24・飼育員が栄養管理する的な何か
( ・ω・)取り敢えず400話までは
続けようかなあと思っている(惰性)
日本・とある都心のマンションの一室―――
黒髪セミロングの少女が、手持ちの端末に
向かって何事か話していた。
「えっ!? あ、いえ……
あの子たちは親戚の子でして。
ええ、はい、はい。
いえそういうお話は全てお断りして
おりまして―――
はい、申し訳ありませんが……
失礼します」
そして通話ボタンを押して会話を終わらせると、
ふぅ、と一息つく。
「どうしたんですか? フィオナ様」
銀のロングウェーブの同年代の少女が、
女神に話しかけると、
「あ~、メイさん。
いえね、芸能事務所からです。
ほら、テレビで歌ったり踊ったりしている
人たちがいるでしょ?
ああいうところからお話がありまして」
「ええ、わたくしも時々ここに来ている時に
見ていますけど―――
いわゆる吟遊詩人や踊り子さんみたいな
ものですよね?
でも何でそんなところから?」
メイが不思議そうに首を傾げると、
「それは……
アタシたち2人の夫、アルプきゅんの事で、
ここに来る以上、外出で誰かの目に触れるのは
避けられないのですが―――
こっちの国だと外人さんの上可愛い系美少年
でしょ?
そりゃあスカウトさんも来ますって」
「えっ!?
じゃあ今の電話は、アルプ様の事を
歌って踊れるアイドルにしませんかって
お誘いだったんですか!?」
第三眷属の妹の問いに、女神はうなずき返す。
「今、アルプきゅんは……?」
「外出で少し疲れたのか、向こうで寝て
いますけど―――
でもどちらにしろ、アイドルにさせる気は
無いんですよね?」
そこでフィオナは天井を見上げて、
「アタシの夫になりましたから、この異世界に
来る事を許可されていますけど……
本来、この世界で目立つ事は禁じられて
いますからね。
だから断る一択!
というのは間違っていないんですが」
「?? 何か問題でも?」
再び同じ夫を持つ彼女が質問を向けると、
「いやまあねえ?
つまりこういう事ですよ」
と、女神は自分の端末であるスマホの画面を
メイに向けて、
「つまり! この! このような!!
そのルックスで!
歌で! 踊りで!!
世の女性たちをキャーキャー言わせる、
人気絶頂美少年系アイドルに!!
なれるかも知れないという事ですよ!!」
そこには二次元のアイドル系ソシャゲーの
男性アイドルキャラが表示されていて、
「そ、そしてその奥さんがわたくしたち……!」
「わかりますかそのプレミアムが!!
貴様らがヨダレを垂らして推している
その美少年は!
すでにアタシらのものなんだよぉおお!!
というマウントが取れるわけです」
そして二人は何かに合意したように、
がっつりと交互に腕を回し、
「それで、これからどうされるおつもり
ですかフィオナ様?」
「本来であればここでママに連絡を
入れて―――
スカウトに来た人間や事務所の記憶を
消し去る、というのが常道です。
しかし、そもそもアタシたちにそんな権限が
あるのでしょうか?
当人の意見も聞かずに、というのは……
やや乱暴な気もするのです」
そこで二人はうなずき合い、
「ですので、ここは1つ―――
愛する我が夫の意見を聞いてみるのは
どうでしょうか?」
「そうですね。
スカウトのお話自体は、旦那様に来たの
ですから……
そこでわたくしたち妻も相談に乗って
差し上げて説得―――
もとい選択の手助けをしてもいいのでは
ないかと思われます」
フィオナとメイはすでに、アルプをアイドルに
する方向で誘導する事に決め……
そして二人で夫が眠っている部屋へと向かう。
「旦那様~♪
いいお話があるんですけど~♪」
「ええ決して悪いお話ではございません。
もしご決断なさるのであれば、わたくしたちも
妻として全面的にバックアップする所存で」
そしてドアを開けると、そこにはソファに
横たわるグリーンの髪の少年がすやすやと
眠っていて、
「おぉお―――
相変わらず破壊力の高い寝顔……!」
「確かにこれは偶像……!
世の女性の心をわしづかみにして離さない
尊さですわぁあ……!」
二人して妻たちは、自分たちの夫の寝顔を
称賛していると、
「……ん……
……フィオナ様ぁ……
メイお姉ちゃん……
……もう食べられないよぉ……♪」
アルプが寝言で何か話すと同時に、彼女たちを
強烈な光が貫き、
「(……っ!!
こ、これは危険過ぎます!!
退避、退避ー!!)」
「(尊さが限界突破しております!!
ここはもう持ちません!!)」
何かに追い立てられるように、二人は
部屋を飛び出すと廊下に両ひざをついて、
「はぁはぁ……
あ、危なかった―――
危うく浄化され尽くすところでした……」
「光に照らされて闇が浮き彫りになった―――
ハッ!?
わ、わたくしたちは一体何を!?」
そこで彼女たちは両手を床につけたまま
顔を見合わせ、
「取り敢えずママに連絡を入れましょうか、
メイさん」
「そうですね。
そのスカウトや事務所から、旦那様の記憶を
消して頂く方向で……
それではそろそろ、本編スタートしましょう」
│ ■フラール国・ビューワー家館 │
「はあ、あちらの人外の方々との面会を」
「あ、ナヴィ様の奥様たちなんですね。
しかし6人ってスゴイ……」
ホワイトシルバーの短髪をした伯爵の青年と、
その妻である真っ赤なロングヘアーの女性が、
共に相槌を打つ。
「まー1人はご存知カガミさんなんですけど」
「彼女は一番最後に突っ込んで来たと
いいましゅか―――
そのあたりはいろいろありましゅて」
女神・フィオナと従僕である銀髪の美少年・
ナヴィが、飲み物に口をつけながら語る。
「しかしまあ、うん。
大丈夫なんでしょうね。
このようなポーションがあるくらいですから」
「本当にこれ、効きますわ。
疲れが吹き飛ぶといいますか。
毎回持って来て頂いて、感謝しております」
バーレンシア侯爵夫妻に持って行ったお土産と
同様……
ビューワー伯爵夫妻にも例の栄養ドリンクを
差し入れていたのだが、
「え?
ナヴィ、あなたアレ使っているの?」
「私はあまり飲みましぇんね―――
せいぜい、ユニシス様との剣の修行の後に
スポーツドリンクを飲んだりしましゅけど」
それを聞いたビューワー伯爵とマルゴットは
目を丸くして、
「そ、それは……すごい、ですね」
「さすがは女神様の従者―――
体力も桁違いなんですのね」
するとナヴィは苦笑して、
「まあ、そのへんは食事で何とかなっていると
いいましゅか……
特に1人が料理がうまくて、他の妻たちの
食事も一手に引き受けてくれているん
でしゅけど、
何と言いましゅか、その」
「ナヴィ、あなたにしてはずいぶんと歯切れが
悪いわね。
ていうか料理がうまい1人って
悪霊ちゃんよね?
そんなヘンなもの出してくるとは
思えないんだけど―――」
そう女神が横からツッコミを入れると、
「ええと、何ていいましゅかしょの~……
妙に夜の生活特化になっていると
言いましゅか、
愛妻料理というより、飼育員が栄養管理する
的な何かというか」
「えぇ……」
「あぁ……」
それを聞いた伯爵夫妻は複雑な顔になり、
また空気も微妙なものになった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在8679名―――
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