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15・裏庭に埋める……ですか?



日本・とある都心のマンションの一室―――


女神と1匹のお目付け役が、コタツに入って

くつろいでいた。


「そういえば地球こちらでは年末って、

 大掃除とかいうイベントがあるそうですが、

 しましたっけ?」


「ん~……?

 でも、普段はママが来て掃除とかは

 やっといてくれるから」


「ダメですよ。

 少しはご自分でやっておきませんと。

 フィオナ様しか使っていない物とか、

 わからない事とかあるでしょうし」


「はいはーい。

 でもほとんど片付いてるしなあ。


 あ、さすがに冷蔵後の中までは

 手付けてないかな?」


思い出したかのようにコタツから出ると、

確認のために冷蔵庫の前へ向かう1人と1匹。


そして冷蔵庫を開けて、中をのぞき込む。


「んー、コレと言って変化は無いですねえ。

 料理もあれ以来、簡単な物しかしてませんし。


 ……あれ?」


「どうしました?」


「何か無くなっているような……


 えーっと……


 あ!」


声と同時にフィオナは立ち上がると、バタバタと

慌ただしく動き始める。

そして、天界じっかへ連絡を繋げた。




「もしもし!? ママ!?

 あの、冷蔵庫の中に置いてあった、

 ラップをかけたお皿持っていった!?」


「まさか28話(2章14話目)で作ったアレか!?

 ちゃんと『食べるな危険』ってメモ貼っとけって

 言ったでしょーが!!」


焦りまくる1人と1匹に対し、きょとんとした声が

返ってきた。


『ああ、あれ? ウン食べちゃったわ。

 だって、娘が初めて作った手料理だと思ったら……

 パパと2人で、つい』


「え、ええと……大丈夫だった?

 その、お体の具合とか」


『?? 美味しかったわよ、普通に』


その言葉に、少女と猫は顔を見合わせる。


「(ど、どういう事でしょうね?

 毒が裏返った?)」


「(自分で毒ゆーな。

 まあ確かにお変わりないようでしたら、

 無難な料理に変化していたんじゃないですかね?)」


『まあ、勝手に持っていったのは謝るわ。

 でもパパ、すごく喜んでいたから。

 今度は天界じっかでパパの前で作ってあげなさい』


「は、はーい……

 じゃあまたね、ママ」




│ ■天界・フィオナの神殿じっか  │




「元気でやっているようで何よりね。

 でも、最初は何だか慌てているみたいだったけど、

 何だったのかしら?


 そういえば―――

 フィオナちゃんの手料理をパパと一緒に食べたのに、

 パパだけその前後の記憶が無いとか言ってるのよね。

 食べる前はあんなに大喜びしてたのに。


 あ、そろそろ本編スタートするわね」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




夕暮れとなり―――

アルプとファジーが帰宅し、食事の時間まで

一休みしている間に、フィオナはバクシアと

神託を繋げて状況を共有していた。


「ええ、後で皆でまた詳細はお話ししますが―――

 ナヴィが、自分から神託を繋げられるように

 なったと……

 これを使わない手はありません」




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「私も驚きました。

 ですが、こちらからも連絡が出来るように

 なったのは確かに大きいと思います」


ボガッド家屋敷では、神託を繋ぐナヴィ、

そしてマルゴットとバートレットが話を

聞いていた。


「今までは受け身で神託を下されるだけでしたからね。

 それでも十分すごい事ですが……

 ナヴィ様の尽力じんりょくに感謝いたします」


「(ツッコミで無理やり自分から神託繋げられるように

 なったなんて死んでも言えないですよこのダ女神)」


(ま、まあ、結果オーライという事でね?)


「でもこれで、私、フィオナ様、アルプしゃん・

 ファジーしゃんと同時並行して会話が出来るように

 なりましゅた。


 特に潜入出来るようになった今では、かなり有効に

 働くと思うでしゅよ。


 ……ン? 何か聞きたい事でも?

 奉公労働者について、でしゅか?」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「ええ、今回は普通の労働者として、

 アルプとファジーは受け入れられているみたい

 ですけど―――


 それなら、どうして『奉公労働者』なんて制度が

 残っているのか気になりまして。


 こう言っては何ですけど、奴隷制一歩手前ですよね?

 アレは」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「……そもそも、奴隷制そのものは、廃止されたのは

 かなり昔の事です。


 ただその時―――

 経済的に危機におちいったり、

 大規模な飢饉ききんが発生した場合に備えて、

 年期を定めた奉公制だけが残りました」


「商人の私が言うのも何ですが―――

 何の得にもならないのに、人を救おうとする人間は

 あまりいません。


 となると、その者には餓死か犯罪に走るかしか

 道は残されておりませんので……」


バートレットとマルゴットの説明に、お目付け役は

理解と納得と共にうなづく。


「うみゅう、最後のセーフティというところでしゅか」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「わかりました。

 こちらの世界については無知な事も多いので―――

 これからもよろしくお願いします」


そう言って神託を切ると同時に、ミモザが扉越しに

声をかけてきた。


「オーイ、フィオナ様。夕食の用意が出来たぜ」


「あ、ハイ。すぐに行きます」




│ ■ファジーの家・食卓       │




「へえ、ラムキュールの部屋までわかったのか。

 そりゃあお手柄だね」


食事をしながら、ミモザは弟の健闘を素直に称える。


「でも、スタウトさんにあまり近付かない方がいいって

 注意されました。


 まあ確かに、ボクも気難しい人だと思うけど……」


「忍び込んで書類とか取ってこれれば完璧だけど、

 まだそこまでリスクのある行動を取る必要は

 ねーわな。


 じっくりやっていこうや」


「アルプはどうですか?

 疲れてはいません?」


フィオナは、初めての眷属の彼を心配して話しかける。


「僕は基本屋外でのお仕事がメインになりそうです。

 ただ、果樹園が家業でしたので、さほど問題は

 ないと思います。


 それに、誰かが出入りした時などはすぐわかります。

 今のところ、これくらいしかお役に立てそうな事は

 ないですけど……」


「いやいや、家の中と外の状況が同時にわかるって、

 それだけでも反則だぜ?


 あとナヴィ様がいるんだろ?

 3人で諜報活動したら、わからない事なんて

 無いんじゃねーか?」


「あ、その事なんですけど―――

 後でバクシアと神託を繋ぐ時に、試したい事が

 ありまして。


 アルプ、ファジー。

 ちょっと協力してもらえるかしら?」


フィオナの言葉に、アルプは立ち上がり

うやうやしく頭を下げる。

続いて、それを見たファジーも真似をするように

慌てて同じ仕草を見せた。


「どんな事でも、仰せのままに」


「は、はいっ。

 アルプさんと同じく―――」




│ ■ボガッド家屋敷      │




夕食後、1時間くらいして―――

ナヴィ、マルゴット、バートレット、そして

屋敷の主人であるローンと、諜報役のトニックが

テーブルを囲んでいた。


「……今、フィオナ様を通じて私から神託を

 繋げていましゅが……


 聞こえましゅか?

 アルプ君、ファジー君」




│ ■ファジーの家・食卓       │




「は、はい!

 聞こえます、ナヴィ様!」


「バクシアにいるナヴィ様から直接……!?

 こんな事も出来るんですか」


アルプとファジーの反応を見て、ミモザとソルトも

目を丸くする。


「ナヴィ様って、そんな事も出来たのかい?」


「いえ、出来るようになったのはつい最近の

 事だそうです」


「まさか、神様の使いともあろう方が―――

 俺たちのために努力して……?」


「か、彼も彼なりに思うところがあったのかと。

 常に修行をおこたらない性格ですので、ハイ」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「ま、そういう事にしておくでしゅ。


 神託カイセンの状況も良好のようでしゅし―――

 私から、アルプ君、ファジー君の見聞きしている事も

 手に取るようにわかるでしゅよ。


 ではテストはこれくらいにしゅて……

 フィオナ様? フィオナ様、聞こえてましゅか?」




│ ■ファジーの家・食卓       │




「う、う~ん……

 ちょ、ちょっとコレ……結構体力使うような」


「大丈夫かい、フィオナ様。

 ずいぶん疲れているみたいだけど」


小さく肩を上下させながら、フィオナが呼吸を荒くして

応え、それを見て周囲は心配な視線を向ける。


「(さすがに同時接続は体力が要るみたいですね。

 その事についてはおいおい慣らしていきましょう)」


「あ……♪

 でも3人を相手にして起き上がれないくらい

 疲れちゃう状況って何かすごくエロくて

 ハァハァ」


「はい? ナヴィ様?

 え? 裏庭に埋める……ですか?

 いえその、いくら果樹の豊穣の女神様でもそれで

 体力回復するんですか?」


ナヴィからアルプへの伝言に、フィオナは慌てて

反応する。


「わ、わかりました!

 わかりましたから、そろそろ神託を閉じましょう!

 それじゃお休みなさーい!!」



焦って逃げるように神託を閉じると―――

いったんお開きにして、明日に備える事になった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在2161名―――



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