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17・もし怖くて眠れなかったらアタシが一緒のベッドで



日本・とある都心のマンションの一室―――


部屋の主である女神・フィオナは所用で

出かけており―――

その代わり、母親かつお目付け役の猫の

主人であるアルフリーダが家を訪れ、

従僕がその対応に追われていた。


「何でも貴方、自分から神託を繋ぐ事が

 出来るようになったって話じゃない。

 取り合えずおめでとう」


「ありがとうございます。


 これもフィオナ様のおかげかと。

 ―――ある意味」


ナヴィは、ツッコミによって神託を繋ぐ力に

目覚めた時の事を思い出していた。


「きっかけなんてそんな物ですよ。

 それより、フィオナちゃんの事なんだけど、

 地球こちらでは神様の力を使ったりしてない?


 信仰地域あちらでなら構わないけど、日本ココはそうでは

 ありませんからね」


「特に目立つ行動はしておりません。

 室内はともかくとして、外部で騒ぎを

 起こした事は無いかと」


「貴方がそう言うのなら安心ね。


 フィオナちゃんを疑うわけじゃないんだけど、

 担当の信仰地域以外で神様の力を使うと、役所が

 結構うるさいのよ」


「良くも悪くも、フィオナ様は一度目を

 付けられていますからね」


「じゃあ、食事の補充で―――

 高級カリカリとマグロジュレセット、

 ここに置いて行きますから」


紙袋を床に置くと、アルフリーダは帰り支度を始め、

その後ろからナヴィが声をかける。




「あの、アルフリーダ様……

 ちなみにここのマンション、ペット禁止じゃ

 ありませんでしたっけ。


 そういう張り紙を以前見たような気が。

 一応私、普段は猫の姿でいるので、どうした

 ものかと」


「あ、そうなの?

 ならちょっとペット可能物件に『成長』させて

 おくわね」


│ ■女神:アルフリーダ・ルールー  │

│ ■時と成長を司り、見守る女神   │


「(うおーいそれって成長って言うんかいそもそも

 神の力を信仰地域以外で使っちゃダメって)」


「よし……っと。

 これで何の問題も無いわね。


 じゃ、ナヴィ。

 引き続きフィオナちゃんの事、お願いします。

 それじゃ」


「あ、ハイ」


扉を開けて出て行く主人の後ろ姿を見送りつつ、

ナヴィは小さくため息をついた。


「……ふぅ。


 んじゃ、本編スタートしますかね……」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「フィオナ様、具合はよろしいでしょうか?」


後日―――

フィオナの回復を待って、ルコルア・バクシアと

神託カイセンを繋ぎ、状況を共有する事になった。


アルプが心配そうにフィオナの顔を見つめ、

それに対し笑顔で女神は応える。


「今回は同時に繋ぐ訳ではありませんから。

 心配かけてごめんなさい。


 ファジーもお疲れ様でした。

 では、神託を繋ぎます。

 ナヴィ、準備はいい?」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「こちらも大丈夫でしゅよ。


 ではまず、拾えた会話から伝えましゅ。

 だいたいこのような感じで―――」




―――ラムキュール屋敷・会話再現中―――


「……これが、過去10年のデータだ。


 そしてもう1つが、同じ状況をもう1回

 『作り上げた』もの―――」


ラムキュールが『客人』らに対し、資料の閲覧を促す。


「派手にやらなければ、国の介入は無いと見て

 大丈夫ね」


「多少やり過ぎてもそこはまあ、賄賂次第で

 どうとでもなるだろう。


 何せ、ここ5年―――

 この国はいい『実験場』になったからな。


 役人ごとき、少し金を積めば首を横には振らん」


「この記録を残したルコルアも、

 まさか『枠外の者』にこんな使われ方をするとは

 思いもよらなかっただろうな」


「ホント、酷い事を考える人がいるものねえ」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「……ラムキュールの他に、男が2人、女が1人か」


「予想はしてたけど、あまりいい事を話してるって

 雰囲気じゃねえなあ」


いつの間にか、ミモザの横には腕をつかむようにして

ファジーが寄り添い、そしてフィオナには同じように

アルプが密着した。


「大丈夫ですよ、アルプ。

 怖い事はありません。

 もし怖くて眠れなかったらアタシが一緒のベッドで」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「どさくさに紛れて何言ってやがりましゅか。

 とにかく、続けましゅよ」


ナヴィからのツッコミで、改めて『枠外の者』の会話が

バクシアから伝えられる。




―――再びラムキュール屋敷・会話再現中―――


「一番の月水晶ムーンクリスタルの鉱山を抑えただけで、すでに

 市場への余波は想像以上の物になっている。


 所有しただけでこれなのだ。

 もし、何らかの『トラブル』が起きれば―――」


「フラールの再来、って訳ね」


「あの時も、女神の眷属とやらの邪魔が入らなければ、

 もっと儲かったはずだ」


「で、準備はどうなっている?」


「1年以内に事を起こす。

 最も『良い』時期を狙ってな」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「……これで最後ですか?」


一通り『枠外の者』の会話を伝えたフィオナが、

ナヴィに確認を取る。


(そうですね。

 あと、マルゴットさん達がある程度、何が狙いか

 分析を進めています)


「うん、一応それも話してください。

 わかっているところだけでいいので」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「……フィオナ様に取ってはお耳汚しでしょうが、

 どうか耐えて聞いて頂きたい」


ローン・ボガッドが深くため息をつくと―――

これまで分析した事を語り始めた。


「まず、過去のデータを調べている事、

 “同じ状況をもう1回『作り上げた』”

 と言っている事から、


 おそらく、何らかの事故やトラブルが起きた時の

 状況を、再現していたのだと思う」


(事故やトラブルの再現?

 何のためにそんな事を)


フィオナが聞き返すと、今度は同じ商人である

マルゴットが応えた。


「商売ですから、多分―――

 どのような事故、どのような状況になれば、

 鉱石や製品の値段が上下するか、調べて

 いたのかと」


「値上がる物があらかじめわかっていれば、

 ある程度ストックして、高値になった時に

 売り払う事も可能……という事ですか。


 しかし、鉱山は国の管理下にあるのですよ?

 もし調べられたら」


バートレットの疑問に、再びローンが応える。


「だから、“派手にやらなければ国の介入は無い”

 と言っているのだろう。


 何度か再現実験を繰り返し、ギリギリのラインを

 見極めていたのだろうな」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「それで、5年間にも渡ってデータを

 取っていたって訳か」


呆れたような声で、ソルトが感想を述べる。


「ふざけんなよ……

 アタイらの国は、連中の玩具おもちゃか何かか!?


 その『ギリギリのライン』とやらで、

 どれだけ儲かるか試してたってのかよ!」


「ミ、ミモザ姉! 落ち着いて」


怒りをあらわにするミモザを、弟が止める。


「―――すまない、フィオナ様。


 それで、わかっている情報はそれだけかい?

 連中の素性とかは?」


「どうなの? ナヴィ」


(それはこれから調査するとの事です。

 まず、ラムキュールの近辺から―――)


「なるほど。

 それはそちらの方が詳しいでしょうし、

 お願いします」


(しかし、結構込み入った話になってきてますのに、

 よく付いてこれてますね? フィオナ様)


「(バカにしないでください!

 わからないところはスルーで、後で貴方に聞く

 予定ですから)」


(それがダメだって言っているんですけどねえ……)


「あ、あの、でも女の人の方は多分わかります」


「む?」


突然のアルプの発言に、思わずフィオナが聞き返す。


「あの、屋敷からお客様が出ていく時に

 話していたのを聞いたので―――


 名前はシンデリン・トーリ。

 ミイト国の方だそうです」


ファジーが続けて情報を提供する。

そしてそれはそのまま、バクシアへも伝えられた。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「トーリ家の者が絡んでいるのか。

 それならば、今回の鉱山購入が可能な財力も

 うなづける」


「序列3位のミイト国の商人ですからね。

 厄介な相手だわ……


 でも名前がわかったのは大きいわね。

 お手柄よ、アルプ、ファジー君」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「そういえば実際に潜入していたのはアルプさんと

 ファジーだったね。

 やるじゃん、2人とも」


ミモザの明るい声を最後に―――

いったん神託は閉じられる事になった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2184名―――



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