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18・忘れようったって、忘れられないよね

何かPV数5万超えました(;・∀・)

ありがとうございます<(_ _)>



日本・とある都心のマンションの一室―――


女神である少女はバスルームで、お目付け役の猫は

リビングでくつろいでいた。


そこへ、ドンドン! と扉を叩く音が。


「……フィオナ様?

 どうしました、バスタオルでも忘れましたか?」


「あ、開けて……」


しばらく言葉を脳内で反すうし、その意味をめぐって

困惑する。


「いえ、開けてから入ったんでしょう?

 何ですか、新手のお誘いですか?」


「ち、違うんです!

 とにかく来てください」


仕方なくバスルームへ向かうと、

彼女のシルエットが向こうから半透明の扉に向けて、

叩く動作をしているのが確認出来た。


どうしてこうなったのか首をかしげていると、

タオル掛けの台が斜めになり、つっかえ棒のように

扉に倒れかかっているのが目に入ってきた。


「何をどうしたらこんなセルフ監禁に

 なるんですかね?」


「あ、アタシに聞かれても……」


文句を言いつつナヴィはタオル掛けの台をどけ、

洗面所を出て行く。

すると背後から、バスルームの扉を開ける音が

聞こえた。


しばらくして、一通り体を拭いて着替えたフィオナが

彼のいるリビングに姿を現す。


「ご、ごめんなさいナヴィ。

 助かったわ」


「どうして貴女は人に迷惑をかけないと

 生きていけないんですか……」


「わざとじゃありませんってば!


 そ、そろそろ本編スタートしましょう」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




いったん神託カイセンを閉じた後―――

フィオナとミモザは改めて、2人の健闘を称えていた。


「それにしても、思ったより情報を

 持ち帰れましたね。

 特にラムキュールさんの相手の名前まで

 わかったのは、大きいと思いますよ」


「正直、全部ナヴィ様任せになるかと

 思ってたよ。

 ていうか、とにかく無事に終わって

 くれればいいとしか、考えてなかったから……」


ホッとした表情のミモザの後に、ソルトが賛辞の

言葉を続ける。


「特にアルプさんは初めての『仕事』だろ?

 それでこれなら上出来だよ。


 会話を聞いて、その中でちゃんと重要な情報を

 拾ってくるというのは基本だけど、なかなか

 出来る事じゃないからな」


「え、ええ」


「まあ……」


歯切れの悪い言葉と共に、2人はトーリと

出会った時の事を思い出していた。




―――眷属たち回想中―――


それは、使用人一同で来客が帰るのを

見送る際に起きた。




│ ■ラムキュール・ジン屋敷前   │




「(ようやく終わりましたね、アルプさん)」


「(ウン、後は帰るだけ……アレ?)」


そこで彼らは、自分たちの事を見つめる視線と

何かしら話す声に気付いた。


来客の1人の女性が、こちらを見ながら何かしら

ラムキュールと話している。


「ねぇねぇ、あの可愛い2人は?」


「ん? ああ、クリスプ兄妹だ。

 身寄りが無いらしくて雇ってやっている。

 安い割にはそこそこ働いてくれてるよ」


「あら、安いの?

 なら私にちょうだい♪」


言うが早いか、あっという間にアルプとファジーの前に

彼女は駆け寄って来た。


その若干ウェーブのかかった、ロングのバイオレット

ヘアーを揺らし、1頭身ほど抜き出た身長で2人を

見下ろしながら話しかけてくる。


「ねーねー、君たちウチ来ない?

 どーせ安くコキ使われているんでしょ?


 あ、私の名前はシンデリン・トーリって言うの。

 ミイト国の商人なんだけど、国まで来てくれたら

 ここの3倍出してあげるから♪


 もちろん2人別々に出すわ。

 あ、でも必ず2人セットで来てね♪

 大丈夫大丈夫、可愛ければ男の子も女の子も

 区別しないからー♪」


「えっ? えっ?」


戸惑うファジーに、アルプがなんとか

フォローに入る。




「い、いえあのっ。

 僕たちはラムキュール様に雇われて

 おりますからっ」


「えー、意外と忠誠心高いのねえ。

 じゃあココ辞めたらウチ来てくれない?

 という訳でラムキュール、さっさとこの2人

 解放して」


さすがにラムキュールも頭を抱えて会話に

割って入る。


「いや別に、ここに無理やり拘束している訳では

 無いんだがな……」


「じゃあ予約しておいたから♪

 シンデリンお姉ちゃんの事、覚えておいてね。

 じゃーねー♪」


そう言うと彼女はアルプとファジーの前から

去って行き―――

嵐が通り過ぎた後のように、2人はしばらく

放心していた。




―――眷属たち回想終了―――


「むしろ忘れようったって、忘れられないよね、

 アレ……」


「ウン……ボクもそう思います、アルプさん」


「?? 何の話だい?」


アルプとファジーがお互いにうなづくのを見て、

ミモザは疑問に思って言葉を掛ける。


「い、いえ何でもないです。

 それであの、実は今日ラムキュールさんのお屋敷に

 行きましたら、しばらくお休みを頂いたんですけど」


「ん? そうなのかい?」


「来客で疲れただろう、というのと、当分は

 忙しくないからって……スタウトさんが」


「それはちょうどいいかも知れませんね。

 実際にアルプもファジー君も疲れたでしょうし……


 その間、こちらもある程度対策を練るとしましょう」


「その間は、腕によりをかけてご馳走を作るよ。

 期待しててくれ」


「あ! そういえば、あの裏庭にあった果樹の

 事なんですが、アレはフィオナ様が?」


果樹園の息子に戻った目を輝かせながら、

アルプはフィオナに質問する。


「ええ、そうです。

 今のファジー君もアルプと同じ、アタシの眷属

 ですからね。


 それで、この国に合った果実を作ってみたのですが」


「ええ、すごく美味しかったです!」


「ただウチは、アルプさんのところみたいに

 土地は広くないからなあ……


 食っていく分には十分かも知れないけど、

 売るほどは無いし」


「でも見た事もない果実だし、アルプさんに頼めば

 うまく売ってくれるんじゃねーの?」


ミモザとソルトがつい商売っ気のある話になり、

それをファジーが慌てて注意に入る。




「そ、そんな事言っちゃダメだよ、2人とも」


そんなファジーをフォローするためか、フィオナも

アルプに話しかける。


「アタシは果樹の豊穣の女神です。

 別に何も問題はありませんよ。


 アルプ、どうかしら?

 シモン君のお店で扱ってもらうというのは」


「そうですね、派手に儲けるのは今のところ

 控えていますけど、贈答用としてなら……」


「い、いやいいのかい?

 話を振っておいて何だけど。


 それに、アルプさんの果樹園で作るっていう

 選択肢もあるんじゃ―――」


さすがに気まずそうに質問するミモザに、

フィオナは応える。


「え、ええとですね……

 フラールで作るには、気候がちょっと……」


「果樹を育てるには、土地の向き不向きが

 ありますから。


 フィオナ様がこちらで作ったというのは、

 そういう事なのでしょう」


「そういや、プロどころか神様だもんな」


「そうだったね。

 余計な事言っちゃってすまない」


もちろん、フィオナには何の考えも

無かったのだが―――

ミモザとソルトがいい方向に解釈したところで、

その話は終わった。




―――2時間後―――




食事を終え、お風呂に入り―――

自分の部屋で用意されたベッドで横になっていた

フィオナは、ナヴィと神託を繋げていた。


「ねーねーナヴィ、対応策の事なんですけど。

 何かそっちでアイデアは出てます?」


(具体的な事はまだ何も。

 何より、鉱山を抑えられているというのが、

 一番キツいという話でした。


 こちらも鉱山を抑えられれば、最もシンプルな

 対応策になるらしいのですが。

 予算の規模から言って現実的ではない、と)


「ラムキュールさんが買った鉱山が

 金貨5万枚になるんですよね?


 それ以外、ですか……

 となるとここはやはり、彼らの出番では」


(また丸投げ……もとい『アンカー』ですか。


 まあ、最近はあちらともなかなか連絡を付けて

 おりませんし、情報共有のためにも一度やって

 おきましょうか)


「そうと決まれば―――

 『アンカー』は今のスレで……900!


 聞きたい事は―――

 『ラムキュールの鉱山所有に対する対応策』


 条件は……別にいいかな?


 ―――さあ、アタシを導き給え……!!」


(だから待ってください。

 条件を付けないと……!)




>>900


【    こちらも鉱山を買う    】




「……あら?」


(だ~か~ら~……)




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2219名―――


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