14・こんな事で限界を超えたくなかった
明けましておめでとうございます。
本年が皆様に取って良いお年で
ありますようにm(_ _)m
こっちも失業保険が切れる前に
仕事見つけないと(;・∀・)
日本・とある都心のマンションの一室―――
床に転がって小さくうめくフィオナに、
お目付け役の猫が心配して近寄る。
「……どうしたのですか新年早々。
足でも痺れましたか?」
「いや、ホラ、あの……
足を内側にひねっちゃって、グキって」
「どちらの足ですか?
早く手当を―――」
「両足」
ナヴィは少し首をかしげて、言葉の意味を理解
しようと努めるが、やはりわからない。
「どうやってそんな器用な事を?」
「えっと、最初は右足を内側にグキって
やっちゃったんですけど―――
右足をかばってもう一歩だけ歩いたら左足も
内側にグキって……」
「何この面白い生き物」
「面白がってないで、痛み止めとか湿布とか
持ってきてくださーい!」
「お言葉ですがフィオナ様、神様モードを解除
しているのですか?
以前、風邪を召された時も神様モードになれば
治りましたよね?」
「あ、そ、そっか……
気付かなかった」
「何この面白い生き物」
「も、もういいですからっ!
そろそろ本編スタートしましょうっ」
│ ■ルコルア国 │
│ ■ラムキュール・ジン屋敷 広間 │
「おはようございますっ」
「お、おはようございます」
早朝―――
アルプとファジーの2人は、約束通りラムキュールの
屋敷に来ていた。
もちろん、フィオナとの神託を繋げている状態で。
「お早う。
じゃあ、さっそく働いてもらおうか。
・
アルフは庭の雑草むしり、ファラは―――
うーん……」
「?? どうしたんですか、スタウトさん」
うなり出すスタウトに、ファジーは不安そうに
声をかける。
「いや、来客でもあればお茶を運ぶとか
料理を片付けるとか、いろいろあるんだが。
今はこれと言って何もないし……」
困ったように考え込むトラウトを前に、
フィオナからアルプに神託が舞い込む。
(アルプ、そこのトラウトさんにお願いしてみて
くれませんか?
『屋敷内を案内して頂けませんか?』って。
屋敷は広いみたいですし、慣れておくためにと)
「(わ、わかりました)
えっと、あの―――
では、屋敷内を案内して頂く、というのは?
妹の方は室内の仕事になりそうですし、
慣れておくためにも、見ておいた方が……」
「なるほど。
時間のあるうちに、覚えてもらうってのもアリか。
じゃあ、ちょっと一回りしてくるか。
付いてきてくれ、ファラ」
「は、はいっ」
「アルフはあっちの庭で草むしりを頼む。
取った草はどっか適当に一か所に集めてくれ。
回収はゴミを回収する担当の業者がやるから」
「わかりました」
こうして、アルプは庭へ、ファジーは屋敷内を
案内してもらう事になった。
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
(フィオナ様、これでよろしいですか?)
「上出来ですよ、アルプ。
やはり貴方は優秀な眷属です」
(い、いえそんな。
あと、出来ればファジー君の方も気にかけてあげて
頂ければと)
「心配しなくても大丈夫です。
2人とは同時に繋がっていますから」
(すっ、すいません!
余計な事を言ってしまいました。
お許しくださいっ)
「気にしないでいいのですよ、アルプ。
今はお仕事に集中してください」
(はい、では……)
アルプとの会話をいったん切り上げると、
フィオナは視線を上げてミモザ・ソルトと
顔を合わせた。
「上手くいったみたいだね」
「貴女たちのアドバイスのおかげです。
ありがとう、ミモザさん、ソルトさん」
「いや、フィオナ様あっての成果だよ。
すぐに状況がわかって、すぐに情報を整理して
指示を与えられる―――
こんなの、アタイらだけじゃ考えもつかない
事だからね」
「わかっていてもめちゃくちゃな能力だよな、コレ」
ソルトはため息を付きつつ、改めてその能力のすごさを
思い知っていた。
「でも、アタイに取っちゃ、あのコ―――
ファジーの様子がいつでもわかる、というのが
嬉しいよ。
すごく安心する」
「その気持ちはわかります。
昨夜のバクシアとの神託でも、マルゴットさんが
アルプの事を心配してましたからね」
それを聞いて思い出したのか、ミモザが神妙な顔付きで
フィオナに提案する。
「なあ、その事なんだけどさ。
神託って、バクシアと繋げたまま、さらに
こっちでも、ってのは出来ないのかい?
アルプさん、フィオナ様、ナヴィ様と同時に―――
マルゴットさんの気持ちも痛いほど
よくわかるからさ……」
「んー……アルプやファジーのような眷属であれば
多分問題は無いと思うんですけど……
ナヴィはアタシの眷属じゃなくて、ママの従僕
なんですよ。
なので、出来るかどうかは確証が……
今夜、バクシアと神託を繋げた時に一応
ナヴィに聞いてみましょう」
「ありがとう、お願いするよ。
何か喉乾いたな……ソルト。
お茶持ってきてくれない?」
話が一段落したところで、会話の流れを
ミモザが変える。
面倒くさそうに、それでもソルトが席を立って
部屋を後にすると、ミモザは言いにくそうに
口を開いた。
「あ、あの……さ。ところで……
ナヴィ様って、その、実際のところ―――
フィオナ様とはどういう関係なんだい?
サポート役とか付き添いとか、そういうのは
聞いているけど」
「?? そうですねえ。
今、アタシは親から離れて、彼と同居しているん
ですけど……」
「ど、同居?」
「基本的には、食事も寝る時も一緒ですね。
お風呂はさすがに拒否されますけど。
寝る時は、アタシが寝た後に布団に入ってきて―――
上に乗ってきてそのまま朝まで……とか」
「上に乗ってきて!?
あ、朝まで!?」
(オイコラ駄女神。
ちゃんとそれは猫Verの時だって説明しろや)
そこへ、話題の人物から神託を繋げられた。
「(ナ、ナヴィ!?
貴方、自分から神託を……!?
限界を超えたのね!?)」
(こんな事で限界を超えたくなかったですけどね。
それより、早く誤解を解いてください。
そうしなければ―――)
「(し、しなければ?)」
(アルフリーダ様から聞いていた、
貴女が小さい頃に初めて覚えたえっちな単語とかを
眷属に通達する―――)
「(な、何て恐ろしい真似を……!
ていうか何でそんな事ナヴィに言っちゃうの
ママ―――!!)」
「な、なあフィオナ様、大丈夫か?
すっごい汗かいているけど、熱でも」
心の中で神託を繋げて焦っているフィオナの様子に、
ミモザが心配して声をかける。
「え? あ、ハイ。
ええと、あの……ナヴィと一緒に同居してるのって、
基本猫の姿のナヴィとですからね?
あちらだと、人間の方の姿は目立つので」
「へ? あ、そ、そうかい。
そういや元猫だって言ってたもんね。
まあ、確かにあの美形さんの姿じゃ目立つわなあ」
そこへ、ソルトがお茶を用意して入ってきた。
そこで見た物は、2人の女性がテーブルの上に
顔を突っ伏している姿で―――
「おーい、お待たせ……って、何疲れたような
顔してんだ? 2人とも」
「あ、いや何でもないよ。
ちょっと気が抜けたっていうか」
「ひ、一息入れましょう。ミモザさん」
│ ■ルコルア国 │
│ ■ラムキュール・ジン屋敷 広間 │
「さてと、これで大体回ったな。
お疲れさん」
「い、いえ。
ありがとうございました」
ちょうどその頃―――
ファジーの変装・ファラは、屋敷内を一通り
案内され、広間まで戻っていた。
「後は、そうだなあ……
ホウキを渡すから、適当に廊下とか
掃除して回ってくれ。
後、注意する点としては―――
2階のあの屋敷の主人、ラムキュール様の
部屋だけど、あまり近付かない方がいい。
脅かすつもりは無いけど、結構気難しい人なんでな。
機嫌損ねて、クビになるのも嫌だろう?」
「わ、わかりました」
「まあ、あまり顔を合わせる機会も無いと
思うけどな。
じゃ、俺は俺の仕事があるから」
「はい、それではまた―――」
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在2144名―――