を受け、バクシアで待機していた
ナヴィが応える。
「はい、大丈夫でしゅよ。
何か新しい情報でも?」
(現在の鉱山の相場について何ですけど―――
やはり、高騰しているみたいです)
フィオナは、ミモザとソルトが調べてきた、
今のルコルア国の鉱山について話した。
「一時的に跳ね上がっておるようだな。
しばらくすれば落ち着くだろうが―――」
「ただこれで、『枠外の者』の手に直接対抗するのは
余計に難しくなりました」
商人であるローン・ボガッドとマルゴットが、
自分の立場からの意見を述べる。
「元々、鉱山購入は現実的ではないという話でしたが、
こうまで可能性が無くなるのを見せつけられると」
「でもよ、鉱山を購入して派手な事をやれば、
国が黙っちゃいないぜ」
続いて、バートレットとトニックが独自に見解を語る。
「ふみゅう……ン?
ちょっといいでしゅか?
ミモザしゃんとソルトしゃんは、前の値段と
今の値段を調べてきてくれたんでしゅよね?」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「そーだよ?
じゃないと、比較出来ないし」
「ナヴィ、どこかおかしなところでも?」
ミモザがナヴィの質問に答え、フィオナがさらに
聞き返す。
│ ■バクシア国・ボガッド家屋敷 │
「1つだけ、値段が変わっていない鉱山が
あるのでしゅが―――」
ミモザ・ソルトの調査を口頭で伝え、それを
書類に書き写したのだが、確かに値段の変更が
無い鉱山が1つあった。
「そういえば、それはワシも気になっていた。
書き間違えとかではないのかね?」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「ああ、それ?
俺も確かにおかしいと思ったけど、間違いじゃ
無いんだよ」
「ウン。アタイも妙だとは思ったけど―――
値段が変わってない鉱山が1つだけあったんだ」
ミモザとソルト、調べて来た当人たちの言葉に、
眷属2人は不思議そうな顔をする。
「どういう事?」
「ボクも聞いた事ないです、アルプさん」
「えっと……
ちなみに、お値段は?」
│ ■バクシア国・ボガッド家屋敷 │
「ふみゅ、金貨2万枚―――でしゅね」
(それでも結構な金額ですね……)
フィオナの問いにナヴィが応え、改めてその値段に
彼女は驚かされる。
「月水晶の鉱山だからな。
元の値段でそれというのは、かなり良質な鉱山の
はずだ。
しかし、値段が変わっていない、というのは
一体……?」
「私とローン・ボガッドさんを合わせて、
ようやく手が出せるレベル、ですか。
でも、怪しいのを通り越してますわ」
さすがに2人は慎重な姿勢を崩さない。
「私が商人でも、購入には躊躇するでしょうね」
「同感だぜ。
怖くて手が出せねぇよ、こんなの」
続いて、バートレット・トニックも同じ意見になる。
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「で、ですが―――
一見の価値はあると思われるのですが、
どうでしょうか皆さん」
フィオナの言葉に、バクシア・ルコルア両国にいた
全員が、その意味を理解した順に戸惑う。
「そりゃ、見るくらいなら別にいいけど……」
「俺もルコルアの人間だが、相場で動かない、
特に他が上がっているのに変わらないってのは、
俺じゃなくてもまともじゃないってわかりますよ?」
│ ■バクシア国・ボガッド家屋敷 │
「上がらない理由があるという事だろう。
それが何かはわからんが―――」
「まさか、フィオナ様……
購入を検討しているのですか?」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「ま、まあその。
前向きに善処して頂けたらなーとか?
思わなくも? ないです?」
(煮え切らない答えですね。
『アンカー』の選んだ結果ですから、
それに沿わなければならないのはわかりますが)
「(い、一応は言っておきませんと。
でもこれで、話がお流れになれば……)
だが―――
第一の眷属であるアルプが、そこで口を開いた。
「それが、フィオナ様のお心でしたら―――
僕は反対しません」
「えっ?」
想定外の支援に、フィオナは思わず声を上げる。
「え? ええ? いやでもアルプさん……」
表立って反論はしないものの、祖国の事情に詳しい
ミモザは戸惑う。
「今まで、フィオナ様の決断や神託が、
間違った事はありません。
一応、その鉱山を見てきてから、
というのはどうでしょうか?」
「そ、そうですね。
そこからまた何か、別の道が開けるかも
知れませんし」
「(ぐっじょぶですよアルプさん&ファジーさん!!)」
(勧めているようで、何気に回避する方向も
残しておいてくれていますね。
一応、これで様子見といきましょうか)
│ ■バクシア国・ボガッド家屋敷 │
「まあ、そうじゃのう。
何が原因で、というのを調べてからでも遅くは
あるまい。
一応、金貨は準備させてもらおう」
「わかりました。
でもフィオナ様、アルプ―――
くれぐれも確認は怠らないでください」
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在2240名―――