29・全滅一歩前牧場ってところ
( ・ω・)金曜日の夜徹夜しただけで、
土日が行動不能に(老人)
天界・フィオナの神殿―――
娘とその娘婿、そしてもう一人の妻から
馴れ初めを聞かれたユニシスとアルフリーダは、
ぽつぽつと話し始めた。
「そうね。アレは神様としての仕事を始めてから
数百年くらいの事だったけど……
私もまだ若かったわねえ、あの頃は……」
―――アルフリーダ回想中―――
「しかし、なかなかに詰んでいる世界ですね、
ここは。
敵が精神体で、それが人の住んでいる国々を
浸食しつつある―――
疫病並みに厄介な状況ですねえ」
アルフリーダが派遣された世界。
そこは、『マガツモノ』と呼ばれる精神生命体が
人々や動物の体を乗っ取り、
すでにその勢力は世界の三割以上に達し、
なおも拡大し続けていた。
「魔王とか魔物ならともかく、こういう
感染というか憑依系って、交渉も目に
見える攻撃もないから―――
『気付いた時にはもう遅い』って事に
なっているんですよねー。
徹底的に隔離してしまえばいいんですけど、
なかなかそうも」
増殖し続ける脅威に対抗するには、
物理的な遮断をする必要がある。
しかし、動物や無機物ならともかく、
人の出入り……
ましてや避難してくる人間を止めるのは、
それなりの労力と非情な決断が必要であった。
「取り敢えず、どっかの国のお偉いさんとでも
会わなければならないんですけど」
そしてアルフリーダの目の前には、大きな壁で
囲まれた街か都市があり、
その門は固く閉ざされていた。
「これを越えるくらいは楽勝なんですけど、
権力者って、強力な力は欲しがるか怖がるか
どちらかですからねえ。
まずは一般人として入り込むのが一番
いいんですけど、どうしたものかしら」
それまでにもいくつもの世界を渡り歩いて来た
アルフリーダは、人間世界の事情やしがらみ、
業と呼ぶべきものにも精通しており、
考えあぐねていた。
―――アルフリーダ回想終了―――
「な、なかなかヘビーな世界だったんですね、
パパのいた世界は」
「僕の世界は『枠外の者』がやりたい放題
していましたけど―――
魔物とかそういう脅威は一応、対策されて
いましたからね」
フィオナが夫であるアルプと一緒に、
目を丸くして驚き、
「いやーもーホント。
私が降臨した時点であの世界、
全滅一歩前牧場ってところだったしー」
「まあ、そうでもなければママのような
神様なんて、送り込まれてこないだろう
からねえ。
僕も神様やって長いから……
今だからこそわかる、って感じかな?」
女神であるアルフリーダの後に、
軍神であるユニシスが、しんみりした
表情で語る。
「そっそれで―――
お義母様が、お義父様に出会ったのは」
メイが本題に切り込むと、
「まあまあ、焦らないで焦らないで……
ちゃんとそのへんは話すから」
そしてアルフリーダは話の続きを始めた。
―――アルフリーダ回想再開―――
「ま、とにかく『マガツモノ』を1匹か2匹ほど
倒して―――
サンプルを手に入れましょうか」
街に入るのを諦めた彼女は、まずこの世界の
脅威である相手の情報を入手するため、
不穏な気配のする森へと入っていった。
「……ん?」
森に入って小一時間もすると、争うような
声と音がして、
「こっ来ないで!!
何で、何でこんなのがっ!」
「(子供の声?
女の子、じゃない―――
少年かしら?
とにかく助けないわけには
いかないわよねえ)」
アルフリーダは声のする方向へ急行し、
そしてそこで彼女が見たものは、
さながらゾンビ映画よろしく、『マガツモノ』に
憑依された大人数体に襲い掛かられている、
褐色肌の少年の姿だった。
「……むっ?」
そこでアルフリーダは違和感を覚えた。
『マガツモノ』に浸食された人間は、すでに
理性を失った、いわばゾンビそのもの。
しかし少年の周囲には、すでに倒されたであろう
数体の『マガツモノ』がいて、
「と、とにかく助けないと―――
少年、伏せなさい!!」
そして彼がしゃがむのと同時に、彼女は
『神』としての力を行使し、
「『マガツモノ』に憑依される前に
戻りなさい……!!」
│ ■女神:アルフリーダ・ルールー │
│ ■時と成長を司り、見守る女神 │
女神としての力―――
時間を逆行させ、その場にいた人間たちを、
『マガツモノ』以前の状態に戻すと、
彼らはただの死体となり、その場に倒れ込んだ。
「……やっぱり、元の姿に生きたまま戻る、
なんて都合の良い展開にはなりませんか。
坊や、大丈夫?」
アルフリーダはその、十才を少しも過ぎていない
彼に声をかけると、
しゃがんでいた少年は恐る恐る顔を上げて、
掴んでいた短剣のような武器を手から落とし、
「……あ……
……女神、様……?」
黒髪黒目に、やや日焼けしたような褐色肌の
少年と目が合った時―――
彼女に落雷を受けたかのような衝撃が走った。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在8767名―――
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