08・ナヴィ←→アルプ
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今後ともよろしくお願いいたします。
日本・とある都心のマンションの一室―――
「ふぅ、今日も1日ノルマ達成」
フィオナが飲み終えた紙パックの飲料を見て、
お目付け役(猫Ver)が声をかける。
「最近よく豆乳を飲んでますね。
そんなに好きでしたっけ?」
「まあちょっと、未来への投資ってゆーか」
「??」
そこに、2、3冊本が転がっているのが
ナヴィの視界に入ってきた。
「……『バストアップのための食材』?
『胸を大きくする栄養素とは』?」
「……ナヴィ、今アタシの事を笑ったか……?
『無駄な努力』とか思わなかったか……?」
「そんな事は思ってもみませんよ。
『無駄な抵抗』とは思いましたが」
「正直ですね。
ちょっとこれから『お話し合い』しましょうか。
ちなみに言語機能は不要だゾ♪」
フィオナがドス黒いオーラを全身にまとい、それを
ナヴィがそよ風のようにスルーしていると―――
どこからともなく声が部屋に響いた。
『何やってるのよフィオナちゃん。
ナヴィ、貴方も煽るのをやめなさい』
「あ、ママ―――」
「申し訳ございません、アルフリーダ様」
母であり主人である存在の出現に、2人はいったん
停戦する。
『まったく……私の娘であるなら、未来は
約束されているんですから、そう焦らない
事です』
「そ、そうですよね!
アタシはママの娘なんですから、
放っておいてもいずれは―――」
「まあ仰る通りでしょう。
アルフリーダ様も、最初からその体型で
あったはずはありませんから」
『あら?
でも私がフィオナちゃんくらいの頃って……
あ 』
―――無言で10秒経過―――
「何? ママ。
『あ』って」
『ご、ごめんなさい。
でもほら世の中、そういうのが好きって人も
いるから……
頑張れ頑張れ!
……うん、頑張れ』
「何ですかそのダメ出し!?」
「では、そろそろ本編入りましょう」
「ちょっと待って!?
このまま聞き捨てならない事を放置して
いくわけにはあぁあああ!!」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
>>400
【 ルコルアへGO! 】
「(ほら、ちゃんと条件を限定しないから。
『バクシアで待機してもらうか否か』
で良かったんですよ)」
想定外の行動を選ばれた事で、女神はお目付け役に
ツッコミと説教を入れられる。
「(むううぅうう、
どうして最も選んで欲しくない選択肢目がけて
最短距離で来るんですかこのアンカーどもは)」
【 相手の目を欺くには、まず味方からw 】
【 ルコルアでも連絡取り合えるようにするのは、
あながち間違ってないんじゃないか? 】
「(ん~……)」
取り合えずフィオナは、アンカーで決められた行動を
おずおずと人間組に話してみた。
「へ!?」
「あ、アルプ兄ちゃ……アルプさんをここへ
呼ぶんですか?」
今の雇い主をここへ呼ぶというフィオナの提案に、
姉弟は戸惑いの表情を見せる。
「いや、バラけていた方がいいんじゃねーか?
そもそも、アルプさんがバクシアにいた方が
いいって話で……」
怪訝な顔をする3人に、女神はそれでも
意見を続ける。
「い、一応考えがあっての事ですので。
……? アルプ、どうしました?」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「あ、フィオナ様。
いえその……こちらに来ているトニックさんが
そちらへ行くのを拒否していまして」
アルプと母であるソニアは、部屋の片隅で
震えながら土下座するトニックを心配そうに
見つめていた。
「困ったわねえ。
でも、ルコルアのファジー君の家までは
誰か案内がいないと……」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「はあ、そうなんですか?」
「あー……トニックのヤツ、どうもフィオナ様が
苦手みたいな事言ってたな」
ソルトが理由を推測して述べると、姉弟がそれに続く。
「そんなワガママ聞く必要ないって。
首に縄付けてでも引っ張ってくれば―――」
「でもミモザ姉、その引っ張られる人が案内人
なんだけど……」
いきなり暗礁に乗り上げた感のある提案に、
お目付け役の声が割って入った。
「仕方がないでしゅね。
ではソルトしゃん、私と一緒に一度、
フラールのアルプ君の家まで戻りましょう」
「え? ナヴィ?」
突然のナヴィの言葉に、フィオナが振り返る。
「しょこで合流した後、私はトニックしゃんと一緒に
バクシアへ―――
ソルトしゃんはアルプ君を連れてルコルアへ
戻ってきてくだしゃい」
「そりゃ別に構わねーけど……
だけど俺にはラムキュールを調べるって
仕事が―――」
「どうせまだ大した情報は得られないだろ。
でもナヴィ様、バクシアへ行くって
大丈夫なのかい?
確か制限があるんじゃ」
「私はフィオナ様のような神ではなく、その母である
アルフリーダ様の従僕でしゅから。
比較的制限なく動けるんでしゅよ。
しょれに、眷属と同じように神託を受ける事が
出来ましゅ。
あとバクシアの方々に一度顔を通しておいた方が―――
今後いろいろとやりやすくなると思いましゅので」
一通りの説明を聞いて、姉弟と情報屋の男は
安堵した顔になる。
「なるほど、ナヴィ様がバクシアから、
情報を伝えてくださるという事ですねっ」
「それなら話はわかるな。
バクシアへ案内するのは別に俺でもトニックでも
どっちでもいいわけだし」
「そういう事なら―――
やっぱり、ちゃんと神様ってのは
考えているんだねえ」
人間組がナヴィの説明に理解と納得が出来たようだと
わかると、女神は心の中で彼に礼を述べた。
「(あ、ありがとうナヴィ……!
これで面目は保たれたわ)」
「(あまり世話焼かせないでください。
それより、きちんと連絡をこまめに取るように
してくださいね)」
「(?? あれ?
貴方、自分で神託つなぐ事が出来たんじゃ
なかったっけ?)」
「(アレは異世界の眷属に対して、フィオナ様の神託を
つなげる事が出来ただけ―――
言ってみればサポートに過ぎません。
同じ世界で、私からフィオナ様に神託をつなげる事は
出来ませんよ。
だからこそ、きちんと連絡を取るようにと
申し上げているんです)」
「どうしたんだい? フィオナ様、ナヴィ様。
まだ何か問題でも―――」
「い、いえっ、何でもありません。
では取り合えず今日はこれまでにして、
明日から行動に移りましょう」
「はいっ、フィオナ様!」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
そしてフィオナは―――
ルコルアでまとまった話をもう一人の眷属である
アルプに伝えた。
「はい。事情はわかりました。
ナヴィ様がバクシアへ行かれるんですね?
はい……はい……
ではいったん合流してから、という事で。
はいっ、お待ちしております!」
そして神託が閉じられると同時に、
部屋の隅でイスを頭にかぶって伏せている
トニックに声をかける。
「あの……先ほどフィオナ様からの神託が
ありまして……
ナヴィ様とソルトさんがここに来られる
みたいですので、合流したらナヴィ様を
連れてバクシアへ行って欲しいと……
あの、聞こえてますか?」
「へ? じゃあ俺はルコルアへ行かなくても
いいって事ッスか?」
「はい。ルコルアへは―――
ソルトさんが案内してくださるそうで。
トニックさんはまたバクシアへ戻ってもらう
事になりますけど、ナヴィ様をその時に
案内して欲しいとの事です」
トニックはそれを聞くと、全身の力が抜けたように
五体を床に平行に突っ伏した。
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「では、バクシアできちんと役目を果たして
くださいね、ナヴィ」
「正直なところ、貴女をここに残していくのが
一番の不安なのでしゅけどね。
ミモザしゃん、もしフィオナ様が不審な動きを
見せた時は、殴ってくだしゃい、グーで」
「とても神様への対応とは思えないんだけど……」
「とと、とにかく話はまとまったという事で―――
明日に備えましょうっ」
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在2018名―――