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05涙、涙


不確かな情報―――

未確定な希望―――

人を伝って情報を得るしかないもどかしさ。


頼りにしていた手段は心もとなく、

有効な手立ては思いつかず、

ただ時間と焦りだけが募っていく。


誰かが言った。人は外見で判断してはならないと―――

それぞれの思いは交錯し、運命の糸に天然という

フラグが襲い掛かる。


そしてこれから再会する彼女から与えられるものは、

希望を切り開く薬か、未来を閉ざす毒か―――




│ ■日本国・フィオナの部屋 │




とある都心部のマンションの一室―――

そこで女神とお目付け役は、今後の事を話し合っていた。




「彼らがグラノーラの家につくまで、

 少し待ちましょう。


 ―――ところで、フィオナ様の言われる

 『アンカー』という方々、集団? ですか。

 今のところ、どんな指示や指摘をしてくれるのですか?」


「だから全っ然書き込んでくれないんですよ。

 こっちは異世界に慣れているって噂でしたのに……


 まあ基本的に気まぐれで、答えてくれない場合も

 あるらしいんですけど」


「どういうふうに質問を書き込んでいるのか、

 ちょっと見せて頂けませんか?」


「え? ちゃんとこちらの世界のルールに従って―――」




【 急募:眷属の可愛い男の子と

 ラブラブチュッチュ出来る方法 】




「おかしいんですよ。

 一言も付いてなくてこれ」


「おかしいのはお前の頭な?


 むしろこんな文言を削除せず残してくれた運営に

 お詫びと反省と感謝の気持ちを示すために

 死んでください」


「じゃあどうしろって言うんですか!!」


「まさかの逆ギレ!?

 はー……じゃあちょっと貸してみてください。


 私の手では入力しにくいですね……音声入力?

 これを使って、今までの情報を提示してみます」




―――10分後―――




【 お、何か情報が来てる。

 書き逃げかと思ってた。別人? 】


【 設定のツメが甘いけど、

 まあスタンダードな異世界物って感じか? 】


【 でも結構厳しくね?

 チートが使えないって制限はデカい。 】


【 信者だけどさー、奉公労働者が

 信者かどうかの区別ってつく? 】




「な、何で!?

 アタシの誠実な問いには答えてくれなかった

 クセに……!」


「誠実という言葉に向かって土下座しろ。今すぐ。

 それと『アンカー』とやらの書き込みから、

 必要と思われる質問の記録をお願いします」


「何でアンタが取り仕切っているんですかー!!」


「―――じゃあフィオナ様が直接対応してくださいよ。

 やり方はわかったでしょう?」


「おーし! 任せておきなさい!

 アタシの愛と想いと情熱を思いっきりぶつけた名文で

 うならせて差し上げます!」




―――10分後―――




「何か、反社会的や性的な言葉とか、NGワードが

 どうのこうのって表示が出て書き込めないんですけど、

 どうしたんでしょうか?」


「よしわかった。

 お前に書き込む資格は無い。


 そ こ を ど け 、 今 す ぐ に 」


「で、でもそれだとタイトル詐欺っていうか―――」


「何をおっしゃっているのかわかりませんが、

 今後は私が仲介しますから大丈夫です。


 眷属と神託カイセンをつなぐ時もここの画面の情報を

 お伝えしますから」


「おお、なかなか優秀ですね」


「あと、調べたのですが―――


 『アンカー』というのは、予め指定した今以降の

 順番の番号を書いておくと、そこで質問の答えを

 書いておいてくれるシステムのようです」


「そうなんですか?」


「ただ―――

 『そこに書かれてある事には絶対に

 従わなければならない』という、

 強力な制約もかかっているようです。


 今までのはただの『相談』です―――

 今後『アンカー』を指定する場合は

 心してください」


「わ、わかりました」


「―――!

 そろそろ、目的地に到着するようです。

 さすがにお嬢様と思われる女性の家―――

 いえ、お屋敷が見えてきました」




(お、おぉ~……なかなかご立派なお屋敷で。

 さっきのビューワーの館より大きいんじゃない?)


(あ、フィオナ様。

 そうですね―――多分、ビューワー様の所領内では、

 一番のお金持ちだと思います)




「よし、つきましたよ、アルプ。

 私が先に降りますから、馬につかまっていてください」


そう言って彼は馬から降りると、馬上からアルプを

抱き上げるようにして、地面に下ろした。




│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷 │




「……それで、何の御用でしょうか?

 ビューワー様」


「私ではありません。アルプの話を聞いてやって

 欲しいのです」


屋敷の一室に通された彼らは、神託カイセンを繋いだまま

フィオナの質問や欲しい情報を伝えていた。


「―――アルプの事を疑っている訳では

 ないのですが……

 女神様が、そんな事を聞いてどうしようと

 言うのですか?」


「マルゴット―――何か女神様に対し、

 思うところがあるような言い方ですね」


「べっつにぃ?

 アルプを助けてくださった事には感謝してますしぃ。


 まぁ、私がいればどうにでもなった事なんですけどね。


 それより、黄金の果実を出すような能力があるのなら、

 どうしてアルプの母親の時にそれを使って

 くれなかったのか、とか思ってもみません事よ?」




│ ■日本国・フィオナの部屋 │




「何だこの女。

 胸がデカいと態度もデカくなるんですかね」


「アルプの母親が連れ去られようとしていた時、

 あなたは何をしていましたか?(やさしい笑顔)」


「えっと最後の月はー、

 3本のギャルゲーと5本の乙女ゲーを

 コンプリートして、

 同時並行で某アイドルゲーを

 イベント攻略中でした。


 あとBLも少々♪(微笑み)」


「そうか よし わかった 死ね(超笑顔・ド直球)

 ……ん? ネットに動きが―――」




【 てかさ、母親が税金の肩代わりで

 連れて行かれたんだろ? 】


―――何で子供まで税金払わなきゃならないんだ?




│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷  │




(えっと、それは確か……

 ジントーゼイ? って言ってたような)


「何? 人頭税がどうかしたの?

 ―――まあ、よくわからないのも無理はありませんけど」


「100年くらい前に消えた税制ですからね。

 まさか自分の代で見る事になるとは、

 思いもしませんでしたが」


(人頭税―――老若男女問わず、国民一人一人に課す税金。

 赤ん坊から老人までって事?

 結構えげつない制度ですね……)


(ネット検索で該当ページを見ながら、

 説明セリフありがとうございますフィオナ様)


「搾り取るだけ搾り取ったら―――

 人頭税復活させてワンモア搾取……


 ―――どれだけ欲深いのよ、バクシアの代官は」


「代官―――バーレンシア様の事ですか?

 あまり悪い方には見えませんでしたけど……」


「へ!? あ、会ったのソイツに!

 何か酷い事されなかった!?

 抱きつかれたり無理やりあんな事やこんな事―――」


「落ち着いてください。

 私もその場にいましたから。


 ですが―――私も、彼がそんなに酷い事をするような

 人物には思えませんでした」


「ハァ……まったくもう。

 私の周囲の男って、どうしてこう―――


 いい、アルプ。

 『敵』って言っている人は怖くも何とも無いの。

 対処してください、って言っているようなものだからね。


 ―――本当に怖いのは、『味方』だと偽って

 近づいてくる『敵』よ―――」


「でも、『容赦はしないよ』とも言ってましたけど」


「はい? 何でそんなわざわざ警戒心を

 あおるような事を―――

 で、そいつは何のために来たんですの?」


「恐らく、こちらに挨拶に伺ったものかと」


「ふぅん……え? 挨拶?


 ―――フラール国がバクシア国管理下になったのって、

 もう2週間も前ですわよ?

 挨拶って、今頃?」


「そちらに情報は来ていないのですか?」


「さすがに貴族様より先に、連絡や通達は来ないですわ。

 代官が置かれるという話は聞いておりましたが。


 ……そういえば、来たという情報は

 ありませんでしたね。


 しかし―――

 代官も到着しないうちに、あれだけの―――

 増税や人頭税復活を打ち出していたって事?


 それとも、先に本国から指示を出して―――」


「でも代官様は、『これからだからねっ』って

 涙目で言ってたんですけど」


「え? 何で涙目で?」


「ええ、まだ代官の仕事には手を付けていない―――

 涙目でしたが、そのように見えました」


「だから何で涙目で?


 ―――まあ、ちょっとよくわからないところも

 ありますけど、それは置いておいて。


 それで―――話を元に戻しますが、やっぱり納得が

 いかないのです。


 フィオナ様は、どうして今さら―――こちらに関わろうと

 しているのでしょうか?」




(あ、あの、フィオナ様―――

 どうお答えすれば……)


(……ごめんなさい、アルプ。

 今は信じて、としか言えません。


 ただ、あなた達人間が思っているほど―――

 神の力は無限でも万能でもないの。


 ましてアタシは、運命の女神でも、軍神でもありません。


 あの黄金の果実1つ作っただけで、

 しばらくは姿も保てないほどの―――

 その程度の力しかないのです)


(フィオナ……様……)


(こうして関わっている事すら、本当は、他の神々から

 こころよく思われていないのかもしれません。


 こんな事を続けるのであれば、アタシは神で

 いられなくってしまうかもしれない―――


 でも、アタシは貴方を見捨てないと約束しました。

 そして、信者たちを救いたい―――それだけです)




「うぅ……っ、フィオナ様……フィオナ……様ぁ……」


「え……っ、ど、どうして泣いてるの?


 ど、どうしたんですかアルプ!?

 どこか痛いの!?」


「……ちがっ……違う……違うのぉ……っ、

 僕の、みんなの……ために……

 フィオナっ、様がぁ……!」


「アルプ……」




│ ■日本国・フィオナの部屋  │




「よくもまあ、あそこまで事実を加工出来ますね。

 なまじウソをついていない分、余計に腹立つぅ」


「ハァハァ……いいわぁ、泣き顔すら可愛い……


 これで弟夫オトウットの忠誠心も大幅アップだしぃ、

 あの涙ペロペロしたい……デュフフwww」




「聞けやダ女神。


 ―――取り合えずあの子が泣き止むのを待って、

 『アンカー』の質問と、

 あっちの情報を整理しますからね」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在260名―――


―――神の資格はく奪まで、残り60名―――





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