20・女子力で完全に負けている
何か18禁の方は携帯からのアクセスが
多い気がする(;・∀・)
天界、フィオナの実家―――
そこで女神フィオナのお目付け役兼サポートを
しているナヴィ(猫Ver)と、主人である
アルフリーダの夫・軍神ユニシスが対峙していた。
「……フム。報告ご苦労。
あとでママにも伝えておくよ」
ナヴィは、主人であるアルフリーダにフィオナの
現状報告をしに来たのだが―――
肝心の彼女の姿が見えないので、父親であるユニシスに
報告する形となった。
「アルフリーダ様はお忙しいのですか?」
「いや、フィオナが今住んでいる世界に
用事があって行っている。
だから、お前とすれ違ったのかも知れん。
ただの買い物だと思う。
どうもあっちを気に入っているようだからね」
「私のご飯も、地球で買っている
みたいですしね」
一人の男と一匹のオスは、同性同士何気ない
会話を続ける。
「……そういえば、フィオナ様は2人目の
眷属を従えたわけですけど―――
アルフリーダ様に眷属っておりませんよね?
私は従僕ですし」
「僕が初めての眷属だって言ってたけど、
それ以降は眷属にしていないみたいだ。
僕が神に昇格したから、実質眷属はもう
1人もいない状態だね」
とりとめのない会話を続け―――
ふと、ナヴィが話の方向を変える。
「そういえば、ユニシス様とアルフリーダ様の
出会いは、どのようなものだったのですか?」
「ン? 僕とママの事かい?
いやー、ちょっとココでは」
「あ、別に無理に聞きたい訳では。
ただ興味があっただけですので―――」
「いやいや。
今ここは僕とナヴィの二人きりだし、
あまり気にしないよ。
ただ、ママが」
その時、床から地響きのような音が聞こえ、
それは現実に神殿ごと揺れ始めた。
「!? じ、地震!?
天界で……!?」
「いや、これ……ママの仕業だ」
ユニシスの言っている意味がわからず、
床とユニシスの顔をナヴィの視線が往復する。
「ママ、自分以外の人間がママの恋バナを語ると、
それに対して発動するトラップを仕掛けているんだ。
これ以上は多分、爆発か何かが起こると思うけど」
「……どうして神殿にトラップを仕掛けるのか、
という質問は無意味なんでしょうね。
では、そろそろ本編入りましょうか」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「ファジー、ただいまー……って、うわ。
何かすごくいい匂いが」
「匂いだけで腹が減ってきたぜ。
これは期待出来るな」
ミモザとソルトが帰ってくるなり、
眷属2人が作った料理、その香りへの感想を
口々に述べる。
「あ! ミモザ姉、お帰りなさいっ」
「もうちょっと待っててくださいね。
今ちょうど、夕食の分まで作ってますので」
「そうかい? 悪いねえ」
ミモザは上着を脱ぎ、適当に畳んで
入り口近くの棚の上に放り投げながら答える。
ソルトも同様にしながら、佇まいを整える。
「お疲れ様でした、2人とも。
それで調査の方は―――」
「だいたいバッチリっす。
予想通りと言うか」
「ま、それは昼食の後にしよう。
せっかくの料理だ、美味しく食べたいからな」
│ ■ファジーの家・食卓 │
それから小一時間ほどして―――
眷属2人の料理を堪能したミモザとソルトは、
その余韻に浸っていた。
「美味かったぁー……ごちそうさま」
「アルプさんの料理は向こうの果樹園でも
食った事があるけど、今回のは今までで
一番美味かったぜ」
「ありがとうございます。
でも、僕とファジー君の料理ですよ」
「これからは、ボクも少しは料理を手伝うよ、
ミモザ姉」
「それと―――フィオナ様の果実がやっぱり
決め手だと思います」
作った人も食べた人もそれぞれに満足しながら、
今後の期待に表情を明るくする。
一通り、テーブルから食器が片付けられた後、
それまでの空気を一変するかのように、ミモザが
口を開いた。
「さて……と。
調査結果だけど―――
夜、またバクシアと神託を繋ぐんだよね?」
「そうですね。
得た情報は共有する事になっていますから」
「じゃ、一応、こちらでも共有しておきたいと思う」
周囲を見渡すと、アルプもファジーも真面目な
顔をして座っていた。
ミモザの視線がソルトで止まると、それが合図で
あるかのように彼が話し始めた。
「まず、月水晶の鉱山だが―――
言うまでもなく高騰しているぜ。
値上がりするのは予想通りだけど、その値上がり方は
予想以上だ」
「鉱山と言ってもピンキリだから、
昔は月水晶の鉱山でも、安いのは金貨1万枚とか
5千枚とかで買えたんだ。
どちらにしろ、アタイらには縁のない話だけど。
それが今や―――
最低でも金貨3万枚まで上がっている」
「そ、そんなにするの!?
ミモザ姉」
ソルトとミモザの説明に、ファジーが驚いて思わず
声を上げる。
「あの、ちょっと待ってください。
ラムキュールさんが買った一番の鉱山が
金貨5万枚なんですよね?
一番安くてそれって……」
アルプも、その数字に疑問を隠せない。
「ラムキュールの旦那の鉱山なら、
金貨7万枚くらいにまで跳ね上がっている。
交渉次第で、8万枚まで届くって言われている
くらいだ」
「買って売るだけで金貨3万枚の儲けですか。
ボロい商売ですね……
『枠外の者』は、長期的な商売はしないとの
話でしたが、そういう事なら―――」
フィオナが納得しかけているところへ、ファジーが
訂正する言葉を挟む。
「えっと……でも確か鉱山の購入は、国の許可が
必要なはずです。
購入後、数年は売買出来ないという決まりも
あります」
「そうなんですか?」
「正確には5年間だね。
でもそうなると、『1年以内に事を起こす』
って言ってたのは何なんだ?」
「う~ん……」
ソルトがうなるのを皮切りに、みんなが
考え込む。
「まあ悩んでも仕方がない。
夜にはバクシアと共有するし、あちらの意見も
聞いてから考えよう。
じゃあ、アルプさんとファジーは少し休んでくれ。
皿洗いはアタイがやるよ」
「そう? ミモザ姉。
ふぁあ……お腹いっぱいになったのと、
ちょっと疲れたから、何か眠たく……」
「頑張って夕食分まで作っちゃったからね。
僕も少し、お昼寝させて頂いてもいいですか?」
「いいも何も、雇い主に食事の支度まで
させちまって……
ゆっくり休んでください。
ファジーも、後でアタイが寝室に行くから
寝てなさい」
「はぁ~い……」
2人の眷属が目をこすりながら食卓を
後にした。
「んー……じゃ、俺もひと眠りすっかな」
「ソルト、
アンタは寝るなら風呂掃除してからにしな」
「俺だけ扱い酷くない!?」
「アタイだって皿洗いするんだ。
文句ゆーな」
ブツブツ言いながらも、ソルトは風呂場へ向かうため
部屋を出て行った。
後に残されたのは女性2人組―――
どちらからともなく視線を合わせ、小さな声で
語り合い始めた。
「……まずくないでしょうか、ミモザさん」
「……ウン。この状況はハッキリ言ってマズイ」
2人の脳裏には、今しがた食べ終わった料理が
浮かんでいた。
「今のアタシたち……!
女子力で完全にアルプ、ファジー君に
負けていますよ!」
「ファジーもそうだけど、アルプさん、
炊事洗濯何でもこなすんだよなあ。
アタイも女らしくとか、こだわる方じゃねーけど、
こう、意地っていうかプライドってものが」
お互いに眉間にシワを寄せ、同性同士考え込む。
「ま、まあ……でも……
ミモザさんは仕方が無いんじゃないですか?
弟の―――ファジー君を養うためにいろいろと
お仕事を頑張ってきたんでしょう?
それだけでも十分すごい事ですよ」
「う……そ、そうかい?
あの、フィオナ様だって―――
果実が料理の決め手だって、アルプさんも
言ってたし、する事はしているじゃないか。
お互い、その……
出来る事をやっていけばいいんじゃないかな、って」
「そそ、そうですよねっ。
お互い、出来る事をしましょうっ」
同性の2人はお互いに自分を騙す言い訳を
交わしつつ―――
夜、バクシアとの情報共有を待つ事にした。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在2235名―――