19・あ、ブツはこちらに
( ・ω・)人間ドックの再検査でめっちゃ
金が吹き飛ぶ(貧乏)
日本・とある都心のマンションの一室―――
やや目付きの悪い、黒髪セミロングの少女……
の夫であるグリーンの短髪と瞳を持つ少年と、
垂れ目がちの気弱そうな目をした、ブラウンの
髪の少年、
褐色肌に黒髪の、元気いっぱいに見える少年、
そして銀髪の美少年―――
四人が集まっていた。
「いずれここに住む事になると聞いて
いますけど、まだ慣れませんね」
「ボク、未だに窓の近くに行けません……」
アルプの言葉にファジーが反応し、
「しかも上に上がるための移動用の部屋まで
あるもんなあ。
フィオナ様、あと2・300年経てば
こっちの世界もそれくらいの文明になるって
言ってたけど―――」
「まあここは、魔法が無い世界でしゅからね。
魔族の人たちが協力してくれれば、もう少し
早くそうなるかも知れましぇんが」
シモンの次に、ナヴィが補足するように話す。
彼らがここに集まったのは、もちろん交流という
理由もあったが、
「でも、実際結婚してみて……
生活というか、価値観が変わったのは
確かですね」
「ボクはミモザ姉と結婚したから、これまでと
そんなに変わらないと思ったけど―――
やっぱり意識しちゃうっていうか、
男女の仲になったんだなあ、って思います」
第一眷属と第二眷属の少年が感想を口にする。
今回、集まった主な目的は……
『新たに夫となった』男同士、それについて
お互いに情報共有するという面が強かった。
「俺もそうだなあ。
実際、一緒に生きていくというか、
どうしても互いに助け合う、補い合うという
部分が目につくようになったし」
「まあしょれが、夫婦になるという事でしゅよ。
それにみんな、相思相愛でそうなったん
でしゅから―――
多少の融通は利きましゅしね」
若いながらも商人の跡取りの言葉に、
同意するように女神の従僕も返す。
「しかし、ナヴィ様のところって確か
奥さんが5人でしたっけ?
僕もフィオナ様、メイさんと結婚しているので
人の事は言えませんが……
その、大丈夫なんでしょうか」
「んー、そもそもあの5人―――
私と恋仲になるために共同戦線を張ったような
ものでしゅので、こりぇと言って私が苦労する
ような事はしないんでしゅね。
アルプ君のところは2人ともヘタレというか、
まー1人だけだと勢いがつかないという事も
あるでしょうし、その点は良さそうでしゅ」
お互いに複数の妻を持つ、アルプとナヴィが
会話を交わし、
「シモンさんも幼馴染と言いますか、
ボクと同じように結構付き合いは長かった
ですよね?
それでもやっぱり、変わったように
思えます?」
「確かに長い付き合いではあるけどよ。
男女の仲になりゃあ、気が付かなかった
事なんてたくさんあるからなあ。
逆に驚かれる事もあるしさ。
俺の事なんだと思っていたんだよ、って」
結婚相手と幼い頃から一緒に過ごした
期間の長い、ファジーとシモンがうなずき合う。
「そういえば、バーレンシア侯爵様と
ビューワー伯爵様もお誘いしたんですけど……
2人ともお忙しくて」
「まあ仕方ないです。
併合が済んだとはいえ、する事は
山積みですから」
眷属同士の言う通り―――
新たに結婚した彼らも呼んでいたのだが、
さすがに侯爵と伯爵は多忙であり……
またの機会に、という事になっていた。
「しっかし、あっちは静かだな。
女同士だし、盛り上がるとも思ったん
だけどよ」
バクシア一の青果店の跡取り息子がそう言うと、
アルプとファジーも顔を見合わせる。
彼の言う通り、彼らの妻たち―――
即ちフィオナ・メイ・ミモザ・ポーラ、
そして人外娘たち……
邪神・サキュバス・堕天使・悪霊・
ワーフォックスも別室に集まって
いたのだが、
ただ一人、女神の従僕兼お目付け役は、
「いやまあ―――
あちらはあちらで盛り上がっていると
思いましゅよ?
ただ何と言いましゅか……
ちょっとこちらとは次元が違う、
とでも言いましゅかねえ」
すると同じ夫組である三人は微妙な
表情になって、
「え、えっと―――
いくら何でもそこまでは?」
「そ、そうですよ。
ボクたちもいるんですし」
「まあ確かに、女同士で集まると結構
過激になりがち、っていうのはあると
思うけどよ」
アルプ・ファジー・シモンは口を揃えて
妻を擁護するように話すが、
「んー、じゃあちょっと聞いてみましゅか?
ここは18禁ではありましぇんので、
不適切な言動は全て読めなくなるよう
変換されるという、便利な世界でしゅから。
じゃあ行ってみましょう」
他の三人には理解不能な単語や事柄が
混じっていたのか、少し首を傾げるが、
それでも彼らは妻たちが集まっている
別室へと赴き、耳をすませる。
すると……
「#▲※○%×$☆~!!」
「%△#%◎&@□▲」
「☆♭*!:□&○%$■!!
◎&@□!%△#%ー!!」
「▲※○●%×$☆?
◎&@□!%△#%」
「#$▲×※○%~!!」
「□&○☆♭%$■*!:!!
◎□!%△#%&@!!」
「%×$☆☆♭*!
#▲※○◎&@□ー!!」
と、ほぼ全てが聞き取れない・読めない
言葉となった妻たちの声が聞こえて来て、
「(僕たちは何も聞きませんでした)」
「(いいですね?)」
「(世の中、知らなくてもいいって事、
あるよな)」
「(みなさん、たくましくなって
頼もしいでしゅ。
それではそろそろ、本編スタート
しましゅね。
もうほとんど終わりでしゅけど)」
│ ■グレイン国・王都ウィーンテート │
│ ■王宮中庭施設別室 │
―――前回までのあらすじ―――
マイヤー伯爵、ガルディ王室騎士団長、
そしてバスタ副団長たっての願いにより、
彼らと手合わせする事となった軍神ユニシス・
ナヴィだったが……
「あ、ブツはこちらに」
その裏で女神・フィオナは独自の任務を
遂行していた。
「ふふふ、この精密な絵画技法の書物―――
確かに受け取りました」
豊かな黒髪をたたえたグレイン国の王妃・
グレイシアが微笑み、
「こ、これが完成形……!」
「いつの日か我々の世界も」
「必ず追いついてみせます―――」
メイド、侍女、女性騎士の面々が、あちらの
世界のBL本に食い付く。
「でもよろしいのですか?
確か、こういった物や技術は持ち込んでは
いけないと仰っていたような」
「あー、これはあくまでも『見本』ですので。
本自体はこちらでも作られていますし、
印刷技術も現在向上中です。
なので『見るだけ』なら何の問題も
ありません。
そして『後で』『返して』頂ければ……
まあそれが10年後か100年後かまでは
わかりませんけど」
都合の良い理論を持ち出して、女神は
無理やり正当化する。
「それよりグレイシア王妃は大丈夫なんですか?
確か今、御前試合が行われているんじゃ」
「あー、あれ影武者です。
なので全然問題無しです―――」
フィオナと国のトップは事もなげに語り合い、
「それならいいかー」
「はい、いいのです」
「それじゃ、ゆっくり堪能しましょう……♪」
そう言って全員が、地球のBL本を
食い入るように読み漁った。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在8583名―――
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